大阪ミナミの週末イベントでスマホ利用のマーケティング調査 「滞在時間で売上はUP?」 官民連携の壮大な実験が進む 「道路を広場に」の街づくりが世界のトレンド 2022年11月14日
11月12日、大阪ミナミで「道頓堀リバーフェスティバル」が開かれました。
【吉村洋文 大阪府知事】
「ミナミといえば大阪の顔です。ミナミが元気になるっちゅうことは、大阪が元気になる。素晴らしい大阪の魅力をどんどん高めていきましょう」
大型ステージが設置されたなんば駅前広場を中心に、街全体がお祭り会場となったイベント。実はその裏で、大阪の未来を占う、官民連携の壮大な実験が行われていました。
■滞在時間を増やせば売り上げも上がる? 官民連携の大実験
地域活性化を目的に、2012年から行われているイベント「道頓堀リバーフェスティバル」。祭りが開かれる2日前、会場となる場所には、難しい議論をする人たちの姿がありました。
【大阪市建設局 小松靖朋課長】
「大阪市内以外の方がどのぐらい来ているのか、そういう分析もしたいと思います」
【中央区商店会連合会 千田忠司会長】
「それ出せる?アンケート配る?ここらで」
【大阪市建設局 小松課長】
「いや、スマホでデータを取れるんです」
集まっていたのは、地元の商店街や大阪市の担当者たち。ミナミ一体で行われるこの祭りを利用して、“あるデータ”を検証しようとしているのです。
【ミナミ御堂筋の会 絹原一寛さん】
「回遊を促したり、滞在時間を長くすることが消費につながるというデータが出ているので。それで実際どれぐらい(効果が)出るのかウォッチしたり、滞在時間がどれぐらい変わるのか、データを取ってみたい」
彼らが注目したのは、広告会社が行った、「消費」と「行動」の関係を調べる調査。駅ビル利用者を対象に聞き取りしたところ、買い物意欲があって滞在時間が短い人よりも、意欲がなくても滞在時間が長い人の方が、購入金額が高かったのです。
この調査結果から、「ミナミでの滞在時間が増えれば売り上げもアップする」と仮説を立てましたが、ミナミにはある課題が…
【大阪市建設局 小松課長】
「なんばの駅前ですが、赤いところに人が偏っている。白いところに人が行かれてないと」
課題は“駅前だけ”に人が集まり、町全体に人流が行きわたらないこと。駅前から歩いて5分ほどの場所でも、平日は人の気配がなくガランとしています。
【ピザ店 店主】
「基本的にこの通りは、ミナミのエリアや電気街と比べたら人は少ないですね。そんなに恩恵を受けない立地ではある。だから店のファンを作らないと、フラッと立ち寄ってもらえるお客さんがいなくて…」
街全体に人を巡らせて滞在時間を増やせば、売り上げは上がるのでしょうか。行政と地元商店街がタッグを組んだ大実験が始まりました。
■イベント当日 来場者は?
迎えた当日、メイン会場となったのは3年後に歩行者天国化される「なんば駅前広場」。広々とした空間は、人でいっぱいになりました。
駅前からの人の流れを作ろうと、湊町リバープレイスや道頓堀川などに設置した12個の会場も大盛況となりました。
【来場者は…】
「広々としてるし、ご飯もあるし。お祭りとかも減ってるから、やっぱりみんなで遊べるのは喜んでますね」
また、ミナミの名所15カ所に設置されたスタンプラリーも、人々が歩き回るきっかけとなりました。
【来場者は…】
「久しぶりに黒門市場の中に行きました。あんまりコロナのとき行けてなかった。(Q:使うお金は増えました?)いや、今のところはまだ。今手に持ったら大変やから、帰りにいろいろ買って帰ろうかなと」
コロナ前に戻ったかのようににぎわったミナミの街。課題となっていた駅前以外の場所では…
【ピザ店 店主】
「いつもの土日と比べたら、人通りが多くなったと体感してます。お店の前を通っていただいたときに、『こんなお店があったんだ』と知ってもらえるチャンスではあるので。人通りが多くなるのは、店としてはすごいうれしいです」
夕方になっても、ミナミの街からにぎわいが消えることはありませんでした。
【大阪市建設局 小松課長】
「やっぱりここの場所のポテンシャルはすごいですね」
【ミナミ御堂筋の会 絹原さん】
「肌感としては、圧倒的に消費が増えているんじゃないかという気はしますね。すごい人の流れも多くなってますし。これから検証しますけど、どういう結果になるのかなと」
【戎橋筋商店街振興組合 山本英夫 事務局長】
「久々に街らしく、ミナミらしくなったなと。いろんな事やってきたけど、全然うまくいかなかったんですね。これを『仕組み』にしていく、『持続』していくことが大事だと思います」
■「広場化」の流れは世界でも
2025年に歩行者天国となることが決まっているなんば駅前。駅前広場だけでなく、ミナミ全体に人の流れを作ろうという実験は、スタンプラリーなどの効果もあってか、普段は人通りの少ないエリアもにぎわせたようです。
こういった「広場化」を核とした街づくりが、今、世界のトレンドになっているといいます。
アメリカ・ニューヨーク市のタイムズスクエアは、車道を広場に整備したことで人の往来が増え、歩行者数が35パーセント増える結果になったということです。
ニューヨーク市では2008年以降、65カ所を広場化する計画が進められ、これによって売り上げが47パーセント増えた地域もあるそうです。
大阪では官民が連携して挑んだ“大実験”。年明けごろに出る検証結果が、ミナミの、大阪の街づくりを変える、大きなきっかけになるかもしれません。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年11月14日放送)