大阪湾の浅瀬に“迷いクジラ” 無事に外洋に戻すにはどうしたらいいのか ベテラン船長も「クジラが淀川に入ったなんて初めて」 “塩分濃度”違う河口…弱っているおそれ 2023年01月10日
大阪市の中心部を流れる淀川の河口付近に、9日、突如現れた巨大なクジラ。
【記者リポート】
「10日午後3時15分です。前方にクジラの姿が見えてきました。ひれと背中が見えるかと思います。潮吹いていますね。かなり大きいですね」
10日も時折、潮を吹くものの、ほぼ同じ位置にとどまっています。
■「淀川河口付近にクジラが迷い込んでいる」と通報。体長8mのクジラ確認される
クジラが確認されたのは9日、午前8時ごろ、「淀川河口付近にクジラが迷い込んでいる」と、阪神高速湾岸線を利用していた人から、第五管区海上保安本部に通報がありました。
体長はおよそ8メートル。頭の形などから、普段は深海にすむマッコウクジラとみられています。このあたりは水深2メートルほどの浅瀬ということで動けなくなっているのでしょうか?
■心配そうに見守る人の姿が
近くでは心配そうに見守る人の姿があります。
【クジラを見に来た人たちは…】
「全然動かないから、かわいそうですね」
「無事に海に帰ってくれたらなって思う」
海上保安本部が、監視を続けていて、「見守りながら、関係機関と対応を協議する」としています。
■船上から中継でクジラの様子を間近に確認
9日に見つかったクジラですが、現在も同じ大阪湾の淀川河口近くにとどまっています。上空から背びれや背中、頭の部分が見えています。船を出して、近くからクジラの様子を確認します。
【船上からリポートする 鈴木祐輔記者】
「今私は遊漁船『オーシャン号』という船をお借りして、クジラが迷い込んだ海域に来ています。今のクジラの様子ですが、海面が波打っている中に、動かない黒い塊が見えているのが、クジラの背中です。時折、海面上にひれを大きく上げます。大きな姿を見せています。クジラを驚かせてはいけないので、大体100メートルほど間隔を取って中継しています」
【鈴木記者】
「クジラが迷い込んだ場所を説明します。向こうに大阪梅田のビル群が見えます。その手前に淀川が流れていて、河口となっています。さらにその手前にかかっている橋が阪神高速湾岸線です。都会の真ん中の海に迷い込んでしまったことが分かります」
【鈴木記者】
「この辺りは水深が2メートルほどしかない浅瀬です。干潮と満潮の水位の差は大体1.3メートルほどとなります。10日、一番潮が引いた干潮が午後2時半から3時にかけてでした。このあと午後8時半ごろに満潮で、だんだん潮が満ちてきます。1日に2回干潮と満潮を繰り返す浅瀬であるため、クジラにとって良い環境ではないとのことです」
【鈴木記者】
「今お借りしている船の船長さんは、前日9日もクジラをご覧になっているそうで、クジラの様子に違いがあるか伺います」
【『オーシャン号』船長 シーパラダイス 伊賀祥浩代表】
(Q.9日と10日でクジラの様子に違いは?) 「尾びれを動かす力が弱い。力が落ちてきた感じ」
(Q.9日に乗せていたお客さんはどうおっしゃっていた?) 「驚いていた」
【伊賀船長】
(Q.この辺り、船の交通量は多いのか?) 「淀川を少し上がったところにマリーナがあるので、プライベートの船が行き来する。またあちらにコンテナバースがあり、大型船が入ってくるので、それらとクジラが接触するかもしれない」
(Q.大きなクジラなので船と当たると心配?) 「クジラの上に船を乗り上げてしまうことがあったり、クジラを傷つけてしまうことがあると思います」
(Q.この場所でクジラの姿を見ることは?) 「ないです。25年ほど海に出ていますけど、クジラが淀川に入ったのは初めてですね」
(Q.クジラ心配ですね?) 「力も弱っているような感じで、死んじゃうんじゃないかなと心配しています」
■大阪港の塩分濃度は一般的な海水の半分ほど。クジラには過酷な環境
【鈴木記者】
「一つ心配な話があります。海水は一般的に塩分濃度が3.5パーセントぐらいだそうです。大阪府の調査によると大阪港の塩分濃度は1.9パーセント以下だそうです。ある測定器メーカーがUSJの近くで海水を採取して測ったところ、その時は1.1パーセントだったという話もあります。本来クジラが暮らしている外洋と比べて、この辺りの塩分は非常に薄い環境です。クジラが過ごすには決して快適ではない所に迷い込んでしまいましたが、一刻も早く元気なまま大きな海に戻ってほしいと思います」
【鈴木記者】
「(クジラと船の衝突が心配ですが)海上保安庁の巡視艇が1隻出ていまして、周辺に船が近づかないように警戒していると思われます」
■クジラを外洋に誘導する方法は?誰がやるのか?
クジラを外洋に誘導できないか、いくつかの方法が考えられます。
・船で追い込んで誘導する方法
・クジラが嫌がる音で誘導する方法
問題は、誰がやるのかです。
神崎博解説デスクは、「川自体は国の管理ですが、港湾であると大阪市や大阪府の管理となります。海であると海上保安庁であったりもする。特に人間に危害があるものではないので、どこが音頭を取って仕切るのかというのは、なかなか難しい問題です」と話します。
また心配事を、日本鯨類研究所の茂越敏弘さんに聞きました。「塩分濃度が低い場所、海水と淡水が混ざっている汽水域にとどまっているため、すでに弱っているおそれもあるのではないか」と指摘されています。
大阪の水族館「海遊館」の方に聞くと、「満潮から干潮になっていく、潮が引いていく流れにのっていくことができれば」という話もされていました。無事クジラが海に帰ることを期待したいところです。
(関西テレビ「報道ランナー」2023年1月10日放送)