全員“移住”でやって来た!サッカーチーム「南紀オレンジサンライズ」 労働力求める地元×サッカーしたい選手…が”マッチング“ 県3部からのJリーグを目指せ! 2022年11月17日
県外から移住者のみが集まった和歌山県の新しいサッカーチーム。地元と一体となって成長する新しいチームのカタチを取材しました。
■和歌山県外から移住で来た!…18人の選手たち
和歌山県の南紀地方を拠点に活動するサッカーチーム「南紀オレンジサンライズFC」。ことしの2月に発足し、和歌山県の社会人3部リーグに参入したばかりの新チームですが、これまでの3部リーグ戦は全勝。首位を独走しています。
チームを構成する18人の選手たちは皆、和歌山県外から移住してきました。それぞれの選手の出身は、宮城、福岡、熊本とさまざまです。
なぜ、年齢も出身地もバラバラな選手たちが、南紀地方に集まったのでしょうか。
このチームの副キャプテンを務める長崎県出身の古賀洋之選手(25歳)。大学時代までサッカーに打ち込みましたが、チームは地区大会止まりで、卒業後は北九州市でサラリーマンとして働いていました。
【副キャプテン 古賀洋之選手】
「社会人になってサラリーマンとして働いていく中で、サッカーする時間が足りないなっていう風に…サッカー中心の生活をしたいなということで、ゼロからチームとして活動できるというのが一番自分の中でわくわくしたというか、そこが決め手になりましたね」
■移住の選手には“地元企業”紹介 昼間も練習可能
県外から移住してきた選手たちには、それぞれ地元の企業が勤務先として紹介されます。
職場はチームと連携しているため、平日の昼間も練習できる恵まれた環境が整っています。
古賀選手は、地元特産の梅を加工・販売する会社を紹介され、紀州梅干館(みなべ町)で働いています。
その売り場の一角には、古賀選手の背番号「28」のユニフォームが飾られ、「オレンジサンライズ」のタオルやTシャツが売られていました。
【株式会社ウメタ 岡﨑健志課長】
「今朝も(タオルとTシャツ)買ってくれたよな」
一緒に働いている上司の岡崎さんは、古賀選手の働きぶりについて…
【株式会社ウメタ 岡﨑健志課長】
「すごく素晴らしいです。真面目ですし、まだまだ若いですから、体もバリバリ動きますので、仕事の覚えもすごく早いですし、申し分ない。やっぱりこの辺り田舎だから若い人が結構不足していますので、その点で若い力入って来て頂けるので、すごくありがたい」
この地方にサッカーチームが作られたきっかけは、労働者不足です。南紀地方は人口減少が止まらず、常に働き手を求めています。サッカーをしたい選手たちと労働力の欲しい地元。両者がWin-Winの関係になっているのが「オレンジサンライズ」です。
【南紀オレンジサンライズFC 森永純平代表】
「ちょっと人口が減ってしまっているような地域に、移住というかたちで、そこで人手不足の、例えば農業だったりとか、人手不足の企業さんのところで、仕事をさせてもらいながらサッカーで上を目指していく」
■今は“一番下”のサッカーリーグ…いつかは夢のJリーグ参入へ!
「オレンジサンライズ」が所属するリーグは、日本のサッカーリーグの中で最も下にあたる「県」のサッカーリーグ。その中でも最も下の3部リーグです。ここから関西サッカーリーグ、JFLと一歩ずつ階段を上っていかなければなりません。道のりは遠いものの、目指すは…和歌山県初のJリーグ参入です!
福岡県出身のチーム最年長39歳の奥田宗幸選手は、就労支援事務所で働いています。これまで単身アルゼンチンに渡りサッカーを学ぶなど、サッカーと共に生きてきました。
そんな奥田選手が暮らすのは、元々旅館だった建物を改築して建てられた選手寮。都道府県3部のリーグのチームでは異例の恵まれた環境も、選手たちが集まる理由の1つになっています。
仕事を終えて、奥田選手が寮に帰ってきました。一緒に寮で暮らす選手たちが台所に集まって、鍋を囲んでいます。ピッチの外でもコミュニケーションを取り、選手たちの関係が築かれています。
寮の中心にいる最年長も覚悟を持ってこの町に移り住みました。
【奥田宗幸選手】
「僕としては移住して、このクラブに関わる仕事をしながら、この町で暮らしていこうかなと思って来ました。その地域の方に密着して、地域の方から喜んでもらえるようなクラブにしていく。サッカーしている以上は、クラブ自身は上のカテゴリーで、もっともっと上のカテゴリーでやりたい。それも両立できれば一番いいのかなって思っています」
■優勝決めて、2部昇格なるか? 地域と共に目指す夢
これまで全勝でリーグ首位を独走する「オレンジサンライズ」。11月13日の試合に引き分け以上で優勝すれば、来期の2部リーグへの昇格が決まります。
雨が降っているにもかかわらず、およそ20人のサポーターが応援に駆けつけました。コンサート会場に持っていくような手作りのうちわなど応援グッズに、優勝祈願のネイルまで…
いよいよ、2部リーグ昇格を懸けた試合が始まりました。
雨の中でも、次々とゴールを決める「オレンジサンライズ」の選手たち。
見事、和歌山県3部リーグ優勝!
2部昇格が決まり、和歌山初の「Jリーグ参入」という目標への階段を一つ登りました。
【古賀洋之選手】
「優勝して、やっと一つサッカーで結果が出た部分なのでまだまだですけど、ここからだなと。好きでやっているんですけど、周りの人たちのサポートとかついてきているんで、サッカーだけじゃなくて地域貢献とか仕事の方でも貢献して、もっとこの町をサッカーで盛り上げていきたい」
【奥田宗幸選手】
「来年は2部になってもっともっと難しい試合になると思う。メンバーも変わる。でも優勝しないと、応援してくれている人の笑顔は見られないのでそれに向けて頑張りたいと思います」
地元を愛し、地元から愛される「南紀オレンジサンライズFC」。南紀を照らすオレンジの陽は上り続けます。
(2022年11月15日放送)