舌がん乗り越え…堀ちえみさん 地元・堺で凱旋コンサート 術後は発声すら難しく…それでも不可能を“可能”に「乗り越えた先には乗り越えた分だけの幸せがある」 2023年04月19日
歌手・堀ちえみさんはコンサートを行うため、地元・大阪の堺市にいました。今回コンサートを行う『フェニーチェSACAY』、このホールがあった場所は、ちえみさんが幼稚園の時にお遊戯会で初舞台を踏んだ思い出の地です。
このステージに戻ってくるまでには、たくさんの葛藤がありました。
【堀ちえみさん】(2023年1月)
「前を向かないといけないのは分かっていても、やっぱり前向いては後ろを振り返ったり…」
2019年にステージ4の舌がんと診断され、その年の2月、舌の6割以上と首のリンパに転移した腫瘍を切除。そんなちえみさんを支えたくれたのは“家族”でした。
1982年にデビューしたちえみさん。2023年3月21日でデビュー41年を迎えました。2023年2月には、念願の復活コンサートを東京で成功させました。
【堀ちえみさん】
「世界にひとつしかない、私だけの言葉。やっぱり諦めないで、乗り越えた先には絶対に乗り越えた分だけの幸せがあると、私はそう信じてこれからも生きていこうと思っています」
大変な病気を乗り越え、14年ぶりに地元・堺での凱旋コンサート、この日のために温めていた一曲に込める思いとは…
■東京公演から1カ月半 地元・堺で凱旋コンサート
東京公演から1か月半、朝から会場入りし、取材に応えるちえみさん。
【堀ちえみさん】
「仁徳天皇陵の前方後円墳です、術後初めていった言葉『前方後円墳』なんてね」
取材陣に、堺のお土産として前方後円墳のお菓子を配るなど、リラックスした雰囲気です。
【堀ちえみさん】
「堺をよろしくお願します。いいとこなんで」
そして、ちえみさんが行くところには、この人たちの姿も…
「ちえみちゃん」と同じく、午前中から会場入りした親衛隊の皆さん。中には新潟県から来た男性も…
【新潟からきた親衛隊の男性】
「今回、復活って感じで親衛隊のお仲間に入れさせてもらった感じです」
【親衛隊 総会長】
「テレビとかに取り上げていただいて、また一緒にちえみちゃんを盛り上げたいっていうことで、助っ人加わったので今まで以上にパワーアップしていきたいと思います」
【コンサートに来場の親子:母(60代)】
「私が20代のときからちえみさんのファンで…」
【コンサートに来場の親子:息子(32歳)】
「知っている曲多いと思います。“懐歌”ってイメージです」
堺の会場にはおよそ1300人が訪れました。
【堀ちえみさん】
「大阪に帰ってきました」
■「もう一度歌いたい」と不可能を可能に 努力で手に入れた発声
「歌うこと」を夢にした歌手・堀ちえみさん。地元・堺のステージに向けて少しでもパフォーマンスをあげたいと何度も練習を繰り返しました。
【ボイストレーナーAMAZONS 大滝裕子さん】
「とにかく努力の人なので。前例がないことを、いくつもちえみさんはクリアしてきた方なので。不可能だったことを可能にできる」
ちえみさんの舌は移植手術によって分厚くなっていて、声を出すのに適していません。舌先は神経がつながっておらず、残っている根元の筋肉やあごを使って工夫しながら歌を歌っています。
ちえみさんのリハビリノートには、言いにくい言葉は丸で囲い、ひと文字ずつ、発音する時の舌のポジションを確認しながら、一から覚え直します。
ちえみさんが日々の努力で手にした発声は、医師や、リハビリを行う専門家も注目しています。
3月、京都光華女子大学で、自身のがんやリハビリの経験についての講演会を行いました。
【堀ちえみさん】
「今まで簡単にできていたことが全くできない、トライすることによって不自由さを突きつけられているだけなんじゃないかって…。壁は何回も何回も大きく立ちはだかる、それ乗り越えては楽になって、一生懸命乗り越えてそうやってやってきた」
術後およそ半年の2019年7月、初めてうけたボイストレーニングで…
【堀ちえみさん】
「また一から…」
【ボイストレーナー】
「必ずできますから大丈夫ですよ。いろんな感情でてくると思うんで、どんどん出していきましょう」
涙するちえみさんにボイストレーナーが握手しながら「大丈夫、大丈夫」と声を掛けます。舌を失うまでできていたことが、できないもどかしさに涙がとまりません。
「もう一度歌いたい」とちえみさんは、独自の口や舌の動きを習得するトレーニングを続けました。
講演会に参加した人たちの中には、がんを患った人や、同じように舌を切除した人もいました。
【講演会の参加者】
「感動しました!」
【堀ちえみさん】
「お互い体に気をつけましょう」
実は、ちえみさん、「きしちにひみり」など子音+母音の「い段」の音と、「けせてね…」など子音+母音の「え」段の音が出しづらく、自分の名前である「ち・え・み」がとても発音しにくいのです。
–Q:「ちえみ」さんも「い段」、「え段」の音が多いですね
【堀ちえみさん】
「そうなんですよ。『み』も入っていて、『ほ』だけが言いやすくて。『り』が大変…。それを頭の中で(舌の動きを)こう動いてるって考えながら、発語も、歌も歌っていかなきゃいけない、頭の中で舌の動きをぜんぶ考えて」
■東京公演からさらに磨きをかけ…地元・堺へ感謝の気持ち込め「メルシ・ボク」を
東京公演のあと、歌い方に磨きをかけ、地元・堺への感謝の気持ちを歌にこめてコンサートに挑みました。
そして、地元・堺のファンのために温めていた曲「メルシ・ボク」を披露しました。デビュー曲であり、フランス語の「ありがとう」を意味しています。
♪メルシ・ボク かわいい踊り
メルシ・ボク メルシ・ボク よりそえば頬が熱い
そして発音しにくかった自分の名前を連呼する曲、「CHIEMI SCQUALL」。努力の積み重ねが歌声になります。
♪C・H・I・E・M・I ちえみ 好きよ あなたがスコール
ファンも立ちあがって全力でちえみコールです。
【姫路から来た30代女性2人組】
「すごい楽しかったです~ちえみちゃん大好き!ちえみちゃん大好き!パワフルな歌声、聞けて本当に良かったです!」
【親衛隊 総会長】
「ちえみちゃんがパワーアップしたので、親衛隊もパワーアップしないといけないと思います。まあ精一杯頑張ったんですけど、ちょっとまあ歳というか、疲れが残ってて…ちえみちゃんファンが一緒になって盛り上げてくれたので、すごいうれしかったです」
コンサートを終えた舞台裏で…
【堀ちえみさん】
「大阪やっぱりあたたかいですね。地元愛がすごくて、ほっとしたのと、はじけようと思った気持ちがパワーアップさせてくれたのかなと思います」