岸田首相がウクライナ電撃訪問し、ゼレンスキー大統領との会談ではおよそ620億円の支援とおよそ40億円相当の殺傷性のない装備品の供与を表明。ゼレンスキー大統領に「必勝」と書かれた、しゃもじを贈ったことが話題になっていますが、国会などでは、「警護」の問題も指摘されました。
ジャーナリストの鈴木哲夫さんも、今回のウクライナ訪問の「しゃもじ」問題よりも大事なのは「警護」問題だと話しています。
【ジャーナリスト・鈴木哲夫さん】
「しゃもじの問題に関して言えば、私がちょっと引っかかるのは、『必勝』という言葉…つまり、この戦争に勝てということですよね。ただ、しゃもじの問題も議論があるのは分かりますが、今回の首相のウクライナ訪問を受けて本当に議論すべきは…『警護』の問題!だと思います。日本のトップがまさに戦地に行く。戦争をやっているところへ行くわけですから」
そして、次のように「警護」問題を解説、問題点を指摘しました。
【ジャーナリスト・鈴木哲夫さん】
「海外の(ほかの)国は、それぞれの国の軍隊や特別に訓練されたチームなどがしっかりと警護していく。本当ならば(日本の場合)イメージとしては自衛隊、しかし自衛隊が戦地に行って首相を守るという『規定』はありません。例えば、自衛隊が行った場合、本当にドンパチ(戦闘などに)となった場合、自衛隊が“首相を守るために(相手を)撃っていいんですか?”…という話になります。このあたりがダメというより(も前に)『規定』がないんです。だから、3月の頭くらいから取材をしていて、“ウクライナに3月半ばくらいに行くのでは?”となった時に、私が一番ポイントだと思ったのは『警護』だったんですね。当時、出ていたのは、“NATOに頼んで任せよう”という話がありました。それは例えば一国のウクライナに警護を任せた場合は、ウクライナはロシアと戦争中ですから…これは(ロシアに狙われるなど)危ない。NATOというチームならいいかな…と。ただ、結果的には(実際の警護を)どうやって、誰に依頼し、どこに委ねたのか?はっきりしていないんです。『ウクライナ政府に頼みました』とは言っていますが、実際にどう動いたかは分かりません」
【ジャーナリスト・鈴木哲夫さん】
「そういう意味では、日本も“首相が戦地に行く” という異例のことが今回起きたわけですから、今回が前例となって、これからもあるかもしれない…『警護をどうするのか?』ということでは、自衛隊が行くなら自衛隊法も含めてしっかり議論しなければいけない」と話しました。
この「警護」の問題に関し、22日、浜田防衛大臣は今回の訪問には「防衛省・自衛隊として関与していない」と明かしました。また、松野官房長官は23日、一般論として、要人の警護はウクライナ当局がするものとの考えを示した上で、訪問前にウクライナ政府と慎重に調整を重ねたと述べました。しかし、岸田首相の動向が事前に察知されていたことなどから、24日の国会でも野党議員から「政府は情報管理を徹底したと胸を張りますが、本当に大丈夫だったのか?」などの質問もありました。
岸田首相自身は23日の参議院予算委員会で、「要人を含め外国人の安全確保は一義的には、領域国の警察当局等の機関が行う。自衛隊をわが国の要人の警護のみを目的に海外に派遣する明示的な規定はない」と答弁し、24日の衆議院本会議では「安全対策や危機管理対策、情報管理について万全を期しており、今回、特段の問題があったとは考えておりません」と答弁しています。
■鈴木氏「トップ警備を他国任せにするのはあり得ない…次に備えよ」
【ジャーナリスト・鈴木哲夫さん】
「やはり日本のトップの警護を他国に『お願いします』といって他国任せにするのはあり得ない。岸田首相は『万全を期した』と話しましたが、それではダメ。具体的に何をやったのか?で、日本はこれから(警護について)何をどう(法)整備していくのか?警察が守るという方法もあるかもしれない。そういった議論をしていかなければ絶対にダメですね」
また関西テレビの神崎博デスクは…
【関西テレビ・神崎博デスク】
「自衛隊を派遣して、海外で要人警護に当たらせるのは、法律的には結構ハードルが高い。例えば、アメリカの大統領の場合は世界各国に行く際、大統領の周りにはシークレットサービスという警護の専門の職員がいます。日本に来た場合でも、特別な許可を得て銃を携帯して守っている。日本のSP(警視庁の要人警護任務に専従する警察官)が海外に行っても武器を携行して首相を守れるような形が、各国との交渉や法整備の上で、できるようになる手もあるのではないかと思います」
【ジャーナリスト・鈴木哲夫さん】
「そういった議論を、“(ウクライナに)行って良かった…終わりました”でなくて、しなくちゃダメなんです。次に備えなくてはいけません」
(関西テレビ「報道ランナー」2023年3月24日放送)