新型コロナの感染症法上の位置づけが、5月8日から季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に引き下げられます。感染の再拡大も懸念される中、これからのコロナの医療体制はどう変わるのでしょうか?
■公費負担の医療費は一部自己負担に 外来受け入れは全ての医療機関で
【大阪府・吉村洋文知事】
「リスクの高い方をいかに守るかここが非常に重要になります。今後5類に移行するにあたって我々が力を注ぐべきところだと思っています」
28日に開かれた大阪府の新型コロナ対策本部会議で吉村知事は「ウイルスと共存していくための対策を考えていきたい」と述べました。
政府は5月8日から、新型コロナの法律上の位置付けを、季節性インフルエンザ並みの「5類」に引き下げます。
療養期間は現在の原則7日間から「5日間、外出を控えることを推奨」に。感染者や濃厚接触者の行動制限もなくなります。
公費負担だった医療費は一部自己負担に。発熱外来など一部でしかできなかった外来の受け入れは全ての医療機関でできるようになります。
大阪府では9月末までを移行期間と定め、府内全ての医療機関での受け入れを要請。
一方、入院体制については、これまでの最大病床確保数のおよそ6割に縮小するほか、ホテルなどの宿泊療養施設については廃止することが決定されました。病院の中には、すでに一部対応を変えているところもあります。
【葛西医院 小林正宣院長】
「昔はプレハブを使ったりしていたんですけど、通常の診察は院内でやることになります。ここですと感染対策が十分でないということから一旦、発熱患者さんはこちらのレントゲン室に入っていただいて、検査も診察もここで完結するということにしています」
「5類」に移行し通常の診療に組み込むため負担が少なくなるよう、以前はプレハブでしていた発熱外来の大部分を病院内で行うようにしました。しかし診察を行う葛西医院の小林正宣院長は「5類」移行に懸念を示します。
【葛西医院 小林正宣院長】
「5類になるということは一般の感染症と同レベル、すなわちインフルエンザのような扱いになりますので、患者さんは診療するために診療費を払うことになります。そうすると症状はあっても診療費がかかるから受診を控えると。いわゆる”受診控え”につながるんじゃないかなと」
さらに…。
【葛西医院 小林正宣院長】
「なかなか受け入れたくても受け入れられない事情がそれぞれ医療機関にもあります。例えば(病院の)構造上の問題であるとか、医師がすごい高齢であるとか、リスクがすごい高いとか」
分類が見直されても我々にとって十分な医療を受けられる体制は続くのでしょうか。
■5類に引き下げ後も感染再拡大に備え 医療体制の拡大を目指す
今後、医療費は自己負担、陽性者や濃厚接触者の外出自粛も個人の判断になる一方で、感染再拡大に備えて国は医療体制の拡大を目指します。その中身を見てみます。
厚生労働省によりますと外来診療についてはこれまで全国で約4万2000の医療機関で行っていたそうですが「5類」移行後は約6万4000の医療機関で受け入れる体制を目指すとしています。
入院については、これまで全国で約4900の医療機関で、約5万3000人分の受け入れが可能となっていたそうですが、これを約8400の医療機関、病床の数としては約5万8000人分の受け入れ体制を目指すとしています。
このように国は感染再拡大に備えて、医療体制の拡大を目指していますが、大阪市内で発熱外来を開設されている葛西医院の小林正宣院長は次のような懸念を示されています。
冬など流行期には、インフルエンザなどの患者も増えることから医療がひっ迫する恐れがある。さらに5類引き下げで医療費が自己負担になることによって 病院での受診を控える人が増えて、感染が拡大する可能性もあるとおっしゃっています。
季節性インフルエンザと同じ体制で、もっと受け入れの医療機関が増えてもいいのではないかという風に思ってしまう訳なんですけれども、国は医療体制の拡大を計画通りに進めていけるのでしょうか?
【関西テレビ 神崎博デスク】
「確かに計画では外来診療は4万2000から6万4000へ…となっていますけれども、これはあくまでも計画であり、実際には、例えば先ほど小林院長が仰っていましたが、お医者さん自身が高齢であったりとか、その他、例えば眼科とか皮膚科とか、そういう『コロナ患者は診れませんよ』というお医者さんもいると思います。
すべての病院がコロナ患者を診れる訳ではありません。今は手を挙げた病院だけ…という風になっているので、6万4000に到達するのはかなり厳しいと思います」
【関西テレビ 神崎博デスク】
「あと、2つ目のポイントとして入院の医療機関も実は”数”は増えているんですけれども、受け入れ人数はさほど増えていません。今まで受け入れていた病院は、実は人数をグッと減らしていくんです。もしかしたら夏から秋にかけて爆発的に感染が広がって、第9波が来たら、すぐに医療崩壊につながりかねないという事が懸念されます」
これから第9波が来る、場合によっては夏にも…という懸念がある中で、5月8日から「5類」に引き下げられるということで、感染再拡大時の受け入れ態勢が、きちんと構築されるよう望みます。
(関西テレビ「newsランナー」4月28日放送)