“SNSっぽい”と感じて『万葉集』イマの言葉に訳したら…本売れた! 1300年前も今も“恋愛“や“不倫”同じく赤裸々 ギャル雑誌と意外な親和性 「うち人妻やのに…ワンチャンないで」 2023年02月13日
日本最古の歌集「万葉集」を現代語訳した本が手に入らないほど売れています。その“ワケ”を取材しました。
■書店で売り切れ続出! イマドキ言葉の「万葉集」 人気のヒミツ
「さのかたは 実になりにしを 今さらに 春雨降りて 花咲かめやも」
これをイマドキの言葉に訳すと…
「うち人妻やのに 付きあえるわけないやん ワンチャンないで」
奈良時代に作られた日本最古の歌集「万葉集」をイマの若者にも分かるよう翻訳した本が話題となっています。
【MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店 持田碧さん】
「在庫が…もう薄く(少なく)なっているんですけど。古典の本でこういう売れ方をしているのはほとんど見たことがない。ちょっと想像を超えた売れ方をしていると思います」
本のタイトルは「愛するよりも愛されたい」
2022年10月の発売以降、3万部が発行されていて、2月中に3度目の増刷の予定です。
また、インターネットサイトAmazonでは、本の売れ筋ランキングで1位を記録、在庫がなくなるほどの人気ぶりです。
本には、他にこんな歌も…
「ますらをや 片恋せむと 嘆けども 醜(しこ)のますらを なほ恋ひにけり」
天皇の息子のかなわない片想いを詠っている歌は…
「イケメンの俺が 片想いなんかするかよwっていってたけど したわwww」
ん?イケメンの俺…!?なんか「w(草)」までついています。
「来むと言ふも 来ぬ時あるを 来じと言ふを 来むとは待たじ 来じと言ふものを」
プロポーズされることを期待して、やきもきしている女性の歌は…
「くんのかい? こんのかい! こんの? くんの? いや こんのかい!」
どこかで聞いた覚えのある、コッテコテの関西弁で表現しています。
「ワンチャン」「ハッシュタグ」など、いま、はやりの言葉と万葉集が生まれた地・奈良の方言を使って訳しています。
「うちだけやん 愛してんのは あんたは『好き』って言うてくるけど 口だけやん」
専門学生2人(20代)は、この歌について…
【専門学生2人】
「え、これめっちゃいいやん」
「え、これすごい」
「しゃべり口調みたいなのがめっちゃいい」
「ツイッターを見ているみたいな感じがする」
「あんたに別れ話をされたとき ほな別れたるわ!! って即レスしたけど 正直やってもうたって思てる」
男子高校生4人は…
【男子高校生4人】
「ぐさっとくるなぁ…1カ月前の俺やん」
「共感できるっすね」
「親近感湧くんちゃうん」
「恋愛は今も昔も変わらないってことですよね」
■「万葉集」とギャル雑誌の意外な“親和性”…作者が発見
若者に支持されているこの本を制作した作者は、佐々木 良さん。なぜ万葉集をイマ風に訳した本を作ったのでしょうか?
【『愛するよりも愛されたい』 作者・佐々木良さん】
「SNSで万葉集訳をしたら『めちゃくちゃ面白い』『もっと見たい』みたいなコメントがついたんで、何個か作っていたら、本にできるぐらいの分量になったんで、小ロットでこそっと友達が買うぐらいな感じで、アマゾンにひょいっと入れただけだったんですよ。想像してなかったくらい売れましたね」
もともと佐々木さんは、万葉集など古典文学を研究していて、今も昔も「短い言葉で思いを伝える」というところは変わらないと話します。
【『愛するよりも愛されたい』 作者・佐々木良さん】
「“SNSぽい”なと思って万葉集が。『57577』って31文字じゃないですか。ツイッターでも140文字が限度の中で思いを伝えている。梅田から難波まで行くにしても、今は電車乗れば行ける思うんですけれど、(昔は)会えないもどかしさを短い歌で送るということが起こっていたので、それってSNSじゃんみたいな」
若者にもっと古典にふれてほしいと、さっそく第二弾も制作中です。
【『愛するよりも愛されたい』 作者・佐々木良さん】
「万葉集を読んでこの歌面白いなって言う場合と、現代の文学からこのフレーズ面白いなってところから、先に現代文があって、あとからこんな歌ないかなって探す作業もしているんです」
–Q:現代語訳の面白いフレーズはどういったところから?
…と、質問すると、スッと本棚から1冊の雑誌を取り出しました。
【『愛するよりも愛されたい』 作者・佐々木良さん】
「実はわたしの愛読書があるんですよ。『小悪魔ageha』ですね。ギャル雑誌とわたしは言ってるんですけれども、これを常に持ち歩いてて、面白いフレーズがあったら付箋を貼って、何か使えないかなって丸をつけて読んでいるんです」
「『TikTokは適当に撮った方が伸びる説があって』とか、『~する説があって』とか、次の本に採用できるかなと思っています」
佐々木さんがそこまで惹かれる“万葉集の魅力”とは?
【『愛するよりも愛されたい』 作者・佐々木良さん】
「やっぱり赤裸々ですね、思ったことを言うっていう…僕も思ったことをすぐ誰かに言って、いつも怒られるんですけど、僕みたいな人たちがいっぱい万葉集にいる。1300年前の不倫とかナンパの話が、SNSみたいに拡散されていくのは、まさにデジタルタトゥーだなと。今も昔も変わらないなって思いますね。人間のやることはそんな変わらないっていうか、奈良時代の人たちからずっと一緒のことをやっているんだなって安心感はありますよね」
万葉集で昔と今をつなげるユニークな翻訳、みなさんも一度触れてみるシカないですね!