明治維新以来150年ぶり大変革 文化庁が京都にやって来た! 長官は革新的ヒット曲「UFO」の都倉さん 新庁舎には国宝も…新しい“文化の発展”につながるか 2023年03月27日
3月27日から、文化庁が京都に移転。明治以降で、国の省庁が“全面的”に移転するのは初めてのことです。この大変革で、一体何が変わるのでしょうか。
■「文化庁移転」が決まったのは7年前の安倍政権。「地方創生」の目玉政策と期待
文化庁の移転が決まったのは7年前。
【安倍晋三首相(当時)】
「文化庁を文化財が集積する京都に全面的に移転」
当時の安倍政権が「東京一極集中」の是正や、「地方創生」の目玉として、文化財が多く残る京都に拠点を移すことを決めたのです。
移転先は、京都御所からほど近い旧京都府警本部の本館。1928年に完成した歴史ある建物です。
新庁舎の中には、国宝の「檜図屏風」や、「西陣織」をあしらったソファなど、随所に“京都らしさ”を盛り込んだ作りになっています。
3月27日の業務開始に合わせ、岸田首相はリモートで期待を込めてこう話しました。
【岸田文雄首相】
「文化庁が京都の地から、日本全国の文化の発展に貢献することを心から期待して、私のご挨拶とさせていただきます」
“国の悲願”とも言える今回の移転ですが、すべての機能が京都に移るわけではありません。
9つの課のうち、5つの課は京都に移るものの、他の関係省庁と頻繁に連絡をとる部門は東京に残ります。この移転で文化庁は、国の求める役割を果たすことができるのでしょうか。
■「文化庁移転」に京都人の関心は薄い。移転の意義を問う美術家も
日本の伝統や文化の中心、京都。そこに東京から“文化庁”がやってくる、このことに京都人の反応は…
【京都府民】
「東京からこっちへ来るのがね、どんだけ私らにメリットがあるのかとかね。なんか“移転”て騒いではるわりに、なんか遠い話みたい」
「全然知りませんでした。今日って。私たちの生活には何の関係もないかなって思ってしまいます」
京都の人たちは、それほど関心はないようです。
去年開かれた文化庁移転の意見交換会でも、京都を中心に活動する現代美術家の笹岡由梨子さんが率直な疑問をぶつけていました。
【現代美術家 笹岡由梨子さん】
「アホな質問だと申し訳ないんですけど、東京から京都に文化庁が移転するじゃないですか。何が変わるんですか?」
【文化庁 都倉俊一長官】
「僕もまだ文化庁に来て1年ちょっとで、本当はこれは総理にコメントしていただいた方が…」
文化庁の都倉長官はたまらず岸田首相にバトンをパス。
【岸田文雄首相】
「京都に文化庁を持ってきて、その京都の文化を背景に世界に発信する。だから同じ文化を発信するにしても京都の重みは、間違いなく発信の厚みにつながっていくと思うし、発信する場所が京都であるということがまた大きな意味につながるのではないだろうか」
“文化発信の厚みにつながる”などと曖昧な返答にとどまりました。
この時の岸田首相の言葉に笹岡さんは、
【現代美術家 笹岡由梨子さん】
「文化発信のために『京都』というブランドを使うことは入ってきたんですけど、その後何が行われるのかとか、どういうことが変わっていくのかに対しては、イメージが湧いていないのが現状です」
笹岡さんは、文化庁移転をきっかけに、京都にこれまで以上に多様な文化が根付くことを期待しています。
【現代美術家 笹岡由梨子さん】
「現代美術を購入するっていうのは、東京に比べてかなり購買される機会が少ない。若手の作家さんとかが発表する機会や、京都に住んでいる方たちが作品に触れる機会が増えたらいいなと思っています」
■「京料理」 かつて文化庁に門前払いを受けた経験も。移転を機会に積極的な関係構築に期待
京都の重要な文化のひとつ「京料理」。今回の京都移転では「食」に関する新しい推進本部も設置されることになっています。京料理店を営む栗栖正博さん(65)は10年ほど前、和食のユネスコ無形文化遺産登録を目指し、東京にあった文化庁に嘆願書を持って行きましたが、当時は門前払いだったと言います。
【たん熊北店 栗栖正博さん】
「当初はまだ文化庁には『食』というジャンルがなかったものですから、文化庁は『食』は我々はノータッチですよと、だから農水省に行って下さいと」
栗栖さんら料理店の店主たちが、当時の山田京都府知事に陳情するなど動いた結果、農林水産省が対応してくれることになり、2013年に無形文化遺産登録が実現しました。
【たん熊北店 栗栖正博さん】
「身近な京都に移転してこられたわけですから、機会があれば出向いて、我々から積極的に提案はしていくべきではないかと思っています。京料理を育んでいくためのイベントですね。依頼があれば一緒にやっていきたいと思います」
さまざまな期待を背負う文化庁の移転。5月中旬には職員全体の7割にあたる約390人が京都で業務にあたる予定です。
■明治維新以来150年ぶりの大変革 一体何をもたらすのか?
文化庁が京都にやってくるということですけど、「何が変わるねん」というのが皆さんの思うところではないでしょうか。身近な話としては、長官はピンクレディーさんが歌った「UFO」などを作曲された都倉俊一さんです。
京都に来た理由の1つが、関西は文化財の宝庫であるという点です。国宝の約55%、重要文化財の約44%が関西に集まっています。京都移転に伴って文化財の修復・保護の拠点として、「文化財修理センター(仮)」を整備していくということです。文化財の修復にあたる人材が枯渇している問題もありまして、新設のセンターが人材育成も担っていくということです。
守って保存する先に活用もキーワードになっていまして、文化庁の京都移転に伴って国が示している方向性として「文化財 保存・活用による『稼ぐ文化』の推進」というものがあります。文化財を使ってお金を稼ぐことも、ためらわずにやっていこうとなっています。
文化で稼ぐことに成功している海外の例としては、
・“古き”で稼ぐフランス 文化財を目玉として観光客を誘致 観光客数世界1位(2019年)
・“新しき”で稼ぐ韓国 音楽・映画などコンテンツ輸出額が過去5年で倍増(2020年 約1兆5000億円)
関西テレビ・神崎報道デスクは「稼ぐためには投資をしなくてはいけません。国がどれだけの予算を投じているか。フランスや韓国は国家予算に占める文化支出の割合が、日本よりはるかに大きく、日本が文化にお金を割いていないことが分かります。京都であればフランスがモデルになるかと思いますが、古いものはいっぱいありますので、そこにお金をつぎ込み、美術館を魅力的なものにしたり、プロモーションしてお客さんを呼んだりすることが重要になると思います」と話しました。
まだ課題があります。2020年に行われたシミュレーションでは、
・予算に関する業務 リモートで対応できたのは14.8%
・国会議員への説明 リモートで対応できたのは12.2%
ほとんどが東京に出張して対応したということです。
文化庁の職員からは「オンラインで国会議員に内容を理解してもらうのは難しい。次長クラスの出張が多くなり、他に支障が出るかも」という声があがっています。
当面、文化庁の職員の方は東京と行ったり来たりで大変になるかもしれませんが、関係者が協力して、京都移転をスムーズに進めていただきたいと思います。
(関西テレビ「報道ランナー」3月27日放送)