『ディーゼルだけど電車』。そんな変わった車両がまもなく大阪に登場します。
列車の動力と言えば、古くは蒸気機関車、石炭を燃やして水を沸騰させ、その蒸気で車輪を動かしてきました。
その後、主に都市部では電気でモーターをまわして走る電車に。
一方、蒸気から電気への過渡期や地方の路線ではディーゼル車が主力となっています。
ディーゼル車は軽油を燃焼して動力に変えるエンジンを搭載、今でも電化されていない路線で活躍しています。
ディーゼルエンジンで発電機をまわし、その電力でモーターを駆動させて走る「ハイブリッド」方式の電車をJR東海が新たに開発しました。日産のノートなどに搭載されている「e-POWER」と同じような仕組みです。
環境にも優しく、従来のディーゼル車と比べて二酸化炭素の排出量はおよそ30%カットされるそうです。
2022年、名古屋から岐阜の高山方面へ向かう特急「ひだ」にそのハイブリッド方式の電車が投入されました。
この「ひだ」には1日に1往復だけ大阪発着があり、我々が「大阪ひだ」と呼んでいる列車が、2023年3月からハイブリッド方式の新車に変わることになりました。
その3月のダイヤ改正を前に一足先にそのハイブリッド車の乗り心地を確かめるべく、高山まで行ってきました。
新型車両はHC85系で、HCは「ハイブリッド・カー」の略だそうです。
ボディの横には「ハイブリッド」のロゴマークがあしらわれていて、ボディは銀色、正面は白でJR東海のシンボルカラーのオレンジのラインが側面上部に描かれています。
これまで使われてきたディーゼルの85系気動車は、加速する時に「ガー」というディーゼル特有の音と、その際に車体がブルブルと小さく揺れる振動が伝わってきて、「軽油で走ってるな~」と実感できたのですが、このハイブリッド車は加速時もスムーズでまさに電気自動車、なめらかな加速を味わえます。
ディーゼルエンジンも静かで振動もそれほど大きくなく、「これ電車?」と思うほどでした。
車内にはエンジンでモーターを動かしているのか、バッテリーで動かしているのかが一目でわかる表示があり、「これぞハイブリッド」という感じがします。
内装はシートの柄やデッキの展示品にも和のテイストで溢れ、小さなことですが、トイレの手すりなどには木材が使われています。
シートもリクライニングすると座面が傾き、お尻の下が沈み込み太もものあたりが上がるのでゆったりと座れます。
岐阜から下呂温泉までは川沿いの渓谷を走り、清流の景色を堪能することができます。
下呂を越えて高山に近づくにつれ、一面銀世界になり、冬の飛騨路を満喫できました。
せっかく高山まで来たので、白川郷まで足を延ばしました。
バスに乗り1時間ほどで白川郷に到着。この日は小雨でかやぶき屋根の雪は少し解けていましたが、冬の白川郷の寒さと景色を堪能しました。
高山駅に戻ってくると、この路線からの引退が迫っているディーゼル車のキハ85がエンジンを轟かせながら待機していました。
高山駅は高架で駅舎がホーム上の屋根のようになっているので、エンジンの排気がこもり辺りが白く煙っていて、独特の排気ガスのにおいが漂っていました。
以前なら「煙たいな~」と眉をひそめるところでしたが、この煙も匂いも引退したらなくなるのかと思うと、ちょっぴり愛おしいとさえ感じられました。
「ディーゼルと 呼ぶか迷うよ ハイブリッド」
【乗り鉄デスクのノリノリ日記】# 2
(関西テレビ報道局・解説デスク 神崎博)
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