各地で迎えた“マスク世代”の卒業式 たくさんの制限を乗り越え…マスクとともに過ごした3年間 最後はマスクなしで…皆の顔を見ながら終わりを迎える 2023年04月05日
学び舎と、仲間と、そしてマスクと別れを告げる春。制限だらけの3年間を過ごしたマスク世代の子どもたちが各地で卒業式を迎えました。
■卒業式でマスク外す? 決めるのは自分たち
大阪市立墨江丘中学校では、卒業式でマスクを付けるかどうか、3年の生徒自身が決めることになっていました。教室での普段の会話も、その話題で盛り上がります。
「もう全部外した方がいいと思う」
「歌のときは外したい」
「男子は外したい人多かった。でも女子は着けたい人が多かったから」
「なんで逆に着けたいの?」
「顔見られたくないから」
卒業式でマスクをするかしないかを決める、「学年代表者会議」。生徒たちが意見を出し合いました。
「着席のときだけマスク着ける」
「5組は、全部外していいっていう意見が多数決で決まりました」
「強制にするのは良くないから、全員外すにして、着けたい子は着ける」
「俺は要らないと思います、ガサガサするのが嫌なんで」
「コロナの前は着けてなかったわけやん」
「じゃあどうします?」
「じゃあ全部外す!」
「全部外すでいいやん!」
出した答えは、「マスクを外す」でした。
話し合いの結果を、代表が校長に報告しました。
【墨江丘中学校3年 西埜来瞳さん】
「3年生は全員マスクなしで、全て」
【墨江丘中学校 林憲治郎校長】
「入場から?」
【墨江丘中学校3年 西埜さん】
「入場から退場まで」
【墨江丘中学校 林校長】
「心に残る卒業式になるようにしっかりと頑張ってやってください」
【墨江丘中学校3年 西埜さん】
「入学式の時からずっとマスク着けていて、この中学校生活も自粛期間から始まったから、マスク外したいし、全員の顔、表情が見られるような卒業式を迎えたいなと思っています」
■この3年間を忘れずに… 園長からの贈り物は“マスク”
兵庫県・尼崎市の難波愛の園幼稚園でも、この3年間、楽しみにしていた行事はさまざまな制限を受けました。そんな子どもたちに園長が最後に送ったのは、マスクでした。
【菅原園長】
「マスクそのものを着けなきゃいけない時代も終わるんだなということで、すごい時代があったなということの思い出の一つになるかなとは思っていて。子どもたちがかわいそうとか憂えたりもするけど、熱も出るし、病気もするし、ケンカもするし、色いろいろあるけどね、でもきっと明日はいいことがあるっていう」
巣立つ園児が、双葉のようにぐんぐんと育ってほしい、そんな願いを込めて、双葉の刺しゅうをしたマスクを贈ります。
■1人だけの6年生 島への通学も最後
琵琶湖に浮かぶ「沖島」の小学校。近江八幡市立沖島小学校です。全校生徒は11人で、今年、たった1人の6年生が卒業しました。
卒業生の将太君は、島の外から、この小学校に毎日通っていました。沖島に中学校はなく、もう島に通うことはなくなります。
将太君は、小さな在校生のお兄さん的な存在でした。2年生のしゅうた君は、少し寂しそうです。でも、将太君の卒業について聞くと「大丈夫」と答えます。
(Q:寂しくないの?)
【2年生 しゅうたくん】
「一瞬会える日が来るかもしれない」
(Q:学校で遊べなくなるやん)
【2年生 しゅうたくん】
「でも遊ぶ約束したら大丈夫だ」
■口元を隠すマスク外し…それぞれの道へ
奈良県立ろう学校では、高校3年生が次に使う後輩のために、ロッカーや掲示物の片づけをしていました。なじんだ教室ともお別れです。
3年前に手話を勉強し始めたばかりだった高山さん。マスクには悩まされ続けました。
【奈良県立ろう学校 高山姫星さん(手話)】
「やっぱりマスクしていると肌が悪くなったり、手話とかも読みとりにくい」
(Q:卒業後の進路は?)
【奈良県立ろう学校 高山さん(手話)】
「ネイルの専門学校に行きます」
卒業後は皆それぞれの道へと進んでいきます。
■卒業間際まで研修 いざ医療の最前線へ
卒業まで1週間。藍野大学では、看護技術のおさらいが行われていました。2年生、3年生で受けるはずだった病院での実習が、コロナの影響で学内実習に切り替わり、現場経験の不足が心配されていました。
【藍野大学 薮田陽子さん】
「(幼少期に)闘病生活がしんどかった時に、看護師さんがすごい心の支えになってくださっていて。お母さんの代わりみたいに、お姉ちゃんみたいな感じで関わってくださっていたのがすごい良かったんで、そういう看護師になれたらなって思って、子どもの病棟を希望しています」
■生徒とともに乗り越えた…教師にとっても特別な3年間
大阪市立井高野中学校では、卒業式に向けて準備が行われていました。先生たちにとっても特別な3年間でした。
学年主任の森明勇太先生。卒業アルバムを見ながら3年間の思いを話します。
【井高野中学校 森明勇太先生】
「コロナ禍じゃない時に、巡り合って成長できたら、もっともっと良かったんやろなって考える時もあったんですけど、この子らとやからこそ3年間乗り越えてこれたんやろなっていう思いが強いので、子どもらがよう頑張ってくれたなって言うのが一番の気持ちですね」
卒業式前日、先生に生徒から歌のサプライズが。
♪だれーにーもー、みーせーないー
生徒帰宅後、うれしそうにしていた森明先生。
【井高野中学校 森明先生】
「まさか今ここで『栄光の架橋』やとは思わんかった」
—Q:先生が好きな曲?
【井高野中学校 森明先生】
「なんで『栄光の架橋』チョイスしたん、僕めっちゃ好きなんですよ、僕めっちゃ好きやからうれしいですけど、なんであれチョイスやったか分からへん」
■たくさんの制限乗り越え…迎えたマスク世代の卒業式 マスクから解き放たれた春
【墨江丘中学校 西埜さん 答辞】
「3年前の春、私たちは新しい中学校生活への期待を大きく膨らませていました。久しぶりに再会した友だちや初めて会う友達、先生方の顔はマスクで隠れていました。行事等規制されることの多かった3年間ではあったけれど、『諦めなければ夢かなう』この44期生のスローガンから学んだ、諦めないことの大切さと培った絆を胸に、全力で前に向かって進んでいきます」
井高野中学校の卒業式では、森明先生の目から涙があふれていました。
【井高野中学校 森明先生】
「この3年間のスタートっていうのは先生たちにとってももう不安なスタートではあったんやけど。みんなにとっても、どうなるのかなっていうような3年間のスタートやったと思います。でもホンマにこの瞬間にみんながこうやって立派に、前を向いて進んでくれていること、本当にうれしく思います。心から自慢できる生徒たちだったなと」
【沖島小学校6年生 奥村将太さん】
「歴史学者か科学者になることが夢です」
【墨江丘中学校3年 西埜さん】
「まだ決まっていないんですけど、やっぱり皆のためになれる仕事につきたい」
【奈良県立ろう学校 鶴崎陽仁さん】
「このメンバーは最高です!またいつか会いましょう!」
マスクとともにあった3年間。たくさんの制限がありましたが、特別な3年間を最後は皆の顔を見て終えることができました。
(2023年3月28日放送)