「電気代」高騰で家計に大打撃 来春さらに2~3割の値上げも 一足先に冬迎えたヨーロッパ光熱費“上昇中”…フランスでは国を挙げて“省エネ”に努める 日本はどうなる? 2022年10月18日
電気料金の高止まりが続いています。岸田首相は10月17日の衆院予算委で、来年春以降、さらに2~3割の値上げが起こる可能性を示唆し、光熱費の負担を減らすための対策を「来年1月以降にできるだけ早く着手したい」と述べました。
私たちの生活は、どうなっていくのでしょうか。
■これまでにない光熱費の高騰 兵庫県は大幅な補正予算も
高騰する光熱費に、街の人は悲鳴を上げています。
【京都市在住の男性】
「先月、節約しても月4000円ぐらいアップしちゃったんで。しんどいですね、まじでしんどいです」
【大阪市在住の女性】
「シャワーも控えなきゃ、みたいな。それでちょっとでも(料金)下がるなら」
また、兵庫県庁でも…
【記者リポート】
「兵庫県では、廊下の電球を半分以上間引くなど15年以上節電を行っていますが、今年度はそれでも予算が足りなくなったということです」
兵庫県は、県立の学校や警察署などで使われる電気代が昨年度よりおよそ3割増え、今年度の予算では足りなくなりそうなことから、新たに13億4600万円を補正予算に盛り込みました。
【兵庫県財政課 中野秀樹課長】
「年度途中で補正予算まで組むということはこれまでにないので、われわれとしても想定を超える状況だと思っています。昼休みや時間外も含めて不要な(時間)消灯を進めていますが、そうした努力をしても、今回の急騰は賄いきれない」
■欧州でも光熱費「大幅上昇」 フランスでは国を挙げて“省エネ”
ロシアによるウクライナ侵攻が長引く中、火力発電などの燃料の価格高騰が、世界中に暗い影を落としています。一足早く冬を迎えつつあるヨーロッパでは、光熱費がすでに2割以上も上がった国も。
フランスでは、節電対策によってなぜか「ウエットスーツ」の売り上げが伸びたといいます。実は、これまでは一年を通して水温を保っていた屋外プールが、ガス代節約のため今年は温めることをやめ、寒さ対策で客にウエットスーツの着用を求めているのです。
さらにパリの観光名所エッフェル塔の消灯時間が早められ、その間の光の演出2回分が中止に。シャンゼリゼ通りのクリスマス・イルミネーションも、今年は期間や時間が短縮されるなど、フランスでは寒さだけでなく、観光業への影響にも直面しています。
マクロン大統領もタートルネックを着て厚着を推奨。「夜は厚手のカーテンを閉めよう」と寒さ対策を呼び掛けるなど、国を挙げて省エネに取り組んでいますが、エネルギー事情に詳しい専門家は「日本でもさほど事情は変わらない」と言います。
【ニッセイ基礎研究所 研究理事 伊藤さゆりさん】
「化石燃料を依存、輸入しなければいけないという意味では立場は同じで、日本が電力のエネルギー源としているLNG・石炭ともに高値、高止まりしやすいという状況を考えると、ある程度もう、『エネルギー化石燃料を使った電力は高いものなんだ』ということを前提にして、省エネに励まないといけない」
■日本の電気代 これからどうなる?
当面の間、続くとみられるエネルギー危機。日本の電気代も、まだ上がってしまうのでしょうか。
関西電力によると、平均的な使用量の家庭の1カ月の電気料金は、この1年4カ月で1000円以上も上昇しています。2021年1月には6355円だったものが、11月には7007円に、2022年5月には「規制上限額」の7497円に達し、その後は横ばいとなっています。
「規制上限額」というのは、利用者の負担を抑えるために、一部の契約では、燃料価格の上昇分に上限が定められているというものです。
今後について岸田首相は、来春以降の電気料金改定で、さらに2~3割値上げの可能性があると発言しました。
ニッセイ基礎研究所の伊藤さんはその理由を、「現在はこれ以上電気料金を上げられず、電力会社の採算が合わない状況。今後は燃料費の高騰を反映した新しい料金になる」からとしています。
日本に多い火力発電は、輸入した石炭や石油、天然ガスを燃やして電気を作るものです。この方法を続ける限りは、今後も同様のリスクが考えられます。
■電気料金の負担軽減へ 政府の対策は
10月中に対策を取りまとめるとしている政府は、電力会社に補助金を支給して電気料金を値下げするという方法を検討しています。しかし、そこには「電力会社の数」という大きなハードルがあります。
電力会社は全国に733社あり、それぞれが多様で複雑な料金プランを展開しているため、不公平感を生まないような仕組みを作るのが難しいのです。これについて関西テレビの神崎デスクは、「政府には補助金でガソリンの価格高騰を抑えることができたという成功体験がある。ガソリンの元売り大手は日本に3社しかなく、その下に町のガソリンスタンドがぶら下がっている。3社からの卸値が下がった分は、町のガソリンスタンド同士の価格競争もあり商品価格に反映された。ただ、電力会社は733社あるので、どうやって補助金を出すかを考える必要がある」と言います。
家計を直撃する電気代の高騰。負担を減らすため、われわれの光熱費にきちんと反映される政府補助金の「制度設計」など対策が求められます。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年10月18日放送)