戦後最悪と言われた、日本と韓国の関係が大きく改善するかもしれません。16日、韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が、就任後初めて来日し、日韓首脳会談が始まりました。午後5時15分、岸田首相と尹大統領が並んで首相官邸の会談の場に入りました。お互いに笑みをたたえているようにも見えました。日韓の首脳が、首脳会談のためだけに相手国を訪問したのは12年ぶりです。
日韓首脳会談、どこに注目すべきなのか、何が出れば“成功”といえるのか、関西テレビ・神崎報道デスクが解説します。
■「共同会見」行うが、「共同宣言」なし
まず今回の会談のスケジュールです。16日午後5時15分から首脳会談が行われ、 その後「共同会見」が行われます。「共同宣言」の取りまとめはしないということです。
【神崎報道デスク】
「今回、首脳会談が急きょセッティングされ、準備期間があまりなかった。韓国側の言い分ではありますが、両国ですり合わせる時間がなかったので、『共同宣言』は出せなかったと、報道されています」
■夕食会 異例の2次会で尹大統領好物の「オムライス」
「共同会見」の後、夕食会がありますが、異例なのは2次会があることです。
・1軒目 すき焼き店
・2軒目 洋食「煉瓦亭」で、オムライスを食べるそうです。尹大統領が好物だそうです。
【神崎報道デスク】
「実は、麻生元首相が韓国を訪問して、尹大統領に会ったときに、『日本で食べたオムライスがすごく好き』という話を聞きつけました。そこで尹大統領が日本に来た際には、是非ごちそうしようと考えたみたいで、今回のスケジュールに盛り込んだという話です」
「煉瓦亭」は東京・銀座の洋食店で、オムライスは2600円ほどするということです。歓待する雰囲気が感じられ、親睦を深める時間を十分に取る、今回の首脳会談となっています。
■韓国の“お土産”に日本が何を“お返し”するのか
ここから本題ですが、お互いのどんな言動が注目すべきポイントとなるのでしょうか。「韓国の“お土産”に、日本が何を“お返し”するのか」という見方ができます。韓国側、尹大統領は徴用工問題の解決策を持ってきました。 徴用工問題の解決策というのは、日本企業がお金を出さずに、韓国政府の傘下にある支援財団が、韓国企業からの寄付などを原資として、元徴用工らへの賠償を行うというものです。納得していない原告の方もいますが、法的には韓国国内で解決した扱いになり、韓国政府としてはがんばって作ったスキームだといえます。
日本からの“お返し”として注目されているのは
・反省とおわび
・輸出規制解除
の2点です。
まず「反省とおわび」を改めて示すのかどうかです。もう一度改めて述べるというよりは、過去に「反省とおわび」を盛り込んだ取り決めを、踏襲するという形になるのではないかとみられます。
もうひとつ、輸出管理規制を解除するのかどうかです。「ホワイト国を外す」という言葉を過去に耳にした方もいると思いますが、輸出管理上の「グループA(旧ホワイト国)」の対象から除外し、輸出管理を強化していました。半導体材料の材料を輸出する際、個別にチェックするというやり方にしたので、事実上輸出がほぼ止まった状態になっています。
これについて最新情報で、日本政府は「韓国に対する半導体材料などの輸出管理を厳格化する処置を解除する」と発表がありました。韓国側はWTOに申し立てをしていましたが、これを取り下げるということです。「ホワイト国外し」は続けるようですが、半導体材料3品目の輸出管理強化はやめることになります。
【神崎報道デスク】
「政権幹部に直接取材しました。『徴用工問題は解決に向かっていますが、輸出規制は解除するのですか?』と質問すると、外交担当の政権幹部は、ほほ笑みながらというか、ニヤリという感じで『別問題です』と答えました。『別問題です』というのは、そもそも徴用工問題があったから輸出規制をしたわけではない、というのが日本政府の建前なんです。報復処置ではないと言ってきました。ですので今回徴用工問題が解決したからといって、『直接リンクして輸出規制を解除するわけではないよ』というわけです。そう言いながら、ほほ笑んでいましたので、『良い方向に動くはずです。経済産業省の所管の話なので、外交担当の私の口からは言えないですけどね』というニュアンスが読み取れました」
全ての輸出規制を解除するわけでなく、厳格な管理をするグループに韓国を含めることは続けるのですが、半導体材料の輸出については緩めるということです。
【神崎報道デスク】
「半導体材料は韓国で国産化が進んでいまして、輸出規制にどこまで効果があるのかという議論もそもそもありました」
■安全保障面 韓国側からの歩み寄り期待される
そしてもう一つ、韓国側から安全保障面で歩み寄りがあるのではないかという話があります。具体的には「GSOMIA」の復活です。
北朝鮮がミサイルを発射している中で、ミサイルの情報は日韓で直接やり取りしているのではなく、アメリカを経由してやり取りする状況になっています。韓国が北朝鮮のミサイル発射を発表しているのに、日本は把握できていないということが最近もありました。日韓で軍事情報を直接やり取りする「GSOMIA」という枠組みに戻るのではないかという話があります。
岸田首相も「日米韓の安全保障における連携強化」と発言していて、北朝鮮の威嚇行動は、日韓が連携を強化するきっかけとなっている印象もあります。
今回の日韓首脳会談、今後の日韓関係にどんな影響をもたらすのか、大いに注目されます。
(関西テレビ「報道ランナー」2023年3月15日放送)