1126の日は銭湯に行こう! レトロ×新しい銭湯の魅力 若者たちをトリコにするそのわけは 最新の酸素カプセル、5000冊を超える漫画、昔懐かしい鏡広告…関西の個性的な銭湯を一挙紹介! 2022年11月24日
今、銭湯を取り巻く状況が変わりつつあります。
利用者の減少や後継者不足などによって、軒数は年々右肩下がり。そんな中、新たな付加価値を掛け合わせた「進化した銭湯」が続々と登場しているんだそう。
“古くて新しい”個性的な銭湯を、取材しました。
■銭湯×有名ブランドで「行ってみるきっかけを」
11月23日、あべのハルカスで開幕した「銭湯博2022」。古き良き銭湯カルチャーが楽しめるイベントですが、実は今、若い世代に銭湯が注目され始めているんです。
11月17日、「湯処 あべの橋」の男湯を貸し切って行われた記者会見。牛乳石鹸とアパレルブランドBEAMS JAPANがコラボし、「銭湯のススメ」プロジェクトを立ち上げました。
提案するのは“ファッショナブルな銭湯”。スウェットや湯おけなどのオリジナルグッズも発売し、若い世代に「銭湯ってイケてるよね!」と伝えようとしています。
【ビームス クリエイティブ 金田英治さん】
「『銭湯行ってみようかな』っていうきっかけって非常に重要で。今まで当たり前の風景がそれによって、ちょっと特別になるっていうこと。そんな仕掛けができたら非常にいいなと思っています」
来年には銭湯を舞台にした映画「湯道」も公開されるなど、銭湯界隈は盛り上がりを見せているようです。
■個性的な銭湯 駄菓子に天井画、鏡広告も
大阪市西成区にある、70年近くにわたって地元に愛され続ける下町の銭湯「日之出湯」は、“客を呼ぶ工夫をし過ぎる銭湯”だといいます。
番台を抜けるとずらり広がるのは、「子供にも来てほしい」と販売を始めた駄菓子。今や、ロビーはほぼ駄菓子屋状態になりました。
さらに奥の扉を開けると、最近導入したという自慢の自動洗髪マシーンが。入浴料込みの1500円で利用でき、3分で洗髪が完了します。
【利用客】
「なんかマッサージされてる感じです」
隣の部屋には、最新の高気圧酸素カプセル。こちらは入浴料込みの2000円で利用可能。
極めつけは、天井に描かれた108匹の鯉です。有名な壁画家・木村英輝氏による天井画で、ネットでも話題となり、遠くから見にきたという女性も。
【東京から来た利用客】
「この鯉がすごい印象的で。なんかそれがいいなと思って、ネットで見たときに。大正モダンとか昭和レトロとか好きです」
【利用客】
「自分自身もちっちゃいとき、銭湯で育ったんで。なんかそのカルチャーを教えたいなと思って。ただ風呂入るだけじゃなくて、挨拶・マナーとかそういうのも学べるし、人とコミュニケーション取れるじゃないですか」
銭湯カルチャーと言えば、レトロを売りにした“あるもの”がSNSで話題になっている銭湯も。
大阪市此花区にある創業70年の千鳥温泉は、立派な富士山の壁画が描かれた「ザ・昭和の銭湯」といった雰囲気ですが、話題なのは壁画ではなく…
【吉原功兼アナウンサー】
「あれ?これ広告ですよね。Youtube配信中…?レトロなのに新しい」
洗い場の鏡に掲示された、昔懐かしい「鏡広告」です。
近所のたこ焼き店や文庫本の広告に紛れて、なぜか神奈川県の喫茶店の広告や、女湯には「【至急】彼女募集!」という、独身男性が個人で出した広告まで。
この銭湯では、SNSで広告主を募集したところ、「レトロで面白い」「なんかエモい」と反響を呼んだそう。広告費は半年で2万6000円ですが、現在40枠ある鏡広告はほぼ埋まっていて、浴場の鏡を交換する費用を賄っているんだとか。
【千鳥温泉 店主 桂秀明さん】
「これだけバラエティー豊かな広告を取りそろえているのは、たぶんうちだけだと思います。広告を出されたご自身が『千鳥温泉にありますよ』とSNSで言って、それを見にきてくれるっていうことも、プラスアルファで」
鏡広告が話題になることが、千鳥温泉そのものの広告にもなっているようです。
■オフィス?漫画喫茶? 付加価値で勝負する銭湯
「銭湯プラスアルファの空間」で集客を狙っているのは、京橋の「ユートピア白玉温泉」。
銭湯のロビーから一つ上の階に移動すると、オシャレなオフィスのようなスペースが広がります。
2022年8月、億単位のお金をかけて全面改修し、ミーティングルームやテレワークにも使える個室ブースを作りました。
【利用客】
「(仕事)結構頑張った後に、お風呂入って帰るだけなんで。1個でまとめられて気持ち良かったですし、快適に過ごせましたね」
大阪市住吉区の「辰巳温泉」も、若い世代や家族連れに足を運んでもらおうと、意外なものを設置しました。
【吉原アナ】
「銭湯って聞いて来たんですけど…すごい数の本。普通の銭湯にある本の数じゃないですよ」
2022年7月のリニューアルで新しく設置したのは、巨大な本棚。漫画を中心に、5000冊以上を取りそろえました。
子供たちのために、絵本や滑り台も完備。お風呂から上がった後も、ゆったりできる空間づくりを目指したといいます。
【利用客】
「いろんな本読めるし、ゆっくりできる」
「週に3回ぐらい来てます。2時間くらいいます」
どれだけ長居しても、かかるお金は入浴料の490円だけ。リニューアル前に比べて客足は伸び、中でも若い世代は3割程度増えたといいます。
【辰巳温泉 店主 羽鳥心之介さん】
「いわゆる若い世代が、今後銭湯が存続して行くために必要なお客さまの層ではあるので。そちらも獲得できたらなという思いで漫画なり、いろんなアメニティだとかを取りそろえている形ですね」
■神戸市では大学生無料キャンペーン
自治体も、銭湯離れを食い止めようと思い切った策を打ち出しています。
神戸市東灘区の「湯あそびひろば森温泉」に続々と集まってきた大学生たち。お目当ては、神戸市が始めたキャンペーン「Kapooooon!Kobe!(カポーン!コウベ!)」です。
市内の大学生を対象に、番台に設置されたQRコードを読み取り大学名や居住地などを記入するだけで、なんと入浴料がタダになるというもの。入浴料の450円は、神戸市が補てんする仕組みです。
【市内の大学生】
「地元がここで、このキャンペーンやってるので、めちゃくちゃ行かせてもらってます」
「今大学生が無料というキャンペーンを聞いて、それだったら行きたいなと思って」
「家とは違った感覚でお風呂楽しめるっていうのがいいのかな」
エモい空間で、心も体もゆっくりできる…若い世代が銭湯の魅力にハマるきっかけをつくろうと動きだした神戸市。背景には、市内にかつて200近くあった銭湯が32まで激減している現状がありました。
10月から始まったキャンペーンは、利用者が1万人に達した段階で終了する予定でしたが、わずか1カ月半で1万人を超えるほどの大好評で、急遽上限を2万人に拡大したといいます。
【神戸市浴場組合連合会 会長 立花隆さん】
「学生さんに興味を持ってもらって将来につなげていくっていうのが、やっぱりキーポイントになってくると思いますので。2万人といわずに、もう3万人、4万人でもやっていただけたらね、本当将来つながることだと思いますんで。もっともっと、これからも続けていっていただきたいですね」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年11月24日放送)