全国的に増加傾向にある新型コロナウイルス。大阪府は独自基準「大阪モデル」を、警戒を示す「黄色」に引き上げました。
予想される第8波と発熱外来ひっ迫の可能性を、関西医科大学付属病院の宮下修行教授に聞きます。
■第8波へ突入?
11月8日の感染者は全国で8万1401人と、長崎県以外は全て、前の週に比べて多くなっています。また北海道では9000人を超え、過去最多となりました。
増加の理由について宮下教授は、「気温が下がった」「人流が増えた」「感染対策がおろそかになった」ことを指摘します。
【宮下教授】
「まず、気温が低いとウイルスは活発化します。また気温が下がることによって、寒気が不十分になってしまう。これで感染しやすい状況が整いました。また、ウイルスは、勝手に飛んでいくわけではありません。生体の中で生き続けますので、人が運んでいくんです。人流が増えると、残念ながらウイルスは運ばれてしまいます」
――Q:第7波はBA.5でしたが、変異株が入ったわけではなく、同じウイルスで感染者が増えている状況ですか?
「変異株は確認されている程度で、そんなに増えてはいません。95パーセント以上は、まだBA.5です」
今後、第8波がどうなるかについて、2つのケースを考えていきます。
<ケース1・現在と同じBA.5が主流の場合>
比較的緩やかな波に。感染対策を続ければ、第7波のリバウンド程度か
「私たちはBA.5をいったん経験しました。BA.5の特徴は、無症候感染が多いこと。知らない間に感染している人がいるので、われわれはある程度の免疫を持っています。これまでの感染対策をしっかりすれば、乗り切ることは容易です」
<ケース2・オミクロン亜種が主流の場合>
XBBやBQ.1.1、BA2.3.20に置き換わった場合、第7波レベルに拡大も
「シンガポールやヨーロッパでは置き換わりが進みました。これらの株は感染力が増しています。置き換わりとは、感染力の高い、生き残りやすい方が残るということです。第7波と同じくらいの波が来る可能性が高くなります」
――Q:強毒化しているというデータはないんですか?
「はい、これらの変異株で入院患者が増えたという報告は、他のところからはありません。インフルエンザのように、ウイルスの過程で弱毒化している途中ではという見方もあります。楽観的ではあるんですけど」
■発熱外来のひっ迫は
11月8日、大阪府は対策本部会議で、第8波の“最悪”を想定しました。
新型コロナで1日約31000人の陽性、さらに季節性インフルエンザが同時流行して1日約23,000人の陽性となった場合、合計で約54,000人となります。その中で、1日約47,000人が受診するという見込みです。
しかし、大阪の発熱外来の現状は、診療所で約3割、病院では約7割の指定にとどまっています。
――Q:なぜ発熱外来は増やせないんですか?
「発熱外来には、ゾーニングができていることと、換気のいい場所が必要です。ゾーニングができていれば、人に感染がうつらず、ウイルスがそこにとどまらず、他の外来患者に迷惑がかかりません。発熱外来が増えない一番の理由は、ゾーニングができるかできないか。また日本では、眼科や精神科など、そもそも感染症に弱いところが多いというのもあると思います」
――Q:発熱外来に行けないことを想定して、宮下教授は「検査キット」と「解熱剤」の常備を推奨されていますね
「原因が分かれば安心はできます。コロナに感染していると分かっても、薬は現在、重症化リスクのある人にしか使えません。そうなると、解熱鎮痛剤しか方法がない。診断が自分でできるというのは、非常に大きいと思います」
――Q:検査をしてコロナが陰性なら、インフルエンザの可能性が高まりますよね。コロナが陰性なら、受け入れるクリニックは増えますか?
「おそらくそうなると思います。コロナが陰性であればインフルエンザの可能性があるので、『インフルエンザの検査をしましょう』という流れになると思います」
――Q:国は感染予防として、オミクロン対応のワクチン接種を、若い世代にも呼び掛けています。宮下教授は「子供はインフルエンザのワクチンを優先的に」という意見ですか?
「はい。インフルエンザは子供の病気です。第7波のBA.5も子供が感染しやすい。ただ、インフルエンザとコロナを比べた場合、インフルエンザの方が致死率が高い、重症化率が高いということが分かっていますので、子供にはインフルエンザのワクチンを打っていただきたい。まずインフルエンザを予防することを考えていただきたいです」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年11月9日放送)