人工知能がまるで人間のように質問に答えてくれる「チャットGPT」という技術が注目されています。「インターネットの登場以来のインパクトだ」と話す専門家もいるほどです。その性能はどれほどのものなんでしょうか?
「チャットGPT」知っていますか?
【大学生】「知らない。え~!すごい」
【大学生】「すごいですね。大学のレポートで使えたらいいな」
【大学生】「バリ(とても)頭いいやん」
■質問をすると…AIがまるで「会話」するように答えてくれる“驚きの技術”
皆さんが驚きを隠せないこの最新技術は、質問を打ち込むと人工知能=AIが、まるで会話をするように答えてくれるというもの。アメリカの実業家イーロン・マスクらが設立した企業が開発し、2022年11月の公開からわずか2カ月で利用者が1億人に達したほど、いま世界で注目されるサービスなんです。
【東京大学大学院 松尾豊教授】
「AIが言葉を扱えるようになった。インターネットが出てきて、大きく我々の生活が変わったわけですが、それと同じかそれ以上の変化をもたらす可能性があると思います」
■報道ランナー・薄田キャスター 「チャットGPT」を実際に体験
一体どれほどすごいのか。薄田ジュリアキャスターが使ってみました。
【薄田キャスター】
「犬を飼っているんですけれど、遊んでいるときに飛びついて、手をかんでくるときがあって、どうすれば直るのかなって」
愛犬の「無垢(むく)」にかまれないための方法を質問してみます。「どうすれば…」と打ち込んで約20秒後、
【薄田キャスター】
「え~すごい。本当にチャットしているみたいに、1文字1文字打っている感じで、回答が出てきました。すごい。プロにも指摘されることが書いてありますね」
【チャットGPTの『回答』】
「十分に運動することでストレスを解消して、かみ癖を改善することができる」
【薄田キャスター】
「やっぱりね、お留守番の時間が長いからね。運動が足りてないんですよ。やっぱりそれが原因か」
薄田キャスター、ここぞとばかりにお悩み相談です。
【薄田キャスター】
「『お留守番が長いとやっぱりだめですかね…』すごい話口調。理解してくれるかな?」
問題ありません。これまでの会話の文脈から質問の意図をくみ取ります。
【チャットGPT】
「ペットシッターやドッグウォーカーを利用する」
【薄田キャスター】
「もう1個質問していいですか? 『ペットシッターはお金がかかるので、なかなか頼めないんです』。それはあなたの都合ですって返ってきたりして」
【チャットGPT】
「オンラインペットシッターを利用する」
【薄田キャスター】
「そんなのがあるんですか、今。まさかないと思っていたから、そんなサービス。調べもしなかったですよ」
■アメリカでは開発競争の真最中
“驚きの実力”を見せる「チャットGPT」。一部の研究者がこれを使って実験したところ、アメリカの医師免許試験にも合格したというのです。開発競争も始まっています。「チャットGPT」を開発した会社には、マイクロソフトが今後数十億ドルを追加投資するとしています。対するアメリカのIT大手グーグルも、AIと対話する類似のサービス「Bard(バード)」を発表しました。
しかし、「チャットGPT」もまだ完全ではないようです。
【記者】
「『薄田ジュリアはどんなキャスターですか』って聞いてみてください」
【薄田キャスター】
「私のこと聞くの?怖いな」
【チャットGPT】
「薄田ジュリアさんは、日本のフリーアナウンサー・キャスターで…2010年に放送されたNHKのドキュメンタリー番組で…」
【薄田キャスター】
(Q:NHKに出られました?)「出てないです。それっぽいことと、全く事実ではないことが混ざっている…」
事前に取り込まれた大量の情報を組み合わせるため、その組み合わせを間違えて事実ではない答えを出すこともあります。また、取り込まれた情報も最新ではないということです。ただ専門家は、「今後、改善が進み、正確性も上がっていくだろう」と話します。
【東京大学大学院 松尾豊教授】
「検索は長期的にはなくなる方向だと思います。何か質問をして直接その答えを聞くほうが早いですし、また次の質問できますし、そういうふうにやりとりをしていくのが人間にとって自然だと思う。相当大きな変化が起こると思いますね」
専門家に聞くと、2021年までの膨大な事実関係をインプットしているのですが、それを人間と同じように曖昧に記憶しているような状態らしく、それを引き出してくるときに誤りが生じることがある。まだ甘い部分がありますので、いろいろと気を付けた方がいいようです。
■「チャットGPT」 間近に迫る実用化、そして今後期待されることは
改めて整理します。
・「チャットGPT」とは「対話型AI」です。イーロンマスク氏らが設立したアメリカの企業が去年11月に発表しました。
・これまでに存在した対話型AI「Siri」「アレクサ」などとの違いについて、AIを研究している東京大学大学院の松尾教授によると、「従来は長い会話ができず、続かなかった。今回は驚くような回答が続き、何より対話ができる」とのことです。
「チャットGPT」、最短で2023年4月から実用化される予定です。WEB上で法律相談のサービスを行っている「弁護士ドットコム」が、このAIを活用した法律相談を始める予定だということで、100万件以上の実績を反映させるということです。
・メリットは、困っている相談にすぐ対応できる
・デメリットは、新しい法律や判例を十分に反映できない
ただ、あくまでも「弁護士ドットコム」は、弁護士に相談するハードルを下げて、人間の弁護士に相談する方が増えることを目的にしているとのことです。またお金を取ると弁護士資格なしに相談にのることになり、“非弁行為”にあたるおそれがあるので、無償でスタートするということです。
「チャットGPT」に、今後どのようなことが期待されるのか、AIに詳しい北海道大学の川村秀憲教授によると、
・今はコミュニケーションのうまい対話型AIという段階
・検索エンジンと連動が始まると、事実の正確性も向上するだろう
とのことです。
実際にマイクロソフトは「チャットGPT」の会社に数十億ドルの追加投資を決めました。検索エンジン「Bing」に搭載して、強化していくということです。会話能力はありますが、事実関係は「過去にインプットされた情報を必死で思い出す」作業をしているような状態です。検索エンジンと連動すると、現時点の事実をリアルタイムで調べて、最新情報を反映できることになります。
(関西テレビ「報道ランナー」2023年2月15日放送)