広島市の給食業者「ホーユー」が給食の提供を停止した問題で、近畿・徳島の複数の学校などでも給食が提供できなくなっていることが分かりました。
高校の食堂の調理室は“ガラン”としています。食事の提供が中止されているのです。学校の食堂運営や給食の調理を請け負う広島市の会社が突然営業をストップし、関西で混乱が広がっています。なぜこのような事態に陥っているのでしょうか?
【京都府立農芸高校 森善彦副校長】
「突然のことなので、まずは生徒のご飯を準備するのはどのようにしたらいいのかと、大変戸惑っています」
京都府南丹市にある京都府立農芸高校では、6日、学生寮での昼食が用意できず、地元の業者に発注した弁当が配られました。この学校ではこれまで、広島市に本社を置く委託業者「ホーユー」が食堂を運営していましたが、4日に突然、従業員から「次の日から食事が提供できない」という連絡が来たということです。
【京都府立農芸高校 森善彦副校長】
「すぐには(弁当の)業者さんも準備ができないので、数を集めるのは苦労しました。(ホーユーと)連絡がずっと取れない状況が続いていますので、今後どうするかという見当も含めてどうなるのか教えていただきたいと思っています」
この学校では寮で暮らす約100人の生徒の朝食と夕食もホーユーに委託しています。今回の事態を受け、通学できる生徒は家からの通学に切り替えたということです。
■ホーユーが運営している全国約150カ所のうち半分で営業停止
食事の提供が止まっているのはこの学校だけではありません。ホーユーが運営している施設は全国に約150カ所。ホーユーによるとそのうち半分で営業が止まっているということです。
食堂の営業がストップした広島県内の高校では、教員がスーパーで食材を買い求めたり、地元の仕出し業者の協力を得たりと対応に追われています。
また大阪府では、ホーユーに委託していた3つの支援学校が、別の業者に弁当を依頼して対応しました。
【大阪府 吉村洋文知事 6日】
「いきなり給食の提供が停止になるということは、事業者に対して非常に残念に思います。速やかに給食を再開したいと思っています」
■事業者は「物価上昇が続く中で運営できないような安価で落札される」と説明
なぜ食事が提供できない事態になったのでしょうか。ホーユーの山浦芳樹社長は、FNNの取材に対し、「やむを得ず営業を止めた。学生には申し訳ない」と話す一方で、「物価上昇が続く中でも運営できないような安価で平然と落札される。安くしないと学校に契約してもらえない」と経営の苦しさを打ち明けました。ホーユーは近く、広島地裁に破産を申請するということです。
■近畿・徳島の学校にも影響が出ている
給食などを提供している会社の突然の営業中止で、近畿・徳島にも影響が出ています。
6日までに食事の提供を中止しているのが
・大阪府の支援学校3校
・京都府立高校の学生寮
・徳島県の警察学校
7日から提供が中止されるのが
・兵庫県県立高校 7校
突然食事の提供がストップしたことについて、京都府立高校の担当者は、「突然のことで戸惑っている。ホーユーとは連絡も取れない状況」だということです。徳島県の警察学校は、「当面は目の前の食事の用意をするしかない 他の業者への委託も検討している」ということです。
ホーユーの山浦社長は次のように説明しています。 「(給食委託業務の入札で)物価上昇が続く中でも、運営できないような安価で平然と落札される。安くしないと学校に契約してもらえない」とのことです。近日中に広島地裁に破産申請をする予定だということです。 物価高の影響が出ているとホーユー側は説明しています。
【関西テレビ 加藤報道デスク】
「広島県に取材をすると、コロナ禍や原油高による物価高騰に対応するということで、補助金の制度があるということは伝えているけれども、申請がなかったということです。7月にも県が直接説明に行ったところ、『今の価格でがんばりたい』と回答があったと県は言っています。ちょっとお互いの言い分が食い違っていますので、慎重に見ていかないといけないかもしれません」
番組コメンテーターで前尼崎市長の稲村和美さんは、「自治体は適正価格で安全に安定した業務をやってもらえるように、どう発注すべきか常に悩んで試行錯誤しています。建設工事だと最低制限価格・予定価格という形で、これより安かったら安全性が危ないというような考え方を入れながら入札を行っています。一方で今回のような業務委託は制度が追い付いていない部分がありまして、尼崎市では条例を作って予算をしっかり積んだり、最低制限価格を自分たちで設定したりというチャレンジもしていってたんですけれども、課題もあります。今回の業者についてはもう少し事前に相談したらよかったんじゃないかなと思います」と話しました。
子供たちはもちろんのこと、保護者や働いている方にも影響が出ています。早急な対応が求められています。
(関西テレビ「newsランナー」9月6日放送)