連続強盗指示役とみられる4人は予定通り“強制送還”されるのか フィリピン『収容所』実態と日本人犯罪者集団が“暮らす”背景とは? 現地の日本人ジャーナリストに聞く 2023年02月02日
連続強盗事件について「ルフィ」を名乗り指示役だった渡辺優樹容疑者らの身柄は4人まとめて来週中にも日本に強制送還されることで調整が進められていましたが、2日、新たな動きがありました。
4人の内、女性への暴行事件で訴追されている渡辺容疑者と小島智信容疑者の2人について、現地2日に裁判が開かれました。告訴が虚偽の可能性があり、リモート(感染対策のため)で容疑者へのヒアリングが行われました。その結果、即日棄却にはならず、2月7日(現地)に次回の審理が行われることになりました。
本当に渡辺容疑者らは来週にも日本へ強制送還されるのか?そして収容所内の実態などについて、収容所の取材経験もあり長年フィリピンで新聞記者をしていた、ノンフィクションライターの水谷竹秀さんに聞きます。
Q)フィリピンの事情として、強制送還を免れるために別の事件をでっちあげるなどすることは一般的にあるんでしょうか?
【ノンフィクションライター・水谷竹秀さん】
「一般的と言われるほどにはないですが、少なくとも私が「ビクタン収容所」に取材に行った時に、収容者の中には訴えてもらって(ほかの事件をでっちあげて)強制送還を免れるために期日を延期しようとする人は少なからずいました」
フィリピン政府と日本政府は来週中にも4人を送還することで調整中だということですね?
【関西テレビ・神崎博デスク】
「マルコス大統領が8日に日本に来ることが決まっていて、この事件はすでに政治案件になっている。普通のプロセスですと、数週間かかったりするんですが、今回は8日という期限があるので、“スピードアップ”しているといえます」
政治的な意図はそうですが、一方、フィリピンの司法のサイド(裁判所)は告訴された内容の事案は本当にあった可能性もあると考えているので棄却はまだしていない現状で…今後の送還の行方が注目されます。
さて、渡辺容疑者らが収容されている「ビクタン収容所」について…
Q)収容所は性質としては拘置所や刑務所のようなものなんですか?
【ノンフィクションライター・水谷竹秀さん】
「刑務所ではないです。要するに強制送還されるまでに一時的に滞在、収容される場所なので、日本の拘置所みたいな場所ですね」
水谷さんも取材をしたことがあるということですが、まず、建物や内部の構造について
取材に基づく内部の様子を見ますと…一般的な収容者がいる収容されるA棟B棟以外にVIPルームがあるそうなんです。月12万円ほど払えば使用可能で、キッチンやテレビや冷房などが完備されている。シェアハウスのような感じで、賄賂払えばスマートフォンも使える状況だということです。
Q)水谷さん、収容所が劣悪な環境なので収容者たちは少しでもいい環境を金を払って求めているということなんですか?
【ノンフィクションライター・水谷竹秀さん】
「例えばA棟、B棟は一般的の収容者がいるところなんですが、エアコンがないので暑いんです。特に収容者が多くて寝苦しい時など、職員にお金を払って便宜を図ってもらって、エアコンのある部屋に住んだりとか、快適に暮らすために職員にアレンジしてもらう収容者はいます」
そのスマホなど使って渡辺容疑者らは日本の犯罪行為を指示していたとみられますが・・・収容所の職員ですから公務員になりますが、様々な計らいをする…んですね。そういったことが収容所以外でも割と行われている実態があるということなんです。水谷さんによりますと、役所でもお金を払えば並ばずに手続きができたり、警察が金で見逃してくれるとか、裁判でもお金で立場が有利になるとか…といったことが一定あるそうです。水谷さんは「政治家の汚職も多く、名ばかりの法治国家」と言わざるを得ないとしています。
【ノンフィクションライター・水谷竹秀さん】
「法治国家というよりは…人治国家。人が治めている。お金で法律もある程度ねじ曲げられるといった文化的にそういう習慣というか社会的な面が昔から続いていて、一般の人々も例えば上司がやっていたりとか、政治家が汚職をやってたりということが明るみになるニュースが続くと『なんで私たちが法律を守らないといけないんだ』とモラルの低下に繋がってきた背景が社会的にあるようです」
賄賂が横行していますが、背景には貧困もあるようです。1億人を超える人口のフィリピンなんですが、平均年収48万円のフィリピンは、日本とは大きな開きがあります。水谷さんによると、フィリピンの貧困を利用する日本の犯罪者集団がは…
・日本から近い
・物価が安い
・賄賂が横行している
と、いうことを利用してきた歴史があるということです。
【ノンフィクションライター・水谷竹秀さん】
「日本人にとって住みやすい、居心地がいい国ということなんです。どんな人も寛容で受け入れてくれる。ただ一方で、こういう犯罪集団に利用されるという側面もあるので、今回、渡辺容疑者らは自分たちの所得が高い、お金を持っているところを利用して、フィリピンの弱みというか法がお金でねじ曲げられるケースもあることにつけこんで、犯罪を行ったのではないか…と私は見ています」
「やっぱり、経済的に恵まれている国から来た外国人のおごりみたいなもの…渡辺容疑者はいくらでもお金を出すから『収容所から出たい』というような交渉をしていたという報道もありましたが、『お金を出せば何とでもなるんだこの国は』という考えが背景にあって、札束でフィリピン人を叩くっていうような、そういう側面があるんじゃないかと私は感じました」
(関西テレビ「報道ランナー」2023年2月2日放送)