静岡県裾野市の保育園で、1歳児の園児らを宙づりにするなどした暴行の疑いで、元保育士3人が逮捕・送検されました。富山市や仙台市の施設でも不適切な保育の実態が明らかになり、厚生労働省は調査に乗り出す方針です。
安心・安全の保育を実現するため、ある取り組みを行う大阪の保育園を取材しました。
■16台のカメラを設置した保育園
0~6歳児まで約250人の園児を預かる、東大阪市の「木の実キッズキャンパス」。
2001年に児童が犠牲となった大阪教育大学附属池田小学校の事件をきっかけに「監視カメラ」を導入し、園児たちの様子を見守っています。
【木の実キッズキャンパス 増山和久副園長】
「こちらが0歳児のお部屋です。このカメラは広角ですね」
さらに、すぐ隣の部屋にも…
【増山副園長】
「こちらの部屋にはあちらに…あそこから全体を撮っています」
【記者リポート】
「あそこに1台あって、こっちにもあって…すごいな」
現在、職員室も合わせた室内に13台と園庭に3台の、計16台のカメラを設置。園が様子を把握するだけではなく、園庭はホームページで24時間、室内は保護者向けに日中の3時間を公開。外から子どもの様子を見られる「ライブカメラ」の役割も果たしています。
【増山副園長】
「日常の本当の姿をなかなか見られないと思いまして、特に小さいお子さまになると、常々の保育のことを自分でも語れませんので」
3歳の双子を預ける保護者は、家でテレワークをする合間に、子どもの様子もチェックしているといいます。
――Q:お子さんがこの映像の中に?
【保護者】
「そうです。2クラスあるんですけど、1人ずついます。(Q:分かります?)分かりますね」
――Q:今はご飯食べてますね
「私の子食べるのが遅いので、最後まで残ってないかとかも確認したり」
室内映像を見るためにはパスワードが必要で、関係者しか見られないことも安心だといいます。
【保護者】
「あ、先生に怒られてるなと、チラッと見たら集中して見てしまったりしますけど、最初にけんかが始まったとかそういうのがあるんで、あ、これで怒られたんだな、とかも良く分かりますし」
他の保護者にも話を聞いてみると…
【保護者】
「私たちの安心感もそうですし、先生方からしても今の保育情報を公開しているというところがありますので、ほどよい緊張感があると思うのでいいのかなと」
「(プライバシーの問題は)特にその辺は気にしてない。子どもやから見られる方がいい」
保護者はカメラの設置に賛成のようですが、保育士はどう思っているのでしょうか。
【保育士 神田明子さん】
「最初は『えっ?』って、素直にびっくり。『え~っ、ずっと映るんだ』みたいな。けど、限られた時間の中なので。カメラがあるけど保育としては変わりなく」
【保育士 峯真由美さん】
「(カメラは暴行などの抑止力に)なると思います。いろんな現場があっていろんな状況があると思いますので、なんとも言えないんですけど、カメラがあることでなくなる可能性は、ちょっとは上がるのかなと」
子どもたちの安心安全に一役買っているカメラ。
――Q:カメラがあったら暴行は防げた?
【木の実キッズキャンパス 唐住康雄園長】
「あるなしに関わらず、カメラのないところで虐待というのはあるでしょう。一定の歯止めにはなるかもしれないけど」
園長は、カメラの設置をした上で、さらに大切なことがあると言います。
【唐住園長】
「やっぱり信頼ですよ、保護者との信頼関係。カメラどころじゃないですよ、信頼があれば。やっぱりそこですね」
■監視カメラはあり?なし?
園児を守るため、私立の「木の実キッズキャンパス」が設置している監視カメラ。
メリットとして、虐待防止など不適切な保育の防止になるといった点が挙げられます。富山市のケースでは、監視カメラに暴行が疑われる行為が映っていたということで、捜査の証拠にもなりました。
また保護者にとっては、子どもたちの様子を確認できることもメリットです。
さらに、現役保育士YouTuberで育児アドバイザーのてぃ先生は、保育士にもメリットがあると言います。
園児がけがをするトラブルが起きた際などに、園児が自ら転んだのか、誰かに転ばされたのかといった状況把握がしやすいということです。
しかし、公立保育園のWEBカメラ設置状況を調べたところ、大阪市・神戸市・京都市いずれも0という結果になりました。
侵入者をチェックするなどの目的で監視カメラを設置しているところはありますが、園内の映像を保護者がライブで見ることができるのは、公立保育園では1つもないということです。
WEBカメラの設置には、第三者によるのぞき見や、保育士が必要以上に見張られているとストレスを感じるといった懸念もあります。
関西テレビの神崎デスクは、公立保育園でのカメラ設置は難しいとしつつ、メリットが大きいと見ています。
【関西テレビ 神崎デスク】
「コロナの濃厚接触者割り出しの際、カメラを使った事例もありました。そういう意味では、予算があればカメラを付けるというのは大事なのかなと。さらにそれを保護者に公開するというのは次のステップなので、同意を取るなどの必要がありますが、このご時世なので、公立の園でも付けていいんじゃないかなと思います」
予算の問題などで、すぐにカメラを設置することが難しい園はたくさんあります。今すぐできる対策として、てぃ先生は「例えば行事や制作物の準備など保育士業務が多すぎるので、まずはそこを見直すべき。保育士の負担が減れば、その分、子どもと向き合う保育の時間に余裕ができる」としています。
再発防止に向けて、構造的な問題の改善などの取り組みが急がれます。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年12月8日放送)