「卒業式はないと思った」 不登校になった中学生がフリースクールで”晴れの日” 不登校の児童・生徒は”過去最多”の30万人に 求められる子どもたちの居場所とは? 2023年04月20日
現在、30万人にのぼる不登校の児童・生徒。年々、その人数は増えています。
■ 不登校を経て…中学を卒業
先月、大阪府・泉佐野市で行われた小さな卒業式。
【キリンのとびら・水取博隆代表】
「仲間たちといつも明るく過ごし、時には仲間を励まし、時には支え、キリンのとびらに欠かせない存在として今日まで過ごしてくれました」
この日、中学3年生のらむちゃんは卒業を迎えました。
ここは、不登校の子供たちが勉強をしたり、友達と過ごしたりする「フリースクールキリンのとびら」。
小学3年生から中学3年生の15人が在籍しています。
【水取博隆代表】
「義務教育の場所自体が辛いと感じる子どももいるのは事実で、そういった子供たちが誰ともつながれないのが問題。つながれる場所を作りたい」
■ 不登校の子どもは過去最多に
2021年度、不登校の児童・生徒は過去最多のおよそ30万人に上っています。
政府も先月、「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策」を策定し、対策に動き出しました。
自宅でのオンライン授業を成績に反映することや学校とフリースクールの連携など、「様々な形で学びを提供すること」が検討されています。
中学1年生の時、人間関係が原因で不登校になった、らむちゃん。
【母】
「話さんかったな」
【らむちゃん(当時中3)】
「ほんまに部屋で一人でおって、ご飯もほとんど食べてなかったし、1週間くらい寝てないときあったよな、ずっと毎日朝から夜まで寝れなくて」
たくさんの家族写真の中に、中学校での写真は1枚もありません。
親子で悩み、たどり着いたのが、「フリースクール」という選択肢でした。
フリースクールでの生活を通して自分を取り戻していった、らむちゃん。
それは、支え合って過ごした仲間も同じでした。
【中学3年生】
「(将来)イラスト関係の仕事がしたいな。不登校で一人でいたから自分なんてなられへんと思ったけど、自信がついてできるかもって思えるようになった」
【中学2年生】
「人と話すのが得意になった。(これまで)自分からしゃべられへん感じでここきてから自分から喋れるようになった」
自分を変えてくれた「居場所」を巣立つ日。
【フリースクールのスタッフ】
「一番近くで支えてくれたお母さま。らむへメッセージをいただきます」
【らむちゃんの母】
「すごい素敵な卒業式を開いていただいてありがとうございます。卒業式はないと思っていたから感動して。感謝の気持ちでいっぱいです」
「らむへ、卒業おめでとう。決してらむにとっては、中学校生活は楽しいものではなかったと思います。中1年生の夏ごろかららむの顔つきがどんどん曇り始めて一番笑顔の似合うらむが笑わなくなった。毎日学校に行かせようとしてなかなかラムの気持ちをすぐに理解してあげられなくてごめんね。ずっとらむのこと応援しているからやりたいことにどんどんチャレンジしていってね。うまれてきてくれてありがとう。ママは幸せです」
らむちゃんは卒業後、高校に通うことに決めました。
【らむちゃん】
「ここに来ていなかったら自分がこの世におらんかったかもしれへんし、ここに出会えてよかった。人間関係を克服できたから高校にそれを生かせたらなって」
【水取博隆代表】
「(政府の不登校対策が)すべてがうまくいけば地域みんなで不登校の子を包み込んでいけるのではないか。学校と民間のフリースクール含めて、みんなで包み込んでいけるのではないかという期待感は非常に大きいです。絵に描いた餅にならないようにしないといけないなと」
子どもたちが本当に望んでいる「学びの場」の整備が求められています。
■ “誰一人取り残されない” 国が新たな対策
政府は先週初会合を開き、不登校支援についての議論を始めました。
「学びの場の確保」、「SOSを見逃さない」、「学校の風土」の見える化を3本の柱としています。
オンライン授業を成績に反映することや学校運営の改善などを検討するということです。
これらの方針について、キリンのとびら代表の水取博隆さんは「子供の気持ちは、変化しやすいので、その時に『学びたい場所』に送り出せることが重要」と話しました。
文科省は、夏ごろにも取り組みの見通しをまとめる方針です。
(2023年4月20日 関西テレビ「newsランナー」放送)