日本の防衛が大転換「反撃能力」保有で私たちは安全になる? “安保3文書”閣議決定について詳しく解説 日本が戦争に巻き込まれる可能性は 2022年12月16日
16日に閣議決定された、「安保3文書」。これによって日本の防衛は大転換し、「反撃能力」を保有するようになりました。
日本は安全になるのか、戦争に巻き込まれる可能性はないのか、関西テレビ神崎デスクの解説です。
――Q:そもそも、なぜ今この話が?
【関西テレビ 神崎デスク】
「唐突なイメージがあるかもしれませんが、実は、今年の政府の方針を決める『骨太の方針』というのが6月に決まっていて、ここに『5年間で防衛を見直す』『長距離スタンド・オフ・ミサイルの配備』といったことが書いてありました。また、夏の参院選の自民党の公約にも『反撃能力』や『防衛費をGDPの2パーセントに』といった内容があり、自民党の党内ではずっと議論が積み重ねられていたんです。メディアがあまり報じていないので急に話が出てきたような印象がありますが、自民党内では議論が熟し、やっと出してきたという感じです」
今回の転換によるもっとも大きな変化が「反撃能力」を持つことです。
これまで日米同盟は、日本が「守りの盾」、アメリカが「攻めの矛」と言われてきました。日本が攻撃されれば、日本自身もミサイルで撃ち落とし身を守ることができますが、さらなる攻撃を防ぐための攻撃は、アメリカに依存してきたのです。しかし今後は、日本自身も反撃能力の「矛」を持つということになります。
――Q:今回の転換は、どのくらい大きなことなんですか?
「日本は『専守防衛』で守ることに徹し、攻撃はアメリカにお任せする、と分担していました。これからは日本も攻撃に参加することができる、日米同盟でいうと、日本とアメリカで一緒に相手国に反撃することができるようになります」
――Q:これから反撃能力を使うことはあるのでしょうか?
「実際は、『反撃』の判断が難しいと思います。例えば北朝鮮にミサイル発射の動きがあったとします。トレーラーが出てきてミサイルを立てたと。ただ、これが果たして日本を狙ったものなのか、あるいは日本海に落ちるものなのかは、発射後、ある程度まで飛ばないと分からない。ミサイルを立てた段階では判断できないんです。実際問題、ミサイルが撃たれて『日本に来る』ということが分かってから反撃準備をしても間に合わないので、1発目が日本の領海・領土に着弾してから反撃することになると思います。先に、未然に防ぐというのは難しいです」
――Q:実際に今、北朝鮮のミサイルが日本海に着弾したりしていますが、そこに対して使えるものではない?
「撃たれて、それが日本の領土・領海に着弾すると分かってからの使用に、基本的にはなると思います」
――Q:結局日本は安全になるんでしょうか?
「自民党や防衛省サイドに話を聞くと、これまでは相手国への反撃について、アメリカ軍にしか能力がなかった。これから自衛隊が一定の能力を持つとすると、攻撃力が上がります。例えば今配備されようとしているアメリカ製のトマホークという巡航ミサイルは、日本のイージス艦1隻に最大100発くらい積めます。同時に出航することはありませんが、日本のイージス艦は8隻あります。日本が最大800発のトマホークを撃つことができると分かれば、周辺国は攻撃を思いとどまるのではないか、一定の抑止力になるのではないかというのが、防衛省サイドの見方です」
一方、「抑止力にはならない」とみる専門家もいます。
安全保障に詳しい流通経済大学の植村秀樹教授は、「周辺国を刺激し、得策かは疑問。アメリカに『攻撃するぞ』と言われたらノーと言えなくなるのでは…」と危惧しています。
反撃能力の使用は、相手側から「先制攻撃だ」と批判される恐れもあり、これを機に戦争が始まる危険性もあります。いずれにしても、実際の防衛力整備に関しては来年度以降の予算に反映されるので、国会での議論のなかで無駄な支出がないようチェックすることが、野党側にも求められています。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年12月16日放送)