初代を超えるか? 2代目「近大ラーメン」がキャンパス内にオープン “圧倒的失望感”を味わったコロナ世代のスタッフが新メニュー開発に挑戦 初日に300食の完売目指す 2023年04月07日
近畿大学で学生自らが経営するラーメン店がキャンパス内にオープンしました。トラブルを乗り越え開業にこぎつけた学生たちに密着しました。
■近大生が自ら経営 ラーメン店オープンまでの日々に密着 企業家精神を学ぶ
大学の食堂内でお披露目されたラーメン屋、「近大をすすらんか。」。スタッフは全員大学生です。
この店は、「近大マグロ」でも有名な近畿大学が、学生の起業家精神を養うことを目的に始めた、「近大ラーメン」プロジェクトの2代目です。
【近畿大学 細井美彦学長】
「新しいお店をやるということは、自分で道のないところに、いろんなものをつくっていく。そこで考える力をつけていくんだと思います」
バトンを受け継いだのは、「初代近大ラーメン」でアルバイトをしていた、総合社会学部4年の村上黎一郎さんです。
【近畿大学4年生 二代目「近大をすすらんか。」代表 村上黎一郎さん】
「お客様に、あしたもがんばろうと思ってもらえるような空間をつくりあげたい」
■4月のオープンに向け…新メニュー開発で試行錯誤
3月上旬、村上さんたちはオープンに向けて新しいメニュー作りに取り組んでいました。
【 二代目「近大をすすらんか。」代表 村上さん】
「うーん…ちょっと塩弱いかも」
このプロジェクトでは、大学側が、公募で選ばれた学生に店舗などの初期設備を提供して経営を支援する一方、赤字が続くと“強制終了”という厳しいルールもあります。
料理長をつとめる大学4年生の野田壮哉さん。新メニューのみそラーメン開発に、頭を悩ませていました。
【「近大をすすらんか。」料理長 野田壮哉さん】
「みそラーメンはほんまに難しくて…うまみがないんで。かといって、うまみ調味料だけ入れても、味にとがりが出ちゃう…」
利益をあげるには、学生から人気を集めるラーメンを作らなければいけません。試行錯誤を続けます。
【 二代目「近大をすすらんか。」代表 村上さん】
「“味落ちた”だけは言われたくないので、そこはこだわっていきたい」
【「近大をすすらんか。」料理長 野田さん】
「がんばって、初代を超える」
スタッフが試作と試食を繰り返し、ようやく、ひとつの味にたどり着きました。「OK!これでいこう!」と料理長・野田さんの声が調理場に響きました。
【「近大をすすらんか。」料理長 野田さん】
「みそラーメンはもうこれでいきます。自信はあるので。いいのができたと思います」
ついに完成!と思いきや…「お疲れ様です」と現れたのは、村上さんや野田さんの先輩である、初代「近大ラーメン」料理長の奥野亮太郎さん。
2人が作ったラーメンを試食すると…。
【初代「近大をすすらんか。」料理長 奥野亮太郎さん】
「ちょっと調味料の味がするから、うまみ調味料ちょっと減らして、鶏ガラ系の顆粒ダシとかに変えたほうがいいと思う」
自信作に、あっさりダメ出しをされてしまいました。
後輩たちについて聞かれると、奥野さんはニヤリとこう答えます。
【初代「近大をすすらんか。」料理長 奥野さん】
「(初代を)超えると言うてはるんで、この子たち。まぁまぁ、いけるんちゃうんすか」
(–Q:超えると言われるのは?)
「うれしいです。僕らもやっぱり超えてもらわなきゃ困るんで」
まだまだ、完成への道のりは険しそうです。
■2週間後のオープンを控え…初代に経営面のアドバイス聞く
オープン2週間前。初めてお店を経営する村上さんが、頼りにしている人のもとを訪れました。
「初代近大ラーメン」の代表で、いまは奈良県で自分のラーメン店を経営する西奈槻さんです。
【 二代目「近大をすすらんか。」代表 村上さん】
「1個上っていう違いですけど、めちゃめちゃ差がある先輩なので。すごいです」
オープン前に抱える不安を、西さんに相談しにきました。
【 二代目「近大をすすらんか。」代表 村上さん】
「オープン日の4月1日が入学式で1万人前後来る。食堂も開いてないから、多分流れ込んでくるだろうと」
【初代「近大をすすらんか。」代表 西奈槻さん】
「早さ求めるとみんな雑になるし。俺らにとっては、100杯のうち1杯でも、お客さんにとってはその日の1杯は1杯。それ(雑さ)が伝わっちゃうよね、部活的にやっちゃうと。そこはプロ精神をもって。自分だけがプロ精神を持っていたとしても、まわりに伝達するのが一番難しい。代表の人間力が一番試される。(スタッフは)基本的にみんな学生やし」
西さんは、村上さんのリーダーとしての成長に期待しています。
–Q:村上さんの性格は?
【初代「近大をすすらんか。」代表 西さん】
「性格的には優しいのでそこは苦労するんじゃないかなと思いますけど。僕のリーダー像をまねる必要はないので、自分らしくすればいいんですけど、でも言えることは言える関係じゃないと。なれ合いじゃないんで」
年齢の近い2人。大学生ならではのこんなアドバイスも。
【初代「近大をすすらんか。」代表 西さん】
「支えてくれる人いるほうが頑張れるかもしれない。この1週間で(彼女)つくらんかったら時間ないで」
【 二代目「近大をすすらんか。」代表 村上さん】
「じゃあ無理です」
–Q:オープンしたら無理?
【初代「近大をすすらんか。」代表 西さん】
「オープンしたら無理ですよ。それに時間使ってられない」
【 二代目「近大をすすらんか。」代表 村上さん】
「彼女欲しい」
■コロナ禍の学生生活…失望感じるも 初代近大ラーメンがきっかけ 「自分の店を持ちたい」
楽しい大学生活を夢見て入学した、近畿大学。しかし、入学当時の生活は、思い描いていたものとは、ほど遠いものでした。
【 二代目「近大をすすらんか。」代表 村上さん】
「コロナまっ盛りの時期に入学して、入学式もなくせっかく大学に来て4年間友達つくって、勉強がんばろうかなってときにコロナで何もできず…圧倒的失望感ですね」
そんな中、初代近大ラーメンでアルバイトをしたことが転機となり、これまで考えもしなかった、「自分の店を持つ」という夢ができました。
【 二代目「近大をすすらんか。」代表 村上さん】
「それまで(別の)飲食店で働いていましたけど、早く時間たたんかなあとさぼってみたり、洗い物ちゃちゃっと済ませて休んでみたりしていました。近大ラーメンは、学生で回す店なので、色んなこと教えてくれるし、やってみろって挑戦させてくれるので。自分が将来、飲食店をする上で、いま盗めるものは何やろうっていう考えになりました」
オープンまであと3日。直前になっても、トラブルは続きます。この日は洗い場の排水管からの水漏れに悩まされます。しかし頼れる先輩はもういません。自分たちで責任をもって全ての作業を進めていきます。
【 二代目「近大をすすらんか。」代表 村上さん】
「排水溝直っていない。直さなあかん」
ラーメンの味のチェックも、大詰めに入りました。
【 二代目「近大をすすらんか。」代表 村上さん】
「ちょっとまだ甘い。タレは多分いけてる。肉味噌がちょっと甘かったかも」
お客さんに喜んでもらえるラーメンを作るため、最後まで手を抜きません。
■数々のトラブル乗り越え…迎えたオープン日 目標は300食
オープン当日の朝を迎えました。
【 二代目「近大をすすらんか。」代表 村上さん】
「おはようございます」
(–Q:何時くらいまで準備した?)
「朝4時半まで」
(–Q:完成した?)
「できました。自信あります」
初日の目標は、300食を完売すること。村上さんを中心に、元気よく準備を進めます。
そしてついに、「2代目近大ラーメン」がオープン。お昼どきになると、予想通り大勢の新入生が店にやってきました!
村上さんも、周りに指示を出しながら、必死に調理します。店には常に大行列ができて、店内は大忙し。
どうにか、目標の300食を完売できるかと思われた、そのとき、まさかのトラブルが…。
【スタッフ】
「卵どこやった?卵いったん割りきったで」
【 二代目「近大をすすらんか。」代表 村上さん】
「うそや。え、買ってきたやつ全部ない?やばい」
【スタッフ】
「提供分たりない!」
【 二代目「近大をすすらんか。」代表 村上さん】
「ローソン走って!」
卵がなくなってしまうという手痛いミス。野田さんも呆然…。
野田さん、スタッフと共に並んでいるお客さんに頭を下げます。
【「近大をすすらんか。」料理長 野田さん】
「15分ほどかかるので、返金される方は返金します。申し訳ないです、ごめんなさい」
大急ぎで卵を仕入れ、何とか調理を再開しましたが、お客さんを待たせてしまいました。
村上さんは、もう同じことが起きないようにと、リーダーとして周りに声をかけます。
【 二代目「近大をすすらんか。」代表 村上さん】
「これから卵取った時点でなくなったら絶対言って」
その後は、大きなミスなく、元気よく接客を続けたチーム「2代目近大ラーメン」。そして…
【 二代目「近大をすすらんか。」代表 村上さん】
「OK!ちょうど終わりです」
見事、300食を完売することに成功しました!
新入生からの、味の評価は…?
【新入生たち】
「めちゃくちゃおいしいです!(また)ぜひ、行きたいです」
「濃くて味がしっかりあっておいしいです」
「先輩たちが活躍しているので、刺激をもらって自分もそうなれるように、がんばりたいと思います」
営業が終わった後に、駆け付けた西さんにも、300食の完売を報告しました。
【初代「近大をすすらんか。」代表 西さん】
「うまくバトンが渡っているなら、それが一番うれしいかな。寂しい気持ちもありますけど、僕自身、もっとやらなあかん気持ちのほうがありますね」
【 二代目「近大をすすらんか。」代表 村上さん】
「課題だらけですけど あのメンバーやったら解決できそうなことばっかりです。二代目としてもっとはやらせる。近大の中では留まらないくらい外にも知ってもらって、“近大ラーメンを全国へ”、その目標に向かって、がんばっていきたいと思います」
失敗も経験しながら、経営者としての第一歩を踏み出した、二代目近大ラーメン。全国に知られる有名ブランドとなることを目指して…挑戦は続きます。
(2023年4月5日放送)