大阪府知事・大阪市長・堺市長が同日に? 模索される「トリプル選挙」の裏に見え隠れする“維新”の思惑 自民が反対できない理由とは 2022年11月29日
2023年4月に行われる統一地方選挙。大阪府知事選、大阪市長選の実施が決まっていますが、同じ日に堺市長選挙も実施される、“トリプル選”の可能性が出てきています。
トリプル選になれば、費用節減や投票率のアップが期待できる一方、人員確保や開票スピードへの懸念が指摘されています。
ただ、この裏には各党の思惑も見え隠れしています。
■堺市長選 元々は6月の予定も…
【大阪・堺市民】
「手間が省けるので、一度で済むのはすごいラッキー」
「よろしいやん。経費があんまりかからん方がいいん違うかな」
「別々がいいですね。ごちゃごちゃとなってしまって…流されてしまいそうな気がする」
大阪の堺市民が関心を寄せているのは、来年2023年の堺市長選挙。
現在の永藤英機・堺市長の任期は2023年6月8日までで、元々は4月の統一地方選挙とは重ならないはずでした。
しかし、11月11日の国会で地方選挙を同時に行う「統一地方選臨時特例法」が成立したため、2023年の堺市長選挙は、堺市の“選挙管理委員会が認めれば”、4月に実施できることになりました。
これにより、大阪では「府知事」と、「大阪市長」、そして「堺市長」の3つを同時に決める、トリプル選の可能性が出てきたのです。
もし、堺市で同日選挙になった場合、同じ日に府知事・府議・市長・市議の4つの選挙が行われるため、およそ1億1000万円の経費削減になるというメリットも。
一方、選挙管理委員会からは「4つの選挙を同時にやったことがないから、地域の狭い会場でできるのか」といった声も。前例がない「4重選挙」に、会場の確保などが不安視されているのです。
そんな中で動いたのは、現在の永藤市長が属する「大阪維新の会」の堺市議団。選挙管理委員会に、「同日選挙」を求める要望書を提出しました。
【大阪維新の会 堺市議団 黒田征樹団長】
「我々として感じたのは、少し反対の論調の方が強いんじゃないかなと、感覚的なものですけども。それがありましたので、このタイミングにおいて要望しようと」
■「同日選挙」 各党は
「同日選挙」を決めるのは、選挙管理委員の多数決です。
独立した組織である委員会ですが、構成している委員は自民・立憲(堺創志会)・公明・維新が1人ずつ推薦しているメンバーです。
各会派の思惑が反映されることも懸念される中、維新以外の会派は…
【自民 堺市議団 野里文盛団長】
「自民党としては(統一選と)一緒にしたら、事務の効率化・経費の観点から、経費も市民の大きな血税ですから賛成したい」
維新とともに同日実施に賛成を表明した自民。一方で…
【公明 堺市議団 吉川敏文団長】
「選挙管理委員会の先決事項だと認識している。そこで決定されたことに我々は従う、当然のことだと思います」
【堺創志会(立憲・無所属) 吉川守団長】
「選管は独立機関という中で、向こうの判断に従うということでうちの会派は一致してますけど。(維新のように)政局に影響するようなところの要望を(選管に)出すべきではないのかなと私は思いますけどね」
公明と立憲は「選挙管理委員会の判断に委ねる」として、現段階で態度を表明していません。
11月29日、堺市長選挙の前倒しを巡り、選挙管理委員会では審議が行われました。「同日選挙」について議論が交わされましたが、結論は出ませんでした。
【堺市選挙管理委員会 中井国芳委員長】
「(同日でも単独でも)どちらもメリットがある。4名の委員の意見の相違があっても、1つに意見にまとまると願っているし、そういう方向に努力したいと思います」
市民にとって、より良い判断が下されるのでしょうか。12月10日に開かれる定例委員会で、「同日選挙」にするかどうかが決まる見込みです。
■市長選前倒し 各党の本音は?
堺市長選前倒しの可能性と各党の本音を、関西テレビ大阪府政担当で堺市長選を取材している菊谷雅美記者が解説します。
【菊谷記者】
「大前提としては、コストがかからないということと投票率が上がるかもしれないということから、維新や自民は賛成の立場です。それ以外の立憲・公明・共産は、あくまで独立した選挙管理委員会が決めることとして、態度を表明していません」
【菊谷記者】
「ただ、現職の永藤市長が所属している維新のある議員は、『永藤市長は目立った政策がなく、単独では厳しい選挙戦になる』と言っていました。なので、単独では厳しいから、大阪府知事選や大阪市長選と合わせることで、多くの人に投票に行ってもらい、無党派層を取り込んで“維新の風”を巻き起こしたいという考えです」
【菊谷記者】
「一方、自民党は組織票が見込めるので、投票率は低い方が有利に働くとみられます。そうすると自民は一見反対しそうに見えますが、地方選挙を同時に行う法案を政府与党が国会で可決しているので、反対しにくいという本音があります。立憲、共産、公明は意思を表明していませんが、ある議員は『同日選挙の方が自分たちが出す選挙資金が少なくて済む』というメリットがあると漏らしていました」
“投票率が上がると有利になる”と同日選挙を目指す維新ですが、関西テレビの神崎デスクは、過去にそういった例があると言います。
【関西テレビ 神崎デスク】
「先日行われた尼崎市長選では、維新は松井前代表や吉村共同代表を応援に入れて、投票率を上げて人気を取っていこうと動きましたが、市長の単独選挙だったので、実際の投票率はそれほど上がらなかった。30パーセント台とかなり低い投票率だったので、組織票を持つ自民などが有利になり、維新は負けたんです」
この状況について、報道ランナーに出演する、大阪大学大学院の安田洋祐教授は…
【大阪大学大学院 安田洋祐教授】
「選挙は民主主義の根幹なので、コストが少ないというのはメリットではありますが、メインの理由にはすべきではないと思います。より多くの有権者が独立に候補者を選べる、そういった質の高い選挙が実現できる方を選べばいい。今までの話でいうと、投票率が高くなって組織票の行方に左右されにくい同日選挙の方が、質の観点からいうと高いんじゃないのかなという気はしました」
■同日か別日か 決定は12月10日
同日選挙となるかどうかは、選挙管理委員会が決定します。堺市の場合は委員が4人いて、各党が推薦した人がメンバーだということです。
【菊谷記者】
「11月29日の話し合いでは結論が出なかったので、12月10日に決定されます。ルール上は多数決、2対2になれば委員長が判断しますが、立憲民主党が推薦した委員長は『多数決ではなく、すっきりした答えにならなくても、話し合いで結論を出したい』と言っていました」
注目の決定は、12月10日に下されます。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年11月29日放送)