“最後のだんじり”一緒に走る!だんじり女子二人の『20歳の誓い』 幼なじみと“2年越しの想い”乗せて 「成人女性は引けない」決まりのケンカ祭り・泉大津だんじり 特例“ラストラン”で街を駆ける 次の世代へつなげ 2022年10月17日
ことし、3年ぶりに、泉大津でもだんじりが走り出しました。「濱八町(はまはっちょう)」と呼ばれる8つの町のだんじりの一番の見せ場は…“かちあい”です。子孫繁栄を祈るといわれ、だんじり同士がぶつかり合うのは、全国でこの地域だけです。
綱を引く女性2人の姿がありました。「女性は18歳で祭を卒業」という決まりがある中、2人はことし二十歳。彼女たちはなぜ走るのでしょうか?
■今年、二十歳のだんじり女子 「一緒に卒業したい」…2年越しの想い
9月23日、泉大津の駅前に、全19町のだんじりが並びました。2週間後に迫る、3年ぶりの祭本番を前に気持ちが高まります。男性たちの掛け声が街に響く中、綱を引く女性たちの姿がありました。
その女性たちのうちの2人、丸谷萌恵さん、大浜未悠さん。小学校の同級生で、ことし二十歳です。オシャレなカフェでランチ。ドラマの話に花を咲かせる姿は、イマドキの学生ですが、なぜ「ケンカ祭」ともいわれる祭に参加するのでしょうか?
【丸谷萌恵さん】
「引くのが当たり前っていうか、引くよね、みたいな」
【大浜未悠さん】
「0歳からだんじりの横にはいた、みたいな感じです」
この日も、たまたま服が同じだった仲良しコンビ。だんじりの魅力を聞くと二人で同時に「かちあい」と発言しました。
【丸谷萌恵さん】
「うまく“かちあい”いった時の一体感みたいな、みんなで、『わー』みたいな声を出す瞬間は、結構楽しみです」
–Q:どういう感じか再現してもらっていい?
【丸谷萌恵さん】
「『うぇーい』みたいな」
祭が大好きな2人ですが、実は本来なら、今年は引くことができません。
江戸時代中期から始まったとされる泉大津のだんじり。当初は、男性だけのお祭りでしたが、やがて女性も参加できるようになりました。しかし、成人女性が引けないのは、今も変わっておらず、2人の町でも、18歳までという決まりです。
2人はことし二十歳になり、本来は参加できない年齢です。しかし、新型コロナの影響で、「最後のだんじり」を引けなかった女性たちに、再び「卒業」の機会が与えられました。
幼なじみなのに、今まで一度も一緒にだんじりを引いたことがない2人。「最後に一緒に引きたい」と参加を決めました。
【大浜未悠さん】
「『引かれへんのか、今年も無理なんか』みたいな。萌恵と引けない、引きたかったな、みたいな思いはありました」
【丸谷萌恵さん】
「心残りやったから、一緒に引けるんやったら引きたいなあって」
■本番前に“走り込み” 祭の歴史が“変わる“女性「卒団年齢引き上げ」へ
この日、祭本番に向け“走り込み”が行われました。本番同様、綱をつかんで走ります。
勢いあまって、こける女性も…
未悠さんも、懸命に息を荒くしながら綱を持って走っています。
【大浜未悠さん】
「本番前に綱の感覚味わっときたいなと思って、来ました。(走るときに)両手が空いてないっていうのが違いますね」
走り込みを終えた後、女性たちだけ残りました。ある大きな決断が行われようとしています。それは、女性の“卒団年齢の引き上げ”です。
【若頭会幹事長 中村啓さん】
「女の子に関しては、高校生終わったら終わりなんで。引きたい子もおるんやったら年齢もっと上げちゃえよっていう。20歳まで、22歳まで…30ぐらいまで?“男の子ばっかり引ける”っていうのもちょっと。変わってきてもいいかなと思うし」
いつまで引くかはそれぞれの判断にゆだねられることになりました。いま、祭の歴史が変わろうとしています。
■「これで卒業…」幼なじみとラストラン 泉大津名物“かちあい”も
祭前日、未悠さんの家で、女性ならではの準備が始まっていました。
【小学校の同級生 遠藤明里さん】
「本引きやしさ、気合入れようと思って」
小学校の同級生に髪を編んでもらいます。
【大浜未悠さん】
「だんだん明日、祭かっていう実感がわいてきます。締まるよな、気持ちが。誇らしくない?」
編んでもらう方も、楽ではありません…
【大浜未悠さん】
「目まっかっかや。血のぼってきた…」
4時間かけて完成させました。
【大浜未悠さん】:
「これで終わりと思って引くんで。最初から最後まで2人でちゃんと引き終わりたいと思います」
祭初日、朝の4時50分に、真っ暗な小屋の前で町のみんなが集まっていました。そして、庫屋が開き、だんじりが出てきました。
2人が綱をつかみます。未悠さんは緊張からか、自分の胸を叩いています。
とうとう2人一緒の、最初で最後のだんじりが勢いよく走り出しました。待ちに待った日。笑顔があふれます。
そして、祭初日のはじめての“かちあい”。未悠さんが引いているだんじりが力強く別のだんじりにぶつかり、周囲から大きな歓声があがります。
そして、何度も“かちあい”が続きました。だんじりに乗っている中の人たちが飛び出そうになった“かちあい”も…泉大津ならではの「見せ場」です。
本当は参加できなかったはずの「二十歳のだんじり」。綱を引いて走り抜けた4日間。2人の顔には疲れが出ていましたが、安堵の笑顔が広がっていました。
車庫にだんじりを戻す様子をずっと見つめている2人。彼女たちの「最後の祭」が終わりました。
祭の後、後輩から2人に花束の贈呈が…
【大浜未悠さん】
「4日間めっちゃ楽しかったです。二十歳も引かせてくれてありがとうございました」
【丸谷萌恵さん】
「二十歳で、引くって選んでよかったです。ありがとうございました」
2人はことしで卒団することを決めました。
一緒に引退するはずだった後輩たちでしたが、今2人のように「二十歳まで」引くことを目指しています。また来年…
(2022年10月14日放送)