万博まであと2年…パビリオン建設がピンチ! 資材高騰・人手不足でこのままいくと“妥協”でスケールダウンも 各国のパビリオン責任者を“直撃”取材 2023年04月13日
開幕まであと2年となった大阪・関西万博。しかし今、万博の顔であるパビリオンがピンチに陥っています。取材をしている経済・万博担当の沖田菜緒記者によると問題の1つは…「パビリオンの建設業者があまり乗り気じゃない」ということです。一体どういうことなのか?パビリオンの建設を目指す各国の動きを取材しました。
万博の顔となるのが世界各国の「パビリオン」。 1970年の大阪万博では、お目当てのパビリオンを一目見ようと、連日、大行列ができました。
2年後の大阪・関西万博にも現在153の国と地域が参加を表明し、続々とパビリオンのデザインを発表しています。その中で注目の2カ国を経済・万博担当記者が取材してきました。
シャボン玉をイメージした「万博史上最も軽いパビリオン」がコンセプトで、屋上には「ハイジと会えるバー」ができるんだとか…
スイスは、来年3月から建設を始めるべく、毎週会議を行っていて、現在、設計図面を仕上げる作業に入っています。
【オンラインの会議のようす】
「左が2週間前にお見せした案で、右が改良した案です」
「エレベーターと階段の位置を逆にしました。これによって、来場者がエレベーターにすぐにアクセスできるという利点があります」
今回、スイスの責任者サルチリさんが新たに決まった、パビリオンの見どころをこっそり教えてくれました。
【スイスパビリオン サルチリ政府代表】
「ハイジは間違いなくマスコットとしてパビリオンに登場します。でも実は、もっと洗練された方法も考えているんです。例えば、スマホのアプリを通してハイジが来場者を案内してくれるとか…来場者全員にスイスパビリオンに来てほしいですね」
一方、3月大阪に視察にやって来たのは…ポーランドの万博チームです。
【ポーランドの責任者 グジェゴシュ・ピェホビアク政府代表】
「大阪城もすごくきれいですが、満開の桜が見られてとても嬉しいです」
ポーランドは、前回のドバイ万博でもデザインにこだわったパビリオンを出展。「渡り鳥」をコンセプトにした独創性が評価され、展示・デザイン部門の銀賞を受賞しています。ポーランドの責任者グジェゴシュさんは、当時から大阪万博への期待を語っていました。
【ポーランドの責任者 グジェゴシュ・ピェホビアク政府代表】
「(次の大阪万博に向けて)すでに準備を始めています。ポーランドにとって大阪万博はアジア地域との窓口になるでしょう。大阪はテレビでしか見たことがないので、早く行きたいですね」
念願の大阪万博への参加が決まったポーランド。発表したのは音楽家「ショパン」がコンセプトのコンサートホール付きパビリオンです。
【ポーランドの責任者 グジェゴシュ・ピェホビアク政府代表】
「ドバイでも建築で賞をもらいましたが、(大阪万博は)ドバイと同じかそれより素晴らしいものになるといいなと思っています。コロナの影響で準備が1年遅れているのでタイミングとの戦いなんです」
デザイン部門での連続受賞を目指して意気込むポーランド。今回の大阪視察は理想のパビリオンを作ってくれる建設業者を決めるのが重要なミッションでした。しかし、建設業者はなかなか決まらず工事開始のめどが立たないのが現状です。建設会社によると、「資材の高騰」や「人手不足」の懸念があり海外パビリオンの工事を受けるのはかなりハードルが高いということです。
【ポーランドの責任者 グジェゴシュ・ピェホビアク政府代表】
「ウクライナ侵攻の影響で世界的に物価が上がっています。それは電気だけではなくて建築資材もです。パビリオンは可能な範囲で建てなければならないでしょう。(日本の会社からの)サポートを期待しています」
まだまだ解決すべき課題も多い大阪万博。2年後の会場で各国の「理想のパビリオン」を見ることはできるのでしょうか?
パビリオン建設がピンチに陥っているということですが、取材にあたった経済・万博担当の沖田記者は…
【経済・万博担当 沖田菜緒記者】
「現場で建設業者に取材をしているとこんな本音が聞かれました」
(建設業者の本音)
『万博への参加はPRになるけど、資材高騰や人手不足でコスパ(コストパフォーマンス)が悪い』
万博のパビリオンの建設を担うことで世界に技術力をアピールできるなどメリットの方が大きいように思えるんですがそうではないということでしょうか?
【経済・万博担当 沖田菜緒記者】
「大型パビリオンはデザインが複雑で費用がかかる上に資材が高騰しています。設計に時間もかかるし、資材が高騰している中で、発注額でできるかと言われると難しいんです。
さらに建設会社は万博以外にも仕事を抱えているので大量の職人が確保できるのかという課題もあります。さらに、夢洲では多くの国が一斉に工事を始めるのでそれぞれ段階に必要な職人の取り合いになるという状態も予想され、建設会社は二の足を踏んでいる状況…ただ、4月中に建設業者を決めないと厳しい状況です」
じゃあ、このまま手を挙げるところがなかったらパビリオンができない事態に?
【経済・万博担当 沖田菜緒記者】
「最終的には各国とも、どこかの建設会社と契約することになるかと思いますが、まさに今、各国も残り時間との戦いの中で「妥協点」を探っている状況です。ただ、さまざまな問題点を考えると…万博の目玉であるパビリオンが当初の計画より“スケールダウン”してしまうケースが続出する可能性も考えられます」
実際、当初の計画よりスケールダウンしたパビリオンもすでに出てきています。
【経済・万博担当 沖田菜緒記者】
万博のプロデューサー(アニメーション監督の河森正治さん)が手掛けるパビリオンで、 去年の2022年に建設会社が募集されたのですが、どこも手を挙げず入札は不成立となりました。そこで予定価格を5000万円引き上げて再入札されたんですが、価格は上がったにも関わらず資材高騰の影響などで内容はスケールダウンしてしまいました。
パビリオンのテーマ館「いのちをめぐる冒険」の外観はキューブを組み合わせたデザインとなっていますが、キューブの数は当初100個だったのが90個に減らされたり、長さ100メートルの屋外の通路も廃止されることになりました。
【経済・万博担当 沖田菜緒記者】
「建設会社の現状や資材高騰などの影響でスケールダウンは仕方のない状況だと思いますが、海外の担当者や万博の担当者は、私たちがパビリオンで出来る体験やコンセプトを損なわないように、細かいところでコストを削減して準備を進めている状況だと感じます」
財政面で余裕のあったといえる「ドバイ万博」の次に実施される形の「大阪・関西万博」…厳しい面は多々ありますが、なんとか来場者が“満足”いくよう、各方面の知恵と努力で実現してほしいところです。
(関西テレビ「ニュース・ランナー」2023年4月13日放送)