「捨てられた布団を再生する」 業界の常識を変える注目のビジネス 廃棄大国から資源大国を目指して 【関西テレビSDGsウィーク】 2023年05月24日
自治体と協力して「捨てられた布団を再生する」企業が兵庫県にあります。いったいどんな取り組みなのか取材しました。
ぎっしりと積み上げられた布団の山!山!!山!!!
本来であれば、焼却処分されるはずですが…
【yuni 内橋堅志 代表】
「我々がお引き取りしてきて燃やすくらいだったら再生素材させてもらいますよと」
回収して再生素材に!?業界の常識を変える驚きのビジネスとは?
■焼却処分される布団は、年間1億枚
兵庫県朝来市にあるごみの焼却場。布団の焼却の準備が行われています。
【南但広域行政事務組合 津崎忠広 副主幹】
「持ち込まれた布団をこの粗大ごみ切断機で小さく切断しましてごみピットに一時貯留します。そして順次焼却炉に投入します」
粗大ごみとして回収された布団は、切断され燃やして処分されます。捨てられる布団のうち、焼却処分されるのはなんと98パーセント!その数、なんと年間1億枚とも言われているんです。
さらに、自治体にとってはこんな問題も…
■職員も頭を悩ます厄介な布団を再生素材へ
【南但広域行政事務組合 津崎忠広 副主幹】
「布団は柔らかいですので、なかなか切りにくい。(処理施設の中で)詰まってしまってごみが流れていかないと、人の手で焼却炉に押し込む作業が必要になります。できることなら焼却したくないごみになります」
職員も頭を悩ます厄介な布団ですが…
【南但広域行政事務組合 津崎忠広 副主幹】
「1週間に1回くらい引き取りに来ていただいてリサイクルしてもらっています」
ここでは大部分の布団は回収され、リサイクルされているというのです。
布団が運ばれてきたのは兵庫県西脇市のとある倉庫。
所狭しと布団が積み上げられています。
【yuni 内橋堅志 代表】
「一日でだいたいこれくらい、全然たまりますね。燃やすくらいならうちで再生素材にしますよということでやっている」
そう語るのは、yuni(ユニ)代表の内橋堅志さん(31)。
■業界の常識を変える驚きのビジネスとは・・・
多くの自治体で処分に困っている粗大ごみの布団を、リサイクル料をもらったうえで回収し、再び布団として蘇らせるビジネスモデルを作りました。
起業家のコンテストなどで高く評価され、立て続けに優勝している、いま注目の経営者なんです。
では、回収した布団はどのように蘇るのでしょうか?
【yuni 内橋堅志 代表】
「洗った後高温での滅菌をここでやっています」
大量の布団を一度に洗える巨大な洗濯機。ここで洗浄したあと、ダニなどを駆除するため100℃の熱で10分間滅菌します。
洗浄と滅菌が終わった布団は、外側の生地を剥いで、綿やポリエステルなど素材ごとに分けていきます。
【yuni 内橋堅志 代表】
「ここが粉砕の機械。中で(繊維を)切っちゃう」
特注の機械に通すと…
【yuni 内橋堅志 代表】
「これが再生前。絡まった状態ですね、繊維が、絡まった状態になっているんですけど、こっちがもう一回砕いて、うちで再生させた、ベースの状態です。まずこの状態に戻すんです」
長年使われ縮んでいた綿は…ふわっふわに復活!
素材として見事に蘇えりましたが、中には新品同様のものも回収されているといいます。
【yuni 内橋堅志 代表】
「返品のやつもある。10日しか使っていなくても誰かが使っている寝具となると使えないので捨てるしかない」
まだまだ使えるものでも捨てられてしまうのが業界の常識でした。
■親子で取り組む布団のリサイクル
内橋さんの父親も布団を製造するメーカーの経営者。布団が廃棄され続けることに昔から疑問を感じていました。
【内橋さんの父・毅さん】
「メーカー自体も新しいもの売りたいのがほとんどなんで(再生させる)概念がもともとない」
【yuni 内橋堅志 代表】
「寝具がこれだけ捨てられているという状況があって、自治体もまだ捨てられているけど誰もタッチしていない寝具があると。全国に広がる可能性が大きくある事業だなと思って」
内橋さんは一度は会社員として勤めるも、業界の課題を解決しようと起業を決意。親子で布団のリサイクルに取り組んでいるのです。
■回収された布団などを再生させ、自社製品として販売
そして細かく素材ごとに分けられたあとは製品になっていきます。
【yuni 内橋堅志 代表】
「これが長座布団で、先ほど再生した綿が使われている再生商品ですね。こういう感じでふかふか」
2年前のサービス開始以降、25万枚もの布団などを回収し、自社製品として販売したり、ホームセンターなどに卸したりしています。
■日本を廃棄大国から資源大国へ
【yuni 内橋堅志 代表】
「日本は廃棄大国、ひとりあたりのごみの排出量って多いんですけど、これが資源になれば、資源大国になり得るポテンシャルがあると考えることもできる。焼却処分場で燃やしているものを再生できる施設を日本に増やす」
廃棄大国から資源大国に。内橋さんの挑戦がニッポンの未来を変えるかもしれません。
(関西テレビ「newsランナー」2023年5月22日放送)