衝突事故により夫婦を死傷させたとされるトラック運転手に、19日、実刑判決が言い渡されました。争点となったのは「居眠り運転」でした。
【父・隆雄さんを亡くした星野亜季さん(35)】
「『何とか重い刑にしてもらうように祈ろうね』って、父に、仏壇に声を掛けて出てきたんですけど。『良かったね』とも報告もできないし、残念だったねとも報告できない…」
判決に複雑な思いを語った星野亜季さん。
最愛の父を失ったのは去年9月のことでした。京都府笠置町の国道で、トラックと軽ワゴン車が正面衝突し、軽ワゴン車を運転していた亜季さんの父・山本隆雄さん(当時65)が死亡。一緒に乗っていた亜季さんの母・倫代さん(65)は、一時意識不明の重体となり、今も脳に後遺症があります。
【星野亜季さん】
「(両親は)仕事を引退したばかりで、これから自分たちで楽しく生きていこうとした矢先の事故。あんな損壊のひどい遺体だったので…」
2人が乗っていた車の前の部分は、原形をとどめないほど大破していました。
【記者リポート】
「トラックはあちらのセンターラインを大きくはみ出し、山本さんの車に正面衝突しました」
起訴状などによると、トラックを運転していた岩瀬徹郎被告(42)は、反対車線に進入して、山本さん夫婦を死傷させたとして、過失運転致死傷の罪に問われています。
裁判の争点となったのは、「居眠り運転」でした。検察側はこれまでの裁判で、後続車のドライブレコーダーに映っていた岩瀬被告のトラックが、約10分間にわたって蛇行運転を繰り返す様子を指摘し、「居眠り運転があった」としてきました。岩瀬被告も警察の取り調べでは、居眠り運転を認めていましたが、裁判が始まると、
岩瀬徹郎被告は「居眠り運転をした記憶はない」と、一転、「居眠り運転」を否定したのです。
【星野亜季さん】
「もう本当に、怒りで体がブルブル震えるような形になりました。(公判中)ドライブレコーダーがまるまる流れたのですけれど、裁判長からも『一体これは何なんだ』と質問があっても、『記憶にありません』と繰り返し答えているので、誠意は一切感じなかったです」
一体なぜ、被告はこのような主張をしたのか。議論がかみ合わない中、迎えた19日の判決で京都地裁は、「映像などから、当時被告人が眠気を催していたことは明らかであるのに、過失責任を認めないかのような主張もしており、実刑を免れない」として、禁錮2年8カ月の実刑判決を言い渡しました。
法廷で京都地裁の増田啓祐裁判長は「遺族はあなたの法廷での発言に、怒りをあらわにしていた。それはなぜなのか、あなたは考える必要がある」と岩瀬被告に語りかけました。
遺族の亜季さんは、裁判長の言葉に感謝しながらも、被告の態度への怒りを訴えました。
【父・隆雄さんを亡くした星野亜季さん】
「(被告が)『実刑』と聞いて、こう顔を覆っていたんですけれど、その前にこちらにお辞儀とか何かそれくらい一つあってほしいなって。正直、刑期の長さでは納得はできないです」
「こういう事件があるということを知ってもらって、きょう1日運転する態度、姿勢、一瞬でもいいから安全運転に対する意識を、もっと持ってもらえる人が1人でも増えたらいいなと思います」
(関西テレビ「newsランナー」2023年4月19日放送)