日本初の「どうぶつ弁護団」 ネコなどを“虐待”から守れ! “神戸連続児童殺傷”など残忍な事件…ネコの傷付け事件が“前兆” 弁護士と獣医師がタッグ 容疑者不明でも『刑事告発』 2023年03月16日
警察庁による動物虐待の検挙数は毎年増え続けています。2021年には過去最多の170件となりました。
この状況の中、兵庫の弁護士や獣医師が始めたのが「どうぶつ弁護団」です。全国で初めての取り組みを取材しました。
■国内初 動物を虐待から守るため…兵庫県で発足「どうぶつ弁護団」
ちょっぴりイカツイ顔がかわいらしい、猫のまるちゃん。年齢は8歳くらいの高齢猫です。
実は2021年に針金で下半身を縛りつけられる虐待に遭い、動物病院で治療を受けていました。
これを聞きつけ動き出したのが、2022年、兵庫県で発足した「どうぶつ弁護団」です。
【どうぶつ弁護団 勝又陽香弁護士】
「針金が病院にあるみたいな話があったと思うんですけど、それって証拠として出す必要はないのですか?」
【どうぶつ弁護団 立花隆介弁護士】
「病院にて適切に保管されているという情報を提供しておく、ぐらいでいいかなと思います」
法律で告発する弁護士と動物を診察する獣医師がタッグを組み、動物の虐待事案を独自で調査、報酬なしで、刑事告発をする、全国初の団体です。
警察庁によると、2021年の動物虐待の検挙数は、過去最多。「声なき動物を護りたい」という思いから立ち上がりました。
■針金で下半身縛られ…まるちゃんに今も残る“後遺症”
まるちゃんが見つかった淀川の河川敷は、普段から多くの猫の憩いの場となっています。
【ボランティア 荒井かおりさん】
「ここの子は、たくさん餌やりさんが来ているから、人を割と信頼している。だからいたずらもされるんですけどね」
まるちゃんはこの場所で、下半身を硬い針金できつく縛られ、更に、逃げられないよう、木にくくりつけられていたのです。
【ボランティア 荒井さん】
「(2021年の)年末に、早朝に餌をあげている男性の方が見つけて、お正月になってまだ鳴いているから見たら、くくられていて、動けない状態でつながれて。怖い目に遭っている子なので、捕獲器も近寄ってくれなくて。まるちゃんの痛みを思うとつらい…つらかったです」
ボランティアとの協力で保護したまるちゃんを大阪・池田市の動物病院に運びました。治療を担当したのは、獣医師の水野先生でした。
【のらねこさんの手術室 水野直子獣医師】
「ここがワイヤーが巻かれていたところで。何度も手術しているのですけど、今は、傷自体はふさがっている状態ですけど、かなりウエストが細い状態です。これはひどいことになっていると思いました。時間が結構経過をしていたので、どんどんどんどんワイヤーが体に食い込んでいって、肉も切れて、その状態で治ろうとして、肉が取り巻いている形でした」
傷を診るなり、何者かによる虐待であると確信しました。
【のらねこさんの手術室 水野獣医師】
「何かの拍子に傷が感染を起こして、菌が体に回る危険もあったと思いますし。とにかく保護されて治療できたのは良かったと思う」
まるちゃんは今も軟らかい食べ物しか食べられず、後遺症が残ります。
■弁護士と獣医師がタッグ 動物への虐待「取り組み」
「どうぶつ弁護団」の発案者の細川弁護士は、相続や離婚問題に加えて、20年前から動物の虐待事案を扱ってきました。
【どうぶつ弁護団 発案者 細川敦史弁護士】
「尼崎の猫が踏まれてというのが最初の事件だったんですけど、外にいる猫が警備員のおじちゃんに踏まれて、踏み殺されたんですけど、それを犬の散歩をしていたおばちゃんが目撃していてという話で。目撃者の代理人として告発をして、それで最後罰金になっていました。それが最初」
神戸市獣医師会の会長、中島先生も弁護団の一員です。
【どうぶつ弁護団 中島克元獣医師】
「われわれ獣医でね、虐待と思われるものはあるからね、診療の中で。ふざけたやつやなと思っていたけど、なかなか訴えるとなると根性がいるので。今までは、所有者も(虐待を)やった人も不明で、どうやって告発するねんという感じだったけど、中島弁護士みたいな集団が出てきて、警察の雰囲気が変わって(告発状を)受理すると、世の中が変わってきたので、いたずらしていたやつについては、気楽な罪のつもりでやられたらえらいことなるぞ」
なぜ、動物虐待事案に力を入れるのか…それは過去に起きた残忍な事件が背景にありました。
■“動物虐待”その先に…残忍な事件に発展の“恐れ”
1997年、当時14歳の少年が小学生5人を殺傷して逮捕された神戸連続児童殺傷事件。
3月1日に17歳の高校生が埼玉県の中学校に侵入し、教員を切りつけ逮捕された事件。
どちらも、警察に対し、猫を傷つけ放置したと話していました。
まるちゃんの事件も同じように発展しないよう取り組むことが大切だと考えています。
【どうぶつ弁護団 中島獣医師】
「こういったものにふたをしてしまうわけにはいかないよね、われわれが持っている職務を生かして、犯罪は犯罪でね、厳しく罰して。動物も動物でいい迷惑だけど、そこで止まっている段階で、何とかそれ以上に発展しないようにというのが願いなんです」
【どうぶつ弁護団 発案者 細川弁護士】
「『罠を仕掛けた時点で虐待です』という持っていき方で今回しているんですけども。殺傷罪です、わざと傷つけたという、傷つけようと思って傷つけたという理屈・犯罪でいこうと」
3月9日、「どうぶつ弁護団」の姿は、大阪府東淀川警察署にありました。動物愛護法違反の罪で、容疑者不明のまま、刑事告発したのです。
【どうぶつ弁護団 発案者 細川弁護士】
「難しい事案だと思います。被疑者がよく分からないとか、時間が経っているとか、あえてこういうものを取り上げることは、かなり意味がある。猫一匹がケガしただけじゃないかと言うふうに思われるかもしれないけど、それを弁護士や獣医師が真面目に議論して、一つの告発という形で警察に持っていって受理するのは、大事なことかと思っています」
まるちゃんは、必要だった手術をすべて終えました。後遺症はありますが、おやつをもらって元気な様子です。
現在、家族の一員として迎え入れてくれる里親を探しています。
全国初の動物を守る弁護団。虐待を早期に見つけ、被害を少しでも減らし、人と動物にやさしい社会を目指します。
(2023年3月14日放送)