1月の大雪でJR京都線などで列車が立ち往生し、京都市だけで5000人以上の帰宅困難者が出た問題。JR西日本は17日午後、国土交通省の近畿運輸局に報告書を提出し、記者会見を開いて説明を行ないました。課題はどこにあるのでしょうか?
JR西日本は午後3時ごろ、雪で立ち往生した問題の検証結果や、再発防止策をまとめた報告書を、国土交通省・近畿運輸局に提出しました。そして、記者会見で報告書の中身についての説明を行いました。
JR西日本は立ち往生の原因について、線路の雪を溶かす「融雪器」の設置基準が、「積雪10センチ」と積雪を目安にしており、気温を主体としたものではなかったこと、そもそも、体制の整備や運行計画の判断を気象予測のみに依存していたことなどを挙げました。
【JR西日本 中村圭二郎副社長】
「当社の対応に数多くの不手際がありました。このため、数多くのお客様に多大なご迷惑をおかけし、また、心身にわたるご負担をおかけしましたこと、この場をお借りして、改めてお詫びを申し上げます。誠にに申し訳ございませんでした」
【JR山科駅 24日夜*視聴者撮影】
「電車が遅れたことお詫び申し上げます」
1月24日夜、大雪の影響で線路の向きを切り替える「ポイント」21カ所が凍りついて動かなくなり、京都線や琵琶湖線では15本の列車が立ち往生しました。
JR山科駅付近では乗客が線路に降ろされ、最寄りの駅まで歩き続ける事態に…深夜にタクシーが来ることはなく駅前は帰宅困難者であふれ、寒さのため体調を崩す人が続出しました。
【4時間閉じ込められた人】
「座り込んでいる人とかもいて、過呼吸になっている人もいたらしくて。ずっとお腹が空いててやっと出れるなって感じしかなかった」
【3時間半閉じ込められた人】
「ここまで降られると、さすがに雪の怖さを思い知ったというか」
【京都市・中谷芳行危機管理課長】
「私鉄の情報とか確認してもらって書いてもらっていい?」
夜通しで対応に追われていた京都市の職員たち。
5000人以上が帰宅困難者となり、午後7時ごろ、SNSなどで事態を把握した京都市は、JR山科駅近くの施設や地下通路を開放し、物資を提供しました。しかし、当初、JRから情報共有などの連絡はなく、こうした対応ができたのは7時間後の深夜2時ごろとなったのです。
【京都市・中谷芳行危機管理課長】
「大雪になるのは前々から分かっていたので、JRさんと市の中でもしっかり対応を議論しといた方がよかったと思う」
想定外の帰宅困難者の事態、自治体もその対応に苦慮しました。
関西テレビが帰宅困難者が発生した11の自治体に取材すると、このうち全てが「早期にJRから帰宅困難者の情報がなかった」と回答。そのうち8つの自治体がJRから要請がなかったため、避難施設を開設しませんでした。
JR西日本に今回の対応についてたずねると…
【JR西日本担当者】
「帰宅困難者が発生した場合、特に基準というものはありませんが、状況に応じて支社や駅などから自治体に協力を要請します」
その上で、自治体に支援要請できなかった原因について、「支援を要請する余裕がなかった」と公表しました。
また、自治体からは今回の事例を「災害」としてとらえるのが難しかったとする声も…
【京都・向日市】
「帰宅困難者が災害によって発生したのか、JR側のトラブルによって発生したのか、判断が難しかった」
【滋賀・草津市】
「災害としてとらえて行動することができず、どこまで主体的に動いたらいいか分からなかった」
そんな中、市長自らが先頭にたって対応にあたった自治体もありました。滋賀県守山市の宮本和宏市長は、住民からの通報で駅前におよそ40人の帰宅困難者がいることを把握し、避難施設を開設する指示を出しました。
【守山市・宮本市長】
「やっぱり危機管理というのは応用力が問われるのかなと思いますので、自分の情報収集とネットワークでやれることをやる必要がある」
さらに、宮本市長は駅前の居酒屋に協力を依頼。だし巻きたまごやおにぎりなど温かい食事を40人分用意しました。
【守山市・宮本市長】
「思いをはせていだたいて本当に感謝です」
【魚丸・守山店 深尾知弘店長】
「市長の熱い思いに何か役に立てれば僕はうれしかったし、そういう状況であればできること何かないかなって、ちょっと、だしまきしか思いつかなくて申し訳なかったですけど」
一方で、自主的に帰宅困難者を助けようとした人もいました。
【ツイッターより】
『京都 二条駅で帰宅難民の方いらっしゃいますか?何もない場所ですが、寒さしのぎ電車が動くまでの待ち時間にご利用ください』
投稿はすぐに拡散され、リツイートは1000件近くに。この投稿をしたのが、京都市でカフェを営む福永象啓さんと妻の真弓さんです。
当時、建物の2階にあるカフェと1階に併設する書道教室を無償で開放しました。ツイートを見て店を訪ねてきた人たちに温かい食事と飲み物、カイロを提供したのです。
【CAFE&GALLERY WAKU 福永象啓さん と 真弓さん】
「寒いところから扉開けた瞬間、ほっとした顔をみんなしていたので、店を開けれて良かったなとその表情を見て思いました」
「私たちの世話焼き、おせっかいかもしれないけど、民間としてできることはこういうことがあるんだなと…協力し合う地域、市が増えていけば、そういう活動がどんどん広がっていくんじゃないかと思う」
想定外の”列車の立ち往生”今回の事例をどう捉えるのか、今後、議論が必要です。
(関西テレビ「報道ランナー」2023年2月17日放送)