真夜中に突然 “堤防決壊” 車が土砂に…その時何が?住民映像は見た 兵庫県が堤防「強化工事中」で“川幅半分”…そこに『想定超える』水が その想定は“適正”だったか 2023年05月08日
7日から8日未明にかけて、近畿地方では広い範囲で大雨となり、兵庫県伊丹市では川の堤防が決壊し、住宅街が浸水する被害が出ています。現地からの中継とVTR映像でなぜ決壊は起きたのか考えます。
【川が決壊した現場の坂元龍斗キャスター】
「決壊した堤防です。こちらから土砂や水が住宅街に流れ込んだことになります。いま、土砂が堆積している場所はもともと普通の道路でした。現在、6台ほどの重機が土砂の撤去作業を進めています」
「こちら表に出ている車は土砂によって流されてきたとみられます。さきほどまでは(車は)土砂に埋まっていましたが、ショベルカーで周りの土砂をかき出して、車を掘り出したということになります。フロントガラスは割れた状態で、(車内は)小石などがたくさん入っているなどしています。車が飲み込まれるほどの土砂が流れ込んでいたということです」
「そして、奥には住宅地があるんですけども、高さ50センチほどの高さまで水がきていたということです。そのため床下浸水の被害が出てテラスや玄関の辺りに土砂や水が流れ込んだそうです。住民のみなさんは日中は懸命に泥をかき出す作業を行っていますが、きょうは風が強いので、砂ぼこりがきついそうです」
「さて、こちらには天神川という川が流れています。この川は住宅街よりも川の方が高い場所にある『天井川』と呼ばれる位置関係となっています。この川の堤防が決壊して氾濫しました。、7日から8日未明にかけて何が起きたのか?被害の全容をまとめました」
8日午前1時ごろの伊丹市内。
【ぽんまる さん撮影の映像より】(8日午前1時ごろ 伊丹市内)
「これどこから?川?川があふれてるの?えっ!っていうかあれ自転車沈んでない?行ける?見て見て見て看板倒れてる」
茶色く濁った水があふれ、まるで川のようになった道路。
救助隊員に背負われ避難する人の姿も…
伊丹市では、7日夕方から雨が続いていて、となりの西宮市では8日未明、1時間で46.5ミリの激しい雨が降りました。
8日午前0時ごろ見回りをしていた伊丹市の職員が天神川の堤防の決壊を確認。そのおよそ1時間後に水が流れ出たことを受けて、近隣のおよそ800世帯に避難指示が出されました。
決壊した堤防近くの住宅の前の道は川のようになっていて門の中まで水が流れ込んでいます。
一夜明けた8日午前…
【秋山未来記者リポート】
「兵庫県伊丹市です。住宅街の道路には土砂が流れ込んでいて近くに止まっていたとみられる車はほとんど埋まってしまっています」
決壊した天神川は周りの土地より高いところを流れるいわゆる「天井川」ですが、普段は水位も低く水の流れも穏やかといいます。
一体なぜここまでの被害が出たのか…実は決壊した場所は堤防を強化する工事が行われていて、通常より川幅が半分ほどになっていたということです。兵庫県は「そこに想定を超える水が流れ込んだことで決壊につながった可能性がある」と話しています。
これまでに伊丹市内で床上浸水が1棟、床下浸水が10棟、確認されています。周辺の住民は流れ込んだ泥や水のかき出しなど片付け作業に追われています。
【被害に遭った住民】
「玄関を開けたら、もう水という感じ。何か変な音というか、たぶん崩れた感じですか…それで外見たら10分くらいでもう(水が)ここまで来てた」
【被害に遭った住民】
「窓から見たら道路が川になってて避難しようがないくらい水の流れが強かったので避難指示が出てたけど動けなかった」
近くの工場も浸水し機械や製品などにも被害が出ました。
【被害に遭った工場の方は】
「きょうは一日掃除だけで終わっちゃいそう…生産は1~2日無理かな。(被害は)まだまだ把握できていない状況ですけど、ここまでひどいのは初めてですね」
【決壊した天神川の現場にいる坂元キャスター】
「再びこちらは決壊した川の現場です。こちらは『天井川』で住宅がある地域の方が川底より低いということになります。元々こちらは普段は流れが急でない、ほとんど水が流れていない川だということです。ただ、増水したまま水が残っていて、現在もいつもより水量が多い状況です」
「今回のポイントなんですが、実はこちらでは堤防を増強する工事を行っていて、それに伴って川幅を狭くしていたんです。いまも土のうが積んである辺りです。現在も川幅が狭くなって急に流れが速くなっているのが分かると思うんですが、そこから住宅地に水や土砂が流れ込んだ形です。兵庫県によると過去5年間の渇水期(=雨が少ない時期の水量)を元にこの川幅でも問題がないと考え工事を進めていたんですが、今回は想定を超える雨が降ったということです。なので今回の事態は『果たして工事が適正であったのか?あるいは人災の可能性もあったのか?』そういったことを検証する必要があると思います」
工事を管理している兵庫県の宝塚土木管理事務所によると、「渇水期(11~5月)の過去5年の1時間最大雨量に耐えるよう川幅を確保していたが、想定を超える大雨だった」としています。
また、片平敦気象予報士は阪神間では5月史上1位の大雨だったが、決壊当時について「洪水警報を出すほどの雨は降っていなかった」ということです。
関西テレビ・神崎デスクは「想定外と話しているが、『想定』をどこに立てるか?ということが大事だと思います。今回は雨の少ない渇水期の最大雨量を想定にしていたようですが、例えば1年間で考えたり、雨の多い梅雨の時期を想定していたら、今回のような事態は起こらなかったかも知れません。想定をどこに置くか?想定を高くすると工事費用がかかることになりますが、住民の命のことも踏まえて想定は考えていくべき」だと話しました。
(関西テレビ「newsランナー」2023年5月8日放送)