万博「テーマ館」で相次ぐ入札不成立 資材価格高騰や工事の難易度が影響か 予算を上げる?クオリティーを下げる? 博覧会協会の選択は 2022年12月13日
2025年の大阪・関西万博のテーマを表現するパビリオンの建設工事で、入札不成立が相次いでいることが分かりました。一体何が起きているのでしょうか?
■入札不成立相次ぐ万博「テーマ館」
「いのち輝く未来社会のデザイン」がテーマとなっている大阪・関西万博。8人のプロデューサーそれぞれが「いのち」を表現するパビリオン=「テーマ館」を建設する予定です。
メディアアーティストの落合陽一さんがプロデュースするテーマ館は、湾曲した鏡を組み合わせたデザインが特徴です。
【メディアアーティスト 落合陽一さん】
「世界のどこでも見たことないような映像体験・身体体験が得られるようなものを目指しています」
しかし博覧会協会によると、12月12日時点で、落合陽一さんや映画監督の河瀬直美さんなどの5つのテーマ館で、3件が予定価格の範囲内での入札がなく、残りの2件は入札自体がありませんでした。
この他に10月にも、生物学者の福岡伸一さんのテーマ館が入札不成立となっています。
工事の難易度が高いことや資材価格の高騰などが理由とみられ、博覧会協会は「予定価格の見直しも含め、事業者の再公募を行いたい」としています。
12月13日、大阪市の松井市長は…
【大阪市 松井一郎市長】
「こちらとしては高い品質のものをできるだけ安い値段で、と考えてますけど。実際に施工するとなると、高いレベルの品質を求められると、その値段じゃ無理ですよと。総予算1850億ありますから、そこに収められるように、お互い知恵を振り絞っていこうと」
およそ2年後に迫った大阪・関西万博。私たちはどのようなパビリオンを体験することになるのでしょうか?
■なぜこんな状況に?
8人のプロデューサーそれぞれが「いのち」を表現するテーマ館。映画監督の河瀬直美さん、放送作家の小山薫堂さんのテーマ館には入札がありませんでした。落合陽一さんのテーマ館には入札があったものの、予定価格の範囲外だったということです。
現時点で8件のうち6件の入札が不成立となっており、残り2つは公示していないため、8分の8が入札不成立となる可能性もあります。
なぜこんな状況になっているのか建設会社に聞いたところ、A社は「他の仕事も多い中、予算は厳しく人手不足。でも完成時期は決まっている」、B社は「デザインが複雑でこの金額でできるのか、本当はやりたいが冒険できない」という回答でした。
関西テレビの神崎デスクは、予算を増やすことは難しいのでは、という見方です。
【関西テレビ 神崎デスク】
「予算の総枠が決まっているので、なかなか額は上げられない。そうなるとクオリティーを下げるしかない。理想はあるんでしょうけど、現実的にできる方向にグレードダウンしていくしかないのかなと思います」
同様の問題は、大阪府や大阪市などが出展する「大阪パビリオン」でも起きています。
自治体は建設費用を74億円ほどと想定していましたが、建設業者からは195億円の見積もりが。屋根の素材をガラスから樹脂に変えるなどの見直しを行いましたが、契約金額は約99億円となりました。
報道ランナーに出演する経済学者の安田洋祐教授は、予算を上げてもいいのではないかという意見です。
【安田洋祐教授】
「まずこのニュースを聞くと、入札が決まらなくて残念な感じがしますが、逆にいうと、各プロデューサーが趣向を凝らしたデザインを用意したということ。片手間に引き受けたのではなく、真摯に仕事をしているんだというところは、僕は良い材料だと思います。で、凝ったデザインを実現するための予算、1850億円の中の数億から十数億円なら、捻出できないことはないかもしれない。後はやはり素材を変えるとか少しコストダウンするとか。いずれにしても期日は決まっているので、きちんと8名そろってパビリオンを造っていただきたいなと思いますけど。万博全体の経済効果が2兆円強あるんじゃないかと言われています。その金額の大きさから考えると、こういった目立つパビリオンに数億から十数億円使うというのは、あんまりケチらなくていいんじゃないかと個人的には思いますけど」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年12月13日放送)