なくなると思うと乗りたくなります。
大阪に乗り入れているJR東海の特急「ひだ」が、3月のダイヤ改正でディーゼル車からハイブリッド車に替わり、同じ気動車の「南紀」も7月からハイブリッド車に置き替わることが決まりました。
この流れは予想されていたので、ディーゼル車のキハ85系が無くなる前に「南紀」に乗ってきました。
ディーゼル車をみると今もワクワクします。
私は京都府のJR山陰線沿線で育ちました。
子供の頃、山陰線はまだ電化されておらず、物心ついた頃には普通はDD51などのディーゼル機関車が旧式の客車を引いていて、急行や特急はディーゼルの気動車がうなりをあげながら走っていました。
地元では「電車」と呼べないので「汽車」と呼ばれていました。
そういう縁もあり、いまだにディーゼル車をみると懐かしさがこみ上げてきます。
大阪駅でも、山陰へ向かう「はまかぜ」や「スーパーはくと」などを駅で見かけると思わず足を止めてしまします。
朝イチの特急「くろしお」で新大阪から紀伊勝浦へ向かいました。
私のお気に入りは、新大阪から大阪環状線に乗り入れるときに通る貨物線です。
通勤時にいつも見ている大阪駅と梅田の名所スカイビルの間を通り、ビルの陰から大阪駅の大屋根が徐々に見えてくる景色が大好きでした。
ただ、2月にこの線路が地下へと付け替えられ、この景色も見られなくなってしまいました。
ラッキーなことに、途中古座駅で「銀河」とすれ違いました。
インターネット予約ができるようになったので、近いうちに「銀河」にも乗ってみたいです。
4時間余り「くろしお」に揺られ、おしりがさらに割れそうになりながら、昼前に紀伊勝浦駅に到着。
キハ85系の特徴は非貫通型の先頭車両が前面展望になっていて、運転手さんと同じ目線で旅を楽しむことができます。
名古屋行きは先頭車両が自由席になっているので、最前列を確保するために早めに並んで入線を待ちました。
南紀には昔のL特急のような図柄入りのヘッドマークが付いていて、青い海と白波、中央には那智の滝がデザインされていて、こうしたところにも私のような古い鉄道ファンを引き付ける魅力があります。
海外製のディーゼルエンジンが、独特の「ガー」という音をたてながら紀伊勝浦駅を出発。
自慢のエンジンは回転数を上げると車体が小さくブルブルと震え、大きなエンジン音と共に「ディーゼル車に乗っている」ことが実感できます。
キハ85系は座席がひな壇のように一段高く、窓も大きく車窓が楽しめるようになっていて、以前は「ワイドビュー」という呼び名が付いていました。
シートは座面、背もたれともに肉厚で、座り心地はフカフカ、私の好みです。
新宮を出たあたりから海岸沿いを走行し、砂利の浜が続く景色も見どころです。
時折、キハ25系の普通車やキハ75系の快速「みえ」などとすれ違います。
途中から三重県内で幅を利かせている近鉄と並走する区間が多くあり、近鉄は複線電化、こちらは単線非電化で、並走すると悲哀を感じます。
ディーゼルの心地よい音と振動に包まれながら3時間半の旅を終え、名古屋に到着。
遅めの昼食を名古屋名物「あんかけスパ」で済ませ、大阪へと戻りました。
環境負荷の大きいディーゼル車を高性能のハイブリッド車に置き換えることで二酸化炭素の排出量は約3割カットされます。
国鉄が分割民営化した後に運用開始され、車両としては比較的新しく、まだ現役バリバリで働ける気動車が引退するのはもったいないような気がします。
四国や九州などでは国鉄時代の気動車特急がまだ走っているので、JR東海の財政的な余裕も感じてしまいます。まあ、昨今の脱炭素の流れから早めの引退はやむを得ないのでしょうが、鉄道ファンとしては少し寂しく、ディーゼルエンジンの煙で黒くすすけた「南紀」の屋根をしみじみと見つめてしまいました。
この音も
揺れも煙も
あとわずか
【乗り鉄デスクのノリノリ日記】# 3
(関西テレビ報道局・解説デスク 神崎博)
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