狙いはリッチな外国人 奈良・和歌山の“貴重な田舎体験”に100万円の価値が! 地元は「ニーズあり」と自信 「モデル観光地」事業で地域経済は盛り上がるか 2023年05月02日
国は、インバウンドで地方を活性化させる狙いで、「モデル観光地」を選定し、関西からは「奈良南部・和歌山那智勝浦エリア」が選ばれました。ただ、本当にこの地域に外国人観光客が爆買いするものはあるのか?交通の便はどうなのか?“秘策”があるのかどうか?取材しました。
関西を代表する観光地・奈良。多くの歴史的な遺産が街のあちこちに残っていて、最近は訪れる人の9割がインバウンド。世界から注目を集めていますが、とある課題が…
【イタリアからの観光客】
「京都に宿泊していて、この後また京都に戻るよ」
【アメリカからの観光客】
「大阪から来ました。今晩はまた大阪に戻って泊ります」
大阪や京都からやってきた外国人旅行者たちが、みんな奈良公園で“Uターン”してしまうのです。この事態にやきもきしていたのが、「奈良県南部」や「和歌山県」です。
しかし、そんな場所に光が当たったのは今年3月でした。富裕層の外国人観光客を地方に呼び込むために始まった、観光庁の「モデル観光地」事業。公募の結果、全国で11カ所が選ばれ、関西からは「古来からの巡礼と暮らしが共存するエリア」として、「奈良南部・和歌山那智勝浦エリア」の採用が決定したのです。
選定に力を注いだ仕掛け人は、このチャンスにやる気満々です。
【奈良県ビジターズビューロー 中西康博専務理事】
「今インバウンドで『瀬戸内』というのが1つのキーワードにある。海外の方に聞くと『Setouchiに行きたい』『Setouchiに行くんだ』と。我々も『Ki-Hanto』『キイペニンシュラ(紀伊半島)』に行きたいとキーワードになるように頑張りたいなと」
“1回の旅行で100万円以上を消費してもらう”ことが目標のモデル観光地。しかし、“ほとんど山”のこの地域で、どうやってリッチな外国人が観光するのでしょうか。
【奈良県ビジターズビューロー 中西康博専務理事】
「100万円以上使う富裕層の方は、車は1時間以上乗らない。ヘリコプターで回ってもらう。そうすると三重も奈良も和歌山もあっという間ですよ」
「ヘリコプターで回ってもらう」
この地域には、防災用などを含め少なくとも15以上のヘリポートがあります。それを利用し短い時間で観光ポイントを回れるのでは、というアイデアです。例えば、十津川村一押しの絶景スポット「谷瀬のつり橋」。白浜空港から車で2時間以上かかるとあって、外国人観光客はほとんどいませんが、これがヘリコプターだとなんと20分足らずでひとっ飛び。四季折々の豊かな自然の風景を上空から楽しめます。
さて、ヘリで来てもらったリッチな外国人。問題は、のどかな田舎町でいったいどうやって、100万円もの大金を使ってもらうのかということです。
【奈良県ビジターズビューロー 中西康博専務理事】
「滞在というのは、その地域に入っていただいて、空気を感じてもらいたい、風を感じてもらいたい。海外の方に、ニーズとしてあると思うんですよね」
「大都会での暮らしに疲れた」「ぜいたくに飽きてしまった」そんな富裕層ならではの感覚に着目し、あえて何もない場所や面倒なことを楽しんでもらおうと売りにしたのが「農家民宿」です。
【農家民宿「信ちゃん」辻村信俊オーナー】
「ここがお風呂で、もしやもしやの五右衛門風呂です。泊まりに来た人が自分で喜んで火をたいてくれます」
「ここがおくどさん(かまど)。ここに(ご飯の)炊き方書いてあるので、できるだけ構わないようにしています」
十津川村にある農家民宿の魅力は、火起こしや野菜の収穫体験など、「自給自足」の生活を味わえることです。
【農家民宿「信ちゃん」辻村信俊オーナー】
「外国の方で、僕が一番印象に残っているのは、誰も知らないような道というか、上に村の神社がある。そこへ行ったとき一番喜んでいた。あれ不思議だね。こういうような環境を求めている人がいるってことですよね」
富裕層にとっては、非日常で貴重な田舎暮らし体験。
一方で、この体験に100万円を使ってもらうことは可能なのでしょうか?
【奈良県ビジターズビューロー 中西康博専務理事】
「外国人が言うには、いいおばあちゃんと一緒におにぎりを食べる。『これ100万円でもいいよね』っていうんです。原価がなんぼで、利益率がなんぼというより、その体験にお金を払っていただく。これがコンテンツだとしっかり見せていきたいなと」
また十津川村には、外国人のニーズが分かる心強いアドバイザーも。
【空中の村 ジョラン・フェレリ代表】
「ここは簡単に言うと、森の中で遊べる場所」
十津川村に魅了され、フランスから移住してきたジョランさん。3年前、この地の魅力を広めようと、大人も楽しめるアスレチック施設をオープンしました。ジョランさんもモデル観光地事業に期待を寄せています。
【空中の村 ジョラン・フェレリ代表】
「外国人としての魅力は、もちろん自然が豊かですが、やっぱり人、日本の昔の風景、昭和感が残っていますので、それが外国人には面白いと思います」
ただ、外国語に対応できるスタッフが不足しているなど、まだまだ課題もあるといいます。
国は、観光の専門家を派遣するなど、約5年かけて継続的に各地を支援していく方針です。様々な可能性を秘めた「モデル観光地」事業。地域経済の起爆剤となるのでしょうか?
(関西テレビ「newsランナー」2023年5月2日放送)