岸田内閣“異次元の少子化対策”の司令塔 こども家庭庁・小倉大臣に「生」質問 関西のお母さんが政策から大臣のプライベートまでツッコミ どうなる?児童手当の拡充、学校の先生の働き方、こどもファスト・トラック 2023年04月28日
今、注目される政府の「異次元の少子化対策」。結局、何すんの?お金はどうすんの?いろいろ気になることを、少子化対策の司令塔となる「こども家庭庁」担当大臣に直撃します。
■子どもの預け先、教育費、母親のワンオペ 子育ての問題は多い
大阪市に住む吉永英梨さん(34)。“整理収納アドバイザー”の資格を生かして働きながら、夫とともに子ども2人を育てています。取材した日は、午前中、在宅で仕事をこなし、昼食は慌ただしく立ったまま済ませていました。
【吉永英梨さん】
「オンラインの仕事が立て続いて、午後2時ぐらいになって、お迎えの時間がもうちょっとで来るって感じ」
家に帰ってくると子どもたちは元気いっぱいです。仕事と子育ての両立は目の回るような忙しさ。そんな吉永さんは、次男が入園する前、思うように一時保育を利用できなかった経験があります。
【吉永英梨さん】
「預けたいと思っている人が『預けたいです』って言ったら、もうみんな預けられる環境にしていただきたい」
■危機的少子化を受け 「こども家庭庁」始動
「子どもの預け先」のほか、「教育費」「母親のワンオペ」問題と、まだまだ課題の多い日本の子育て環境。4月26日に発表された日本の将来の人口推計によると、50年後、日本の総人口は、現在の7割に減少、65歳以上が人口の4割を占める見通しです。
少子化に歯止めがかからない危機的状況を受け、4月に始動したのが「こども家庭庁」です。
【小倉将信 こども家庭庁担当大臣】
「まさに今年が、『こどもまんなか元年』にしたい」
少子化や子どもの貧困対策など、これまで様々な省庁が別々に対応していた子ども政策を、一手に「こども家庭庁」が担うことになったのです。
「こども家庭庁」に何を期待するのか、子育て世代に聞いてみると…
【30代男性】
「“オムツ替え”を男性トイレに設置してないところがすごい多い」
【40代女性】
「オムツ替えられないから、やっぱり私がやんなきゃいけなかったり。子育てをパパが参加しやすい環境がないんですよ」
【30代女性】
「『助けて』って言える環境だよね。今は言えない雰囲気」
子育て世代の悩みはたくさんあるのです。
■こども家庭庁・小倉大臣に直撃 「子育て家庭、子どもの意見をしっかり聞きたい」
岸田内閣肝いりの「異次元の少子化対策」。その司令塔となるのが、4月に発足した「こども家庭庁」です。関西テレビ「newsランナー」では、こども家庭庁を率いる小倉大臣に生出演していただき、少子化対策について、何をしてくれるのか、気になるお金の話など、時間が許す限り聞きました。
そして小倉大臣に「どうしても聞きたいことがある」という、関西のお母さんたちに集まってもらっていました。
【関西テレビ・加藤さゆり報道デスク】
「大阪市阿倍野区にある親子が集う場所にお邪魔しています。今まさに子育て真っ最中のお母さんたちに来ていただいて、いろんなことを突っ込んでいきたいと思っていますので、よろしくお願いします」
【加藤報道デスク】
「お母さんたちの、大臣の印象はいかがですか」
【伊藤さん】
「お若そうですが、お子さんはいらっしゃるんでしょうか」
【小倉こども家庭庁担当大臣】
「子どもはおりません。その分、子育て家庭、子どもの意見をしっかり聞いていきたいと思います。歳は41歳です」
まず「異次元の少子化対策」の中身を見ていきます。
・児童手当の拡充などの経済支援の強化
・保育士を増やすなど保育サービスの拡充
・男性育休取得率のアップなどの働き方改革
このような内容が検討されています。
多岐にわたる少子化対策のたたき台ということですけれども、この案は、いつまでにだいたい固まってくるのでしょうか。
【小倉こども家庭庁担当大臣】
「たたき台を作るにあたっては、関係省庁と協議を重ねて、一言一句こだわりながら作らせていただきました。今、示していただいたのは3年間で実現をしていく“加速化プラン”の中身であります。具体的なさらなる内容は、今年6月の“骨太の方針”と言われている、予算の編成方針までに、決めさせていただく予定ですので、さらに議論を重ねてまいります」
そのまま盛り込まれるのか?ある程度絞られるのか?優先順位はどうなるのかなど、いろいろ気になるところです。「newsランナー」で事前に少子化対策についてアンケートを実施したところ、一番気になっている点は「財源の確保」でした。アンケート回答者の半数以上の方が気になってるという結果になりました。
■児童手当は所得制限撤廃へ なぜ3人目は6万円?
中でも大きな財源が必要とされる児童手当について、現状と検討されている内容を整理します。
[現状]
・3歳未満 1万5000円
・3歳以上 1万円(第3子以降は1万5000円)
・中学生 1万円(一律)
いずれも支給にあたって所得制限があります。
[検討されている内容]
・所得制限の撤廃
・支給期間を高校卒業まで延長
・多子世帯への給付額アップ
多子世帯への給付額アップですが、自民党案では、児童手当の月額が、第1子1万5000円、第2子は倍の3万円、第3子はさらに倍の6万円となっています。
これは自民党案ということですが、政府としてもこのイメージで進めていこうとしているのでしょうか。
【小倉こども家庭庁担当大臣】
「自民党案というのはですね、自民党の一部の議員が主張してる案ということで、ご理解をいただきたいと思います。いずれにしても、所得制限の撤廃 高校までの支給期間の延長 多子世帯への給付額拡充、こういったことはたたき台に盛り込ませていただいておりますので、6月の骨太の方針までに さらなる具体的な内容を固めていきたいと思います」
ここで、お母さんたちからちょっと質問があります。
【榎本さん】
「児童手当いただいていて、すごくありがとうございます。助かっております。先ほどの案では、18歳までいただけるということなんですけれども、いつ頃始まるのかということと、あと高校生の年代で高校に行っていない方はどうなるのか、教えてもらえたらなと思います」
【小倉こども家庭庁担当大臣】
「はい、榎本さん、ありがとうございます。まず高校はですね、やっぱり中学までと比べても、教育費の支出が多い年代だと思います。少なくともやはり中学までと同程度の支援は、必要ではないかと思っています。『いつから』という話なんですけども、なるべく早く実現したいと思っておりますが、実際に児童手当を支給するのは自治体経由です。自治体もシステム改修したりとか、実務を整えたりしなければいけないので、その準備期間が必要となります。なるべく早く、ご期待に応えたいという思いでおります」
【伊藤さん】
「児童手当の多子加算、例えば3人目から6万円ということなんですけど、これって例えば私自身3人目を産む時に、ファイナンシャルプランナーに相談してまで、将来のお金を考えてやっと産んだんですね。6万円になったところで、『産もう』となるのか疑問に思いまして、これ本当に意味ありますかね」
【小倉こども家庭庁担当大臣】
「伊藤さん、ありがとうございます。われわれの少子化政策というのは、誰かに『産もう』と思ってもらうための政策ではなくて、『産みたい』と思っているけれども経済的な負担が大きくて、子どもが持てないという方に対して “背中を押す”ための政策です。そういう意味では、お子さんをたくさん持っていらっしゃるからといって、他の世帯よりも収入が高いというわけではありませんので、やっぱり子どもを持てば持つほど生活が苦しくなるのも事実だと思うんです。そういった多子世帯の方に対しては、より手厚く経済支援をしなければいけないと思っておりますので、そういった考えのもとで多子加算をしっかり考えていきたいと思います」
【加藤報道デスク】
「所得制限撤廃について、ちょっと気になるデータがあります。30代、40代あたりの方は制限撤廃に賛成の方が多いのですが、子育てを終えた年代や高齢の方には反対の声が多い。所得制限は、やはり一定の線引きが必要じゃないか、そうしないと不公平になるんじゃないか、という声があると思うんです。そのあたりについて、どう理解を広めていくお考えでしょうか」
【小倉こども家庭庁担当大臣】
「今の児童手当の所得制限の基準というのが、年収960万円と1200万円です。普通に聞けば、かなりの高額所得者っていうイメージがあるんですけども、所得制限に引っ掛かってもらえない人の多くは、大阪や東京といった大都市部に住んでいます。大都市部というのは、収入はあるけれども、交通費とか家賃とか光熱費とか、生活費はそれ以上に掛かるわけですね。だから1000万で富裕層かというと、特に子育て世代はそうではありません。そういった中で今回、所得制限の撤廃を盛り込まさせていただきましたが、多分そういう子育て世帯の今の大変さっていうのが、他の世代に十分伝わってない可能性があります。そこは政府としても、皆さんと一緒になって、子育て世代の今のリアルの状況っていうのを伝えていきたいと考えています」
児童手当の財源について、番組が実施したアンケートでも多くの方が気になるポイントとしてあげていました。財源の問題について整理します。
野村総研の試算です。少子化対策に必要な財源を、現状プラス5兆円と考えてみます。全て消費税で賄う場合は税率12%にする必要があります。また全て社会保険料で賄おうとした場合は、年3万7500円の負担増になるということです。政府の方針としては、社会保険料でいこうっていう話もあったり、消費税で賄おうというような案もあったり、となっていますが、現状どのように考えているのでしょうか。
【小倉こども家庭庁担当大臣】
「3月末の私のたたき台で、実行すべき政策をお示ししました。今、「こども未来戦略会議」という、総理をヘッドとする会議体で、この政策のさらなる中身と予算規模、そして財源について、セットで議論を進めているところです。その財源についてもですね、6月にお示しできるところはしっかりお示ししたいと思っています」
3月にたたき台が出まして、財源のイメージはある程度できているのでしょうか。
【小倉こども家庭庁担当大臣】
「まず歳出削減の努力というのはやらなければいけないと思っております。それに加えまして、 どうやって社会的に、安定的に支えていくかということについて、どの財源をどう使うっていうところは、一切決まっておりませんで、まさにいろんな人にご意見をいただきながら、6月にはある程度のところは、お示しをしていくということになるかと思います」
■財源は消費税?社会保険料?
【ジャーナリスト 安藤優子さん】
「 1つお聞きしたいんですが、こども家庭庁がこれから少子化対策をやっていこうということで、いろんなことが今、政策として書かれていますよね。これが、どのくらいまで絞り込まれるかっていうのは、まさに今、検討中だっていうことなんですが、安定的にどこかから財源をもらってくるとなると、令和臨調の方もおっしゃっていましたけれども やっぱり消費税なのかな、薄く広くという風に私たち思ってしまうんですね。もしくは、社会保険料という風なイメージがあるんですが、やっぱりこれだけの物価高で、年金生活をしている高齢者の方たちなんかは、『なんで私たちが、そこを負担しなくちゃいけないの』っていう風になりかねない。やっぱりこれ広くいただくっていうのは、なかなか難しいと思うんですが、大臣ご自身はどういう形が一番望ましいと思われますか」
【小倉こども家庭庁担当大臣】
「なかなか、私の個人的なことを申し上げることは難しいと思います。消費税については、総理も当面は触れないと申し上げておりますので、それ以外の財源について議論することになろうかと思います。労働者の立場、経営者の立場、地方の立場、いろいろあると思います。ですので、こども未来戦略会議にそれぞれ労働者の代表、経済界の代表、地方団体の代表、それ以外の当事者も入っています。最初に結論ありきで決めるのではなくて、そういった方たちの意見をちゃんと聞いた上で、いずれにしても6月に一定の結論は出さなければいけないので、そこでしっかりまとめて、お示ししたいなと考えています」
【ジャーナリスト 安藤優子さん】
「6月には、骨太の方針の場で、結局財源も決まると、こういう風に私たちは考えていいんでしょうか」
【小倉こども家庭庁担当大臣】
「どの粒度で決めていくかということは別としまして、私のたたき台に書かれている政策、その政策の裏付けとなる予算、その予算の裏付けとなる財源、これについては一定程度お示しをすることになろうと思います」
■学校の先生の働き方が気になる!
ここでまたお母さんたちから、大臣に聞きたいことがあるということです。
【荒川さん】
「こんにちは。今私は小学生の育児をしているんですが、大臣に聞きたいのが、公立の学校環境や先生の働き方、また先生方の負担がぜひ減るように持っていっていただきたいと思うんですが、そのあたりいかがでしょうか」
【小倉こども家庭庁担当大臣】
「はい、ありがとうございます。少子化対策の中には、『公教育の再生』という一言しか盛り込んでおりませんけれども、おっしゃってくださった教員の働き方改革は、非常に重要だと思っております。やっぱり特に高校生とかが、“補助学習費”といってお金がかかるのはですね、予備校とか塾とかそういったところがすごく膨らんでる事がありまして、本来であればですね、学校の中でしっかりと将来の勉強も含めてやれるような環境が重要だと思っています。そういったことを教えるための、先生のゆとりが重要だと思っておりますので、そこは少子化対策とは別に、公教育の再生をおっしゃっている点も含めて、しっかり進めていかなければいけないと考えています」
子どもに対しても、子育て世代に対しても、取り巻く環境がきついと感じている子育て世代の方がいらっしゃると思います。社会の風潮、社会の理解をどう醸成していくかも、問題ではないでしょうか。
【小倉こども家庭庁担当大臣】
「本当に重要だと思います。アンケートを取ると、例えばスウェーデンでは98%の人が、『自分たちの社会は子育てに優しい』と答えます。日本はわずか4割程度でありますので、やはり一般的には日本の社会は子育てしづらい、と思われてしまってるということです。そういった中で、総理もですね、みんなで子どもや子育て世代を支えるための国民運動を展開をして、社会気運を変えていきたいとことを強く申し上げております。一人一人が包まれるように暖かく子どもと向き合えるような、そういう社会を、皆で作っていかなければいけないというのは、その通りです」
■受け入れられるか?『こどもファスト・トラック制度』
【加藤報道デスク】
「大臣にもう一つ。この前から始められた、『こどもファスト・トラック制度』、子連れの方が優先的に入場できたりする制度で、子育てをしてる私たちからするとありがたいんだけど、一方でちょっと気を使う部分もあるように思います」
【榎本さん】
「郵便局とか銀行、役所とかは、生活に直結するから、制度を始めていってもらわないといけない。でも博物館であるとか、 娯楽はそこまでやっちゃうと、子育てが強調され過ぎて、遠慮したいかなと」
【小倉こども家庭庁担当大臣】
「おっしゃっている通りで、例えばあの子連ればっかりの施設で、こどもファスト・トラックって作ってもあまり効果ないと思います。郵便局はじめ、生活でよく行くけれども、子連れだとなかなか大変な場所、こういったところを念頭に置きながら、こどもファスト・トラック、しっかりと作っていきたいと思います。何よりも重要なのは当事者の意見ですので、ご意見を踏まえながら、こどもファスト・トラックも進めていきたいと思います」
財源の部分も、環境の部分も、これらをしっかりと整えてこその“少子化対策”ということになってくると思います。まだ聞きたいことがあるのですが、時間となりました。小倉大臣、お母さんたち、皆さんありがとうございました。
(関西テレビ「newsランナー」2023年4月26日放送)