選挙戦といえば、候補者本人が演説をしたり握手をしたりと、1日中駆け回る姿が“当たり前”となっていますが、先日の統一地方選で、告示の翌日に出産し、選挙活動をリモートで行った候補者がいました。日本の選挙に風穴を開けることはできるのでしょうか。
佐藤古都(こと)さん。東京都・北区議会議員選挙に維新から立候補しました。
【佐藤古都さん】
「どうした?よく寝てるね」
第2子を出産したのは、なんと4月17日、選挙の告示日の翌日です。選挙期間の大半を病院で過ごし、退院したのは投開票日の2日前でした。
【佐藤古都さん】
「名前まだ決まってなくて、ちょっと選挙が終わったら、ゆっくり考えようと思います。親に怒られてますけど。ちゃんと考えてあげてねって。(この子が)政治を嫌いになったりしないか心配ですけど」
7年前、長女を出産した後、保育園を探す保活に苦労した経験から、“当事者目線”で制度を変えたいと、政治家を志した佐藤さん。これまで2度、選挙に出馬しましたが落選しました。今回は3度目の挑戦。臨月と分かっていても、出馬を決意した理由があります。
【佐藤古都さん】
「住民サービスに関わる部分って、子育て中だったり、介護してたりとか、生活が苦しい方とか、そういう方に寄り添うものだと思っているので、そういう人の声がもっと届く政治をやりたい」
出産直後のため、街頭に立って演説することはできません。ツイッター、LINE、YouTubeを駆使して、病院や自宅から発信を続けました。
【佐藤さんの夫 裕太さん】
「こんにちは。『佐藤古都』でございます。こんにちは」
佐藤さんに代わり街頭でビラを配るのは、夫の裕太さんです。
【佐藤さんの夫 裕太さん】
「佐藤古都の“影武者”として、思いを告げながら頑張っていきたいと思います」
育児休暇をとり、毎日街頭に立って投票を呼び掛けていました。
選挙期間中に出産した佐藤さんについて、東京の人たちはどう受け止めているのか、話を聞いてみると…
【東京の人 30代男性】
「子供のためのとか、未来のためのって言っている政策。これは子供を育てた人しか、分からない部分っていうのはあるんじゃないかと思うので。高齢者の方が(選挙に)出てること自体は、全然否定的ではないですけれども、私自身はより若い人、あるいは子育てされてる人が出ていっていただけると、すごくうれしい」
【東京の人 60代女性】
「立派だと思います。少子化の時代だもんね。だからどんな期間でも出産できるような状況は、整えてあげたいなとは思いますね」
「立派だと思う。素晴らしいわ」
肯定的な意見がある一方で、候補者が街頭に立たない選挙戦について難色を示す人も…
【東京の人 50代男性】
「やっぱし、その方法はね、受け入れられない。個人的にも。会社でもリモートとかありますけど、リアルでやる場合の重要性もある」
佐藤さんが所属する、日本維新の会の馬場代表は選挙前、現行の制度では女性の出馬は難しい、との見解を示していました。
【日本維新の会 馬場伸幸代表】
「私自身もそうですけど、1年365日24時間、寝ているときとお風呂入っているとき以外はですね、常に選挙のことを考え、政治活動をしているということですから、そのことを受け入れて、実行できる女性というのは、やはりかなり絶対数は少ないと思います」
毎日、24時間選挙のことを考えるのは難しかった選挙戦。
【佐藤古都さん】
「頑張るね。イエーイ、応援してくれー」
【佐藤さんの長女】
「がんばれー」
自宅では、故郷・静岡県浜松市から駆け付けた母と、長女が赤ちゃんのお世話をして、佐藤さんをサポート。
【佐藤さんの母 あい子さん】
「ちょっとうんちしてる場合じゃないよ、あんた。お母さんの演説だよ」
最後の街頭演説でマイクを握ったのは、母と同じく浜松から駆け付けた父でした。
【佐藤さんの父 益見さん】
「本当に普通の娘の『佐藤古都』が、今ここにいませんが、本当に変わった選挙の体制をとっている状態ではありますが、普通の女性が活躍できる、そんな社会になっていくのが、私たちの目標です」
最後は佐藤さん自身がスマホを使ってリモートで演説を行いました。
【佐藤古都さん】
「2回選挙に出て来たんですけれども、体力勝負の選挙戦をしてきて、家事育児も夫や両親、あるいは友人達にお願いをして、24時間、本当に選挙のことだけ考えるような選挙戦をして、精一杯戦っても、落選をしてきたという中で…」
スピーカーから佐藤さんの訴えが街頭に響きました。
【佐藤古都さん】
「妊娠中だけではないと思います。育児中の方、介護中の方、障害や病気があって、1人での街頭活動に不安がある方、そういう方でもですね、政治に挑戦をしたいと思ったときに、挑戦ができるような、政治参加できるような、そういう形が本当に理想の政治参画じゃないかなと、私は思っております」
【佐藤さんの母 あい子さん】
「大変だったね」
【佐藤古都さん】
「(赤ちゃんの)泣いている声も聞こえたよ」
【佐藤さんの母 あい子さん】
「名前つけてもらいなよ」
【佐藤古都さん】
「ごめんよー、名無しちゃんで」
佐藤さんが街頭に立てない中、家族総出で戦った選挙。結果は…
【佐藤古都さん】
(当確のニュースを聞いて)「ありがとうございます」「やったー!」
佐藤さんは、2位候補に大差をつけて、トップ当選を果たしました。
選挙期間中に“出産”した議員の“誕生”は、日本の選挙制度を見直すきっかけになるのでしょうか。
(関西テレビ「newsランナー」2023年4月27日放送)