世界中から届けられる大量の郵便物。しかし、その中には…
【税関職員】
「ヴィトンのマスクですかね…まだ下にもあると思うので…」
有名ブランドの違法なコピー商品や…
【税関職員】
「ソーセージだと思うんですけど…動物検疫に引っかかちゃうので、おそらく没収になるかと」
輸入できない食品まで…
郵便物にまぎれこんだ違法な“招かれざるモノ”。水際でどう食い止めているのか、税関の仕事に密着しました。
■大阪国際郵便局 国際郵便に潜む“モノ” 税関の水際検査に密着
大阪国際郵便局で、朝礼が行われています。
【大阪税関職員】
「これからクリスマスのシーズンで物流が増える。これまで以上に検査をやっていきましょう」
ここで働くのは大阪税関の職員たち。届く荷物は1日に1万点以上。世界中からやってくる郵便物を点検し、違法薬物や偽ブランドなどの“社会悪”の流入をいかに防ぐか 目を光らせます。
【大阪税関職員】
「こういうふうにくるまれていて入っていました」
出てきたのは危険ドラッグ“ラッシュ”。品名を「洗剤」と偽って申告していました。
【大阪税関職員・坂上さん】
「せっけんですね…。中にくりぬかれて(違法薬物が)入れられているケースもあるので」
こう話すのは、坂上隼平さん(23)。税関職員へのあこがれの気持ちから今の仕事に就きました。
【大阪税関職員・坂上さん】
「仕事の悩みはないんですよね、あんまり。大変ですけど麻薬見つけられた方が達成感あるので、それに向けて頑張っています」
■若手税関職員の1日 巧妙化する密輸手口との闘い
税関職員の1日の仕事は、郵便物をX線検査にかけることから始まります。
X線画像に映し出されたのは2本のナイフです。形状から武器に該当する可能性があると判断。中を開けていきます。
【特別審査官】
「これは刃渡り14センチなので、銃刀法は非該当。しかし持ち手が下に振り下ろすものなんですけど、反っているので武器として通知してください」
また、国際郵便では不正薬物の密輸の摘発が年々増加。新型コロナにより人の往来が減り郵便物が増えたことが背景にあるとみられています。
いかに税関の目をかいくぐるかー。その手口は巧妙になっています。
【大阪税関職員・坂上さん】
「前までだったら(開封口が)結構雑にぬられていたりしたんですけど、最近はだいぶきれいなので見分けがつかないようになっている」
2021年、大阪税関が摘発した違法薬物。隠されていたのはなんと絵画の裏。5000万円相当の合成麻薬・LSDが見つかりました。
また、2020年、国際郵便物からクマの容器に入っていた「液状大麻」を摘発しました。
X線検査だけでなく、ほんのわずかな薬物成分でも検出できる機器も活用し、摘発につなげます。
坂上さんは税関職員になって3年目。一緒に働く人たちは自分より年上の人がほとんどです。
息子のような存在の坂上さん。分からないことは、すぐに先輩に相談することにしています。
【上司】
「愛嬌があって先輩から見るとかわいがられる後輩。仕事のことで僕のところに質問来たりするんですけど、そういうのも真面目だと思います」
【先輩職員】
「麻薬とかもよく見つけてくれるので助かっています。僕も頑張らないと彼くらい」
【同期職員】
「最初のイメージはあまり良くなかった。チャラそうやなみたいな感じ。ああ見えて謙虚なので、事件の話をするときも自分の手柄なのに『上司に教えてもらったことの積み重ねで摘発できた』と言うので、ものすごく謙虚で」
違法薬物などの摘発は簡単ではありません。坂上さんも初めは苦労しましたが、X線の写り方などを勉強し、徐々に摘発できるようになったと言います。
【大阪税関職員・坂上さん】
「朝方に郵便物にX線をかけるんですけど、その時に違和感を感じて、それを検査したら実際に貨物から社会悪、薬物が発見できた。それを摘発したのは去年なんですけど、2年前の入り始めの頃はそういう経験ができなくて悔しい思いをしました。X線を見て摘発できたのは成長だと思います」
■薬物に偽ブランド…コロナ禍の往来減で国際郵便での密輸増加
ことしの上半期で輸入を食い止めたものの、中で一番多かったのが医薬品。2021年よりも2倍以上増加していて税関も警戒を強めています。
【坂上さんの同僚の職員】
「薬です。ワシントン条約で入っているものはなくて漢方系の精力剤だと思うんですけど…100日分は多いですね」
輸入できる数量をオーバーしているため、近畿厚生局に判断をゆだねます。
検査を始めて4時間。この日一番怪しい荷物を手にした坂上さん。中を開けると入っていたのは…ブランドのロゴが入った大量のマフラー。
2021年、税関が没収した偽ブランド品などの商標権侵害物品はおよそ2万8千件。その中でも中国からの品物が全体の7割にも上ります。
【大阪税関職員・坂上さん】
「ヴィトンのマスクですかね…まだ下の方にもあると思うので」
箱の中から、大量のマスクが奥からたくさん出てきます。
【大阪税関職員・坂上さん】
「おそらくコピー商品であろうものなんですけど、本物と違う部分があるのでそれを確認しています」
所定の手続きを行った後に、処分となることも。一つ一つの細かい作業が社会悪の摘発へとつながります。
【大阪税関職員・坂上さん】
「薬物の阻止は、税関など限られた組織にしかできないので、薬物などに善良な国民が巻き込まれないように税関職員が水際で必死に食い止める。前年度よりも摘発したいのでそれを目標に頑張ります」
“密輸を防ぐ”、その思いで日々届く大量の郵便物と向き合います。
(2022年12月19日放送)