フェリー復権へ!“車と客”と“夢“乗せて…アイデア社長と初航海に“密着” 神戸~高松結ぶ豪華新船「あおい」デビュー 瀬戸内海の『眺め』自慢、船上で讃岐うどんも食べられる 瀬戸・明石海峡「大橋」架橋の“荒波”乗り越えて 2022年10月31日
10月22日に就航したのは、神戸から小豆島、そして高松を結ぶ、フェリー「あおい」。広々とした、ゆったりとくつろげるプレミア席から瀬戸内海を一望できる足湯。さらには、香川名物さぬきうどんまで!しかし、「あおい」のすごさはこれだけはないのです。
【ジャンボフェリー・山神正義社長】
「会社の存続すら大変な状況がいっぱいありましたけど、自分たちが工夫して生き残りをかけてやっていく」
この船に隠された、フェリー復権への秘策とは?
■建造中の豪華「ジャンボフェリー」に潜入
瀬戸内海に浮かぶ生口島。この島の港に完成間近のフェリー「あおい」の姿がありました。着工からおよそ10カ月、完成間近の「あおい」の中をジャンボフェリーの山神社長が案内してくれました。
まずは、客室のうち最も豪華なプレミア席のエリアへ…
【ジャンボフェリー 山神正義社長】
「こちらがリクライニング席で、さらに3人以内のお客様は個室になれる。人気が出るような部屋だと思います」
ほかにも…
【ジャンボフェリー 山神正義社長】
「ここが浴室になっています。完全に船の壁よりも海側に出ていますので。とても開放感が味わえると思います」
次に向かったのは、社長がこの船最大のウリと話す場所!でも・・・客室ではないようです。
【ジャンボフェリー 山神正義社長】
「この車両甲板が物流のメインとなります。(前の船に比べ)車両台数が3割ほどたくさん積めるようになりました。ここが稼ぎ頭になります」
「あおい」はこのスペースを、これまでの船に比べて大幅に拡大。貨物輸送に力を入れるようになった背景には、何があったのでしょうか。
■次々と瀬戸内海に「大橋」架橋で大ピンチに…救ったのは社長の“新事業”
1969年に、神戸・高松を結ぶ航路を開設。当時、四国と本州は陸路でつながっておらず、行き来はすべて船でした。その後、1988年に瀬戸大橋、1998年に明石海峡大橋が開通されると、人々の移動は車が中心になりました。それに伴い、フェリーの需要は半分以下にまで落ち込みました。
【ジャンボフェリー 山神正義社長】
「橋が全通した途端に、一気に(売上は)ガタ減りですよね。一部各社は航路から撤退していくし。困難の連続です、先の予定も計画もない」
瀬戸内海を主戦場としていたフェリー各社は、次々と撤退を余儀なくされました。
そんな時に会社を救ったのが、当時、営業を担当していた山神社長の始めた“ある事業”でした。
【ジャンボフェリー 山神正義社長】
「集客をどうやってしようという時に“一貫輸送”というのを新しくやり始めました」
荷物の受け取りから配達まで、すべてジャンボフェリーが行う“海陸一貫輸送”。
海上部分を“無人化”することで、ドライバーの労働時間も大きく減らすことができます。流通業界に人手不足の逆風が吹く中、この事業は一気に軌道に乗り、今では売り上げ全体に占める貨物の割合は、なんと7割にのぼります。
「あおい」の就航を待ちわびているのは、ジャンボフェリーだけではありません。香川県に本社を置く建設用クレーンの国内トップメーカー「タダノ」です。
【ジャンボフェリー 山神正義社長】
「あおいに関しては、タダノ物流さんにも製品の輸送がしやすくなるという形で、対応できるような船が、新しく就航しますので」
【タダノ物流 福田均代表取締役】
「積む台数もこれから増えてくるのと、我々としては1台でも多く積めて神戸まで高松から運んで頂けるのが一番のお願い」
【ジャンボフェリー 山神正義社長】
「あおいになることで、タダノさんにも楽しみにしていただいていたら。十分にご期待に添えられると思います」
メーカーからの期待も背負う「あおい」。就航までまもなくです。
■フェリー復権へ! 車と客と“夢”乗せて…豪華新船デビュー
早朝、「あおい」に続々と貨物が運び込まれていきます。いよいよ出発の時です。この日はおよそ320人の客が乗船しました。
【デッキにいる女性客たち】
「めちゃくちゃいいですね」
「最高ですね!」
【男性客】
「明石大橋がいま、ちょうど見えて最高の気分ですね!」
明石海峡大橋の下を通過しました。
【親子連れ】
「子どもも一緒に楽しめていいです。上の子の名前が“あおい”で」
【あおいちゃん】
「楽しい…です」
【浴室に入った男性客】
「すごく気持ちいいですね。海を見ながらいい気分で入れていいなと思います」
【ジャンボフェリー 山神正義社長】
「皆さんが喜んでくれている姿を見て一安心です。積載台数が3~4割アップですから、船をいっぱいにしないといけないという責任を感じていたので…胸がいっぱいですね」
「ほんとにこれでもか、これでもかといういろいろな課題があったのですが、絶対諦めない、諦めたらそこで終わり。挑戦がずっと続きます」
数々の荒波を、乗り超えきたジャンボフェリー。これからも神戸と高松を結ぶ懸け橋となります。
(2022年10月28日放送)