【専門家解説】「もはや実験ではない」北朝鮮ミサイル発射 日本にも迫るリアルな危機 ミサイル発射を支える裏には「天才ハッカー集団」が 2023年02月20日
北朝鮮は20日朝、弾道ミサイルを2発発射しました。
一方、先週行ったとするICBM(=大陸間弾道ミサイル)級「火星15」型の発射訓練の映像も公開しています。
相次ぐ北朝鮮のミサイル発射について、北朝鮮情勢に詳しい龍谷大学の李相哲教授に話を聞きました。
■ミサイル発射「もはや実験ではない」
金総書記は、7日「戦争準備」を完備する方針を示し、18日午前8時、発射訓練を命令しました。
そして18日の午後5時22分にミサイルが発射されました。
李教授は「『戦争準備態勢』を完備するように言ったこと」がポイントだと指摘します。
【龍谷大学・李相哲教授】
「これは、いつでも戦えるような体制を整えろという命令です。そこで本当に準備態勢が完全なのかを確認して、18日に訓練を想定してやってみせたということです。さらに今回は異例にも、一連の発射過程を見せました。北朝鮮は恐らく「火星15」型について自信があるんだと思います。そしていつでも打てるということを証明して見せたのだと考えます。アメリカに届く『火星17』型だけでも11基見せています」
■日本への影響は?
20日、金総書記の妹・金与正氏が「太平洋を射撃場として活用する」と発言しました。
今回のICBMの発射は、日本海に落ちるような垂直に近い角度のロフテッド軌道で発射されてきました。
しかし「太平洋を射撃場として活用する」ということは、同じミサイルを水平に近い軌道で日本の上空を通る形で発射させることが増えるのではないかと李教授は考えます。
【龍谷大学・李相哲教授】
「これまでは弾頭部分が大気圏に再突入する際、バラバラになって熱に耐えられないのではないかと思われてきました。しかし今回は、北海道の函館の映像では火の塊で落ちているので恐らく成功している可能性が高いです。今まで北朝鮮は太平洋までは打っていませんでした。通常、打ち上げの角度が違うと、大気圏に戻る時に跳ねられてしまうことがありました。角度も正確じゃないとダメなんです。それを証明するためには太平洋まで届かせないといけないんです」
–Q:水平に打つ技術についてはまだ実験が必要だということでしょうか?
【龍谷大学・李相哲教授】
「北朝鮮が太平洋を射撃場にするというためには、そういう意味も含まれているのではないかと考えています」
–Q:そのような実験をするときはほぼ確実に日本を超えることになりますね?
【神崎デスク】
「北朝鮮のミサイルは日本を通常軌道で飛び超える時に下の部分を切り離します。『火星15』は液体燃料を使っていて、その液体燃料はヒドラジンという有害な物質を含んでいます。皮膚に触れると皮膚が腐食したり、小動物だと一定量体内に入れると死んでしまったり、発がん性があるとも言われています。上空から有害な液体燃料が降ってきたり、有害な物質が詰まったミサイルの切り離し部分が落ちてくるリスクがあります」
「ロケットの打ち上げなどは、事前に落下する部分についてどこの海域で落ちるかなどを事前に言うことがありますが、北朝鮮はもちろん事前に通告することはありません」
■ミサイル発射の資金 裏には”ハッカー集団”?
北朝鮮は、飢餓なども指摘されたり、貧しい状況だと言われたりする中、なぜ度々発射できるのか?
その裏には、ハッカー集団「ラザルス」の存在が指摘されています。
韓国の「朝鮮日報」は、去年世界で発生した仮想通貨が奪われる事件の約6割が、北朝鮮のハッカーの仕業ではないかと報じています。
全世界ではおよそ1470億円以上もの被害があるといわれています。
北朝鮮の国の中に、公式に、この組織があると日本の警察庁なども指摘しています。
北朝鮮の優秀な子供たちを教育していて、ロシアや中国で暗躍させていて、世界3位のハッカーの実力があるといわれています。
【龍谷大学・李相哲教授】
「北朝鮮では、中学生くらいから優秀な子どもたちを募集して、ピョンヤンで教育を受けさせています。ハッキング部隊は6000人規模といわれています。その中で各国からお金を盗む部隊が『ラザルス』という偵察当局に属しています」
「彼らは北朝鮮ではなく、中国やロシアなどインターネットに自由に接続できる場所で活動しています。お金を盗んでは中国やロシアでお金をプールして、そこから部品などを調達して、ミサイルに必要なものを集めています」
(2023年2月20日 関西テレビ「報道ランナー」放送)