ウクライナ情勢が、重大な局面を迎えています。
ロシアの国防相は11月9日、ロシアが一方的に併合したウクライナ南部ヘルソン州の州都・ヘルソン市を含む地域からの撤退を命じました。
2022年2月にヘルソン州に侵攻したロシア軍。3月には州の制圧を発表していました。
ウクライナは夏ごろから反転攻勢を強め、ヘルソン州でも次々と地域を奪還。対するロシアは9月、ヘルソン州を含む4州で強制的な住民投票を実施。賛成多数として、一方的に併合を宣言しました。
そんな中での突然の撤退命令に、ウクライナ側では「罠ではないか」という見方もあるようです。
あっさり引いたかに見えるロシア。裏には何かの思惑があるのでしょうか。
ロシアが一部撤退を表明したヘルソン州は、ウクライナ情勢において大きなカギを握る地域とされています。
ロシア軍は現在、ウクライナ南東のルハンスク州・ドネツク州・ザポリージャ州・ヘルソン州の、地図上に赤で記された地域を支配しています。
地図上の明るい緑がウクライナが反撃に出ている地域で、ヘルソン市は、ウクライナ軍が取り返しつつある地域の最前線です。
また、ロシア側が2014年から実効支配しているクリミア半島につながる拠点として、多くの専門家が重要視しています。
ロシア軍は今回、ヘルソン市に隣接するドニプロ川の南東に撤退しました。ウクライナ側ではこの撤退を罠と見る専門家もいますが、ロシア政治を専門とする慶応義塾大学の廣瀬陽子教授は、「撤退表明は士気が大きく下がるのでフェイクとは考えにくい。ロシアが弱っていることは間違いない」という見解です。
関西テレビの神崎デスクは、ロシア軍の補給の問題を指摘します。
【神崎デスク】
「ヘルソン市は、ロシア側からはドニプロ川を渡った向こう側にありました。一部の橋がなくなり、補給がかなり厳しかったという話もあります。いったんドニプロ川の南東に兵を引き、態勢を立て直してウクライナ軍を迎え撃ちたいという意図があるのではと言われています。川はある種の防御線になりますので」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年11月10日放送)