多くの若者集まる「グリ下」に防犯カメラを設置 未成年の飲酒や性犯罪…OD(オーバードーズ)など問題多発で…若者の“居場所”はどうなる 「見守る」大人プロジェクトの弁護士が解説 2023年03月02日
大阪・ミナミの通称「グリ下」。特にコロナ禍の頃から、様々な悩みを抱えた若者たちが多く集まるようになりました。そうした中、未成年の飲酒や「パパ活」などをきっかけとした性犯罪、さらにOD(オーバードーズ*薬物の過剰摂取)などトラブルが後を絶たないことを受け、3月2日、防犯カメラが設置されました。「グリ下」という“居場所”を“見守る”ことに大人も若者もそれぞれの思いを抱えています。
今回の防犯カメラの設置で「グリ下」は、若者の居場所は、どうなっていくのでしょうか?「グリ下」の若者と交流し、支援を続けている田村健一弁護士にお話を聞きます。
そもそも「グリ下」というのはどのような場所なのか…実は、そんなに昔から若者が集まる場所ではありませんでした。今回の“コロナ禍”で休業が相次いだミナミ、その繁華街の隙間となった「グリ下」に若者が集まって、さらにSNSで話題となったことで、若者の居場所として定着しました。
Q)「グリ下」はコロナ禍で生まれた“新しい居場所”なんですよね?
【「グリ下」の若者を支援する 田村健一弁護士】
「はい、コロナ禍で観光客の出入りがなくなった後、に多くの若者が集まってきました。(何らかバックグラウンドに)問題のある若者が多い傾向にあります。昔(2年ほど前)と今の大きい変化で言うと、昔は家にも学校にも居場所がない子たちが多かったんですが、今は「グリ下」が(あこがれの場所として)観光地化しています。こないだも小学4年の子が来ていたりしました」
田村弁護士によると、昔は外向的で活発ないわゆる『ヤンキー系』が多かったんですが、今「グリ下」に集まる若者の特徴としては…
≪今、「グリ下」に集まる若者の特徴≫
・内向的で本音をなかなか話さない『地雷系』が多い
ということです。
【「グリ下」の若者を支援する 田村健一弁護士】
「昔はちゃんと向き合って話せば、“響く”タイプ…感情を表に出してくる人が多かったですが、今はなかなか(向き合って話しても)シャッターを閉じてしまって話にならないタイプの子が多いです」
そうした現状の中で、田村弁護士は『継続的なコミュニケーションが必須』だと話します。
【「グリ下」の若者を支援する 田村健一弁護士】
「今は(子どもたちに)合わせて、“周波数”を変えてちょっとずつコミュニケーションを取るようにしています。長い時間かけてゆっくり信頼関係を作っていく…(その点は)昔も今も変わりませんが、特に注意しています」
では、防犯カメラが今回設置されて、今後、どのように作用するのでしょうか?田村弁護士はメリットもデメリットの両面があると見ています。 「グリ下」に防犯カメラ設置で…
<メリット>
・窃盗や性被害の抑止につながる
<デメリット>
・居心地が悪くなる
・(居場所が)分散してしまう
・実態が見えづらくなる恐れ
【「グリ下」の若者を支援する 田村健一弁護士】
「今は寒いのであの場所で寝ている子はいませんが、春先などは寝ている子もいる。そこで『財布が盗まれた』とか『お金が盗まれた』とかは本当によく聞くことだったんで、その点では防犯カメラの設置はメリットだと思います。もう一点、“パパ活”が問題になっていますが、おじさんが声をかけることや盗撮のトラブルも減ったり、なくなっていくと思います」
Q)若者たちは防犯カメラ設置で犯罪が減るは警察の建前であって、本当は自分たちを摘発のためなんじゃないかという声もありますが?
【「グリ下」の若者を支援する 田村健一弁護士】
「防犯カメラ設置のセレモニーの時に、担当の警察官と話をしましたが、目指している方向は(若者支援をしている私たちと)同じだと感じました」
ただ、防犯カメラの運用次第では…デメリットになると田村弁護士は話します。
【「グリ下」の若者を支援する 田村健一弁護士】
「「グリ下」は緊急の避難場所でもあるんですね。それが(もし)監視されて一斉摘発とかされたら、ますます散り散りになってしまいますんで、もっと闇や“沼”に入り込んでしまいます。今、せっかく(われわれのように支援する)ミナミの大人がタッグを組んで、何かしら1人1人居場所を見つけていこうとしているのに、届かなくなります。そこが(危惧する)最大のデメリットになります」
警察は若者や子どもたちを犯罪やトラブルから守るために防犯カメラを設置したとしています。
では、今、「グリ下」に必要な支援とは何でしょうか?現在、田村弁護士はじめミナミの大人たち、事業者の皆さんが集まっていて今、さまざまな支援をしています。「グリ下」の若者たちに住まいや仕事を紹介・提供、そして生きがい、さらに相談できる大人がいるんだということを感じてもらおうと『ひとりぼっちにさせへんプロジェクト』が始まっているそうです。
【「グリ下」の若者を支援する 田村健一弁護士】
「(このプロジェクトは)2年前の9月から始めたもので、最初は1人でしたが、様々なミナミの心ある経営者の方、大人の方、商店街の方たちの協力で、住まいや仕事など選択肢が広がっている状況です」
関西テレビの神崎博デスクはこうした取り組みについて、「今まで(「グリ下」の若者の多くは)どうしても(親も含めて)悪い大人にばかり接してきて『大人が信用できない』というのが根底にあると思うんですが、いい大人もいることが分かってくれば、気持ちなども変わってくると思います」話しました。
(関西テレビ「報道ランナー」2023年3月2日放送)