つかんだ岩を「絶対に放しちゃいけないと思った」 保津川下りで転覆した舟の乗客が語る事故の瞬間 「あっという間に水の中に…」 救命具なぜ開いたのか不明 落ち葉のたき火で寒さに耐え… 2023年04月07日
■ 川に転落…助け出された乗客が語る事故の裏側
京都の保津川下りで船頭2人が死亡した転覆事故。
転覆した船に乗っていた女性が関西テレビの取材に応じ、船頭の転落から岩への衝突、救出後の混乱までの裏側を語りました。
女性は京都旅行で友人2人と舟に乗り込み、一番後ろに乗っていて、事故に巻き込まれました。
―Q.転覆事故はどんなふうに起きたのですか?
【転覆した舟に乗っていた女性】
「初めて乗ったので、流れがゆるいとか急だとか分からなかったんですけど、船頭さんたちは鳥や景色の説明とか軽いジョークとかで楽しませてくれて、そのまま順調に進んでいって。後ろを見たら、舵をとる人がバランスを崩したのか、背中から落ちていくのを見て。(他の船頭が)バランス崩しながら後ろに急いで来てくれたんですけど、舵をとることができなくて。『あかん、もう無理や!』という感じの声が聞こえました。(転落した船頭が)川の中から頭を出して、どんどん離れていくのを見て、すぐに前を向いたら岩があって、転覆したという形ですね」
「左手にスマホを持っていて、スマホを濡らすまいと上に掲げていたんですけど、あっという間に水の中に入ってしまって。その後はもちろん息もできないし、目もつむって何も見えないし、流れも速いし、そのまま速い流れの中を進んでいって。足もつかない感じで、どんどん沈んでいく感覚があったので、どうにか上に上にと足をばたつかせたりとか。せめて顔だけでも口だけでも息だけでもって思いながら、上に行きましたね。水の中に入ったら、流れも急なので、ほぼ何もできない状態ですね」
「どうにかもがいて水の上に何とか顔を出すことはできたんですけど、後ろとか前とか見ても同じ状況の人が浮かんで流れていて。前を見て岩があったので、つかまろうとしたけど、1回目の岩はつかまれずにつるっと手が放れていってしまって。これを逃したら死ぬんじゃないかと思いました。どうにか次の岩につかまれて。手を絶対に放しちゃいけないというのと、絶対に上にあがらなきゃいけないというのが頭にありました」
「岩の上にあがれて、ずぶ濡れの状態で、自分がちゃんと生きていると安心したのか、パニック状態でずっと泣いていました。しばらくはうずくまって、ずっと泣いていましたね。みんながどうなったかも全然わかんないので、友達も1人どこかに行っちゃったので、すごい心配でした。足も震えたり、手も体も震えて、唇も…結構水も飲んでたので水も吐いたり、すごく寒かったのを覚えています」
「アニメかゲームかマンガで見たんですけど、低体温症が頭の中にあったので、とりあえず服は脱げるところまで脱がなきゃって思って。上着とカーディガンを脱いで、白いシャツとズボンだけにして、絞って乾くのを待って。『低体温症は何度で死ぬんだっけ?』、『どうしよう、どうしよう』という感じで」
―Q:まわりはどんな状況でしたか?
【転覆した舟に乗っていた女性】
「舟の残骸とか人も流れていますし、ペットボトルとか、乗客のものだと思うんですけど、たくさん流れてきましたね。友達も流れてきたので、自分が落ちない範囲で足を伸ばして『つかまれ!』と言ったんですけど、たぶん友達もパニクってると思うので、つかまれなくて。そのまま下流の方に流れていっちゃって。そのあと下流方面から友達が上がってくるのを見て、安心できたという感じですね」
「自分の近くには5人くらいと、反対の岸に1人いましたね、見える範囲で。とりあえず安心できるところで、岩の上にいましたね。風も吹いていたので、岩陰に行ったりとか。女性が自分の子どもの名前を叫んで歩き回っていて、近くに船頭さんもいたので、お姉さんに『危ないから、また川に落ちちゃうから、頼むからその場に座ってくれ』と。その船頭さんが違う所に行った時は、その女性は歩いちゃっていたので、『自分の命を大事にして』と叫んで、その場にとどまらせた感じですね」
「少し経ったら、船頭さんがライターを持ってきてくれて、枯れ葉を集めてたき火をつけてくれて、『これであったまってください』と。そのとき自分は回復というか、歩ける程度にはなっていたので、船頭さんに『何かすることありますか?』と聞いて、『枯れ葉を集めてほしい』と言われたので、自分の持っていたバッグの中からビニール袋を取り出して、その中に枯れ葉を集めたりとかして、たき火の手助けをしましたね。船頭さんは他の状況把握に回った方がいいかと思って、『私が火をつけますので、他に行って下さい』と言いました」
「枯れ葉とかだけでは火が長時間つくことはなくて、火をつけるのにもちょっとだけ苦労しました。まだ川に上がって寒い状態だったので、火もカチカチというライター式だったので、手が震えてなかなか点かない状態でしたね。その後、船頭さんが小枝とかも持ってきて、火の中に入れて火を絶やさないようにしてくれたので、自分もそうしようと思って、枝を集めて、折って…を繰り返していました。これ以上自分も何もできないので、ただただ寒い中で待たなきゃいけない状況でしたね」
―Q:子供もいたんでしょうか?
【転覆した舟に乗っていた女性】
「ちっちゃい女の子も何が起きたのか全然わからなくて、親か知り合いがいるとはいえ、すごく怖いと思うので、体だけでもあっためさせてあげないと、と思って。(子供を)絶対川に落としちゃいけないと、近くに寄って体を抱えたりとか、「大丈夫だよ」と言ったりしながら近くにいました」
―Q:救助が来た時は?
【転覆した舟に乗っていた女性】
「船頭さんたちが手を引いてくれて、何隻かの舟に乗せてくれて、白いタオルが支給された感じですね。川側に船頭さんが縦に並んでくれて、自分が進むごとに別の人、別の人と手を引いてくれて、足場が崩れても絶対落ちないようにしてくれて、舟まで誘導してくれました。このまま舟で下るという感じで言われました。たった今、転覆で怖い思いをしたのに、また舟に乗って帰るのかと思いましたね」
―Q:救命具は付けていたんでしょうか?使い方の説明はあったんでしょうか?
【転覆した舟に乗っていた女性】
「舟に乗ってみんなが座った時に救命具が配られて。配りながら説明がありました。付ける位置とか、どうやったら膨らむとか、このひもを引っ張ると膨らむからと説明はありました。川から上がった時には開いていた感じで、いつ開いたのかもわからないです。手動式か自動式かの説明はされていなくて、たまたま開いていたのか、何かにぶつかって開いたのか、自動で開いたのか、分からない感じですね。緊急事態ではすっかり忘れているというか、開くことができないというか、水の中なのでひもに手をかけることもできないですし。『腰のひもを引っ張って!』という指示があれば、もしかしたら手を伸ばせたかもしれない感じですね」
―Q:保津川下りについて思うことは?
【転覆した舟に乗っていた女性】
「『スリリングな体験』とネットやインスタで見ていたので、絶対乗りたいなと思って。事故が起こる前までは、舟に乗ったらみんなが楽しい雰囲気だったので、なくなったらちょっと寂しいかなとも思いますね。事故があった当日は怖かったり、事故のことを話そうとすると涙が出てきちゃって話せなくなる状況だったんですけど、今は落ち着いたので」
楽しい思い出が、一瞬で恐怖の記憶となった転覆事故。
乗船していた方の生々しい声から、事故の恐ろしい状況が見えました。
事故をめぐっては「空舵」という操船のミスがあったことを運営する組合が認めていて、警察や国の運輸安全委員会が事故の原因を調べています。
(関西テレビ記者・宇都宮雄太郎)