HELLOカワイイ!「サンリオ展」 人気キャラクター60年の歩みを振り返る展示を大公開 “推し活”やSNS、社会貢献でも大活躍の魅力とは 2022年10月20日
10月7日から12月11日まで、京都で「サンリオ展」が開催されています。サンリオを通して「カワイイ文化」のニューノーマルを学ぶべく、吉原アナがお邪魔しました。
■サンリオが育んだ「カワイイ文化」の60年
みんな大好きキティちゃんから、シナモロールにマイメロディ、ポムポムプリン、ちょっと懐かしいハンギョドンにポチャッコまで。さまざまなサンリオキャラクターのブースがずらりと並ぶのは、京都市京セラ美術館で開催中の「サンリオ展 ニッポンのカワイイ文化60年史」です。
サンリオ展をプロデュースした高桑秀樹さんに、お話を聞きました。
【サンリオ ライセンス営業本部 高桑さん】
「サンリオは、2020年に創業60周年を迎えました。サンリオの60年というのは、日本の“カワイイ文化”の60年と言っても過言ではないと思います。“カワイイ文化”がどのように生まれ育ってきたかを、『へ~!』と言いたくなるような貴重な資料を元に展示しています」
さまざまな展示の中で、高桑さんがポイントに挙げたのは月刊誌「いちご新聞」。キャラクターの最新情報や関連グッズなどが掲載されています。
【高桑さん】
「いちご新聞は『ファンと一緒にキャラクターを育てる場所』です。1975年の創刊で、まだ携帯やネットがない時代、ファン同士の交流の場でした。いちご新聞を通じて、ファンと一緒にキャラクターを育成したんです。今で言うSNSのようなものですね」
高桑さんが「例えば、」と指したのは、リトルツインスターズ・キキララのブース。壁にはいちご新聞の17号が掲示されています。
【高桑さん】
「もともとサンリオが推していたキャラクターではなかったんです。ところがいちご新聞の表紙を飾ったとたんにファンからの問い合わせが殺到し、今では大キャラクターに成長しました。キキとララという名前もいちご新聞の中で募集して、ファンが命名したんです。いちご新聞は、サンリオと一緒にファンがキャラクターを育成する場なんです」
サンリオの“カワイイ”は、ファンによってつくられた部分も大きいよう。今のファンはどうサンリオを楽しんでいるのか、街に出て探ってみることにしました。
■人気ランキングに異変? 若者世代が求めるもの
調査にお邪魔したのは、「サンリオギフトゲート なんば戎橋店」。サンリオと言えばキティちゃん!な吉原アナには、見慣れない光景が広がっています。
【吉原アナ】
「なんですかこのキャラクター、…誰ちゃん?有名なキャラ?キティちゃんがいません…」
この日、売り場に大展開されていたのは「シナモロール」です。生誕20周年を記念してのイベントだそう。
今、サンリオの人気キャラクターのランキングに、異変が起きているといいます。吉原アナの予想は1位キティちゃん、2位マイメロディちゃん、3位クロミちゃんと、一見して盤石ですが、2022年のランキングは果たして…
【吉原アナ】
「あーやっぱりシナモロールか…え、キティちゃんが入ってない!」
【ディレクター】
「シナモンは3年連続で1位です」
【吉原アナ】
「え?キティちゃん1位じゃないの?変わってるの?世代交代してるの?」
1位シナモロール、2位ポムポムプリン、3位クロミという結果に。中でも注目は、吉原アナも唯一正解した3位のクロミちゃん。
イメージカラーはこれまでの「カワイイ」には縁遠かった「黒」。マイメロディの自称ライバルで、一見いたずらっ子っぽい見た目ですが、実は誰よりもひたむきで乙女な一面があるという世界観が、Z世代の心をつかんでいるようです。
サンリオの開発担当者はその魅力について…
【サンリオ 新キャラクター開発担当者】
「SNSの流行だとか、TikTok、Twitter、Youtubeで『こういう経緯があってかわいいよね』とか、『こういう性格だからかわいいよね』みたいなところが色濃く反映されています」
この流れを受けて、先月末にデビューした「ぺたぺたみにりあん」は、商品を出さずにSNS上だけで世界観を作る活動をしています。
SNSでファン同士が情報を共有できる時代になったことで、キャラクターの「見た目」以上に「背景」が重視されるようになっているそうです。
■サンリオで「推し活」? アイドル×カワイイはもっとかわいい!
さらに街を取材すると、サンリオがある「社会現象」を巻き起こしていました。この日、大阪城ホールで行われていたのはアイドルのコンサート。会場近くを歩くファンたちに持ち物を見せてもらうと…
【アイドルファン】
「Snow Manの渡辺翔太君が好きです。翔太君とシナモンが似てるから」
「これサンリオのカバーです。(推しの)イメージカラーが黄色なんで」
かなりの割合でサンリオグッズが。サンリオが2019年から展開している「推し活グッズ」です。
コンサートには欠かせないうちわケースに、ペンライトを入れるポーチ、さらには推しの写真を飾れるアクリルスタンドまで。
アイドルファンたちはどんなふうに使っているのか、見せてもらいました。
【アイドルファン】
「このへんはSnowManのキーホルダーの色に合わせてます」
【アイドルファン】
「深澤君のメンバーカラーです。UFOキャッチャーで6000円ぐらいかけて友達と取りました」
「チェキホルダーみたいな感じで、裏は定期入れで使ってます」
「もともとずっと前からクロミちゃんが好きだったんですけど、たまたま(推しが)付けてるのを見て、もうクロミちゃんで」
アイドルのファンたちは、思い思いの「カワイイ」で「推し活」を楽しんでいるようです。
「推し活」熱の高まりで、人気アーティストとのコラボまで。グローバルボーイズグループJO1は、メンバーそれぞれのオリジナルキャラを考案中なんだそう。
なぜ「推し活」にサンリオグッズを持つのか聞いてみたところ…
【アイドルファン】
「推しがすでにかわいいのにもう1個かわいくなるっていう、2段階でかわいさがあるのがいいと思います」
「キャラクターを応援したいっていう気持ちと推しを応援したいっていう気持ちが似てるかな」
「推し活と同レベルで、現場、こういうコンサートがない日も、サンリオショップ行ったら推し活をしているみたいで楽しいみたいな感じですね」
推しへのトキメキと似た感情が、サンリオキャラクターでも味わえる。これが、サンリオグッズが「推し活」の必需品になっている理由の1つと言えそうです。
■やっぱりキティちゃん!
残念ながら人気ランキングの上位3位には入っていませんでしたが、サンリオの代名詞といえばやっぱりキティちゃん。「サンリオ展」のキティちゃんゾーンでは、キティちゃんがこれまで社会で起こしてきたムーブメントを振り返ることができます。
1995年ごろに若い女性の間で1大ブームとなった「ピンクキルト」のシリーズ。当時は人気のあまり入手困難となりました。
さらに、世界の歌姫レディ・ガガが身に着けたキティちゃんドレスを再現したものも。
サンリオの高桑さんは、キティちゃんは「『カワイイ』を大人も身に着けていい」という考え方を広めたと言います。
【サンリオ ライセンス営業本部 高桑秀樹さん】
「ハローキティブームが起きる前は、日本でも海外でも、大人がかわいいものを持つのははばかられるような空気がありました。ただハローキティは、ファンが大人になっても持てるよう、デザインに流行をどんどん取り込んで『大人でも持てる』というものをつくりあげていった。それを海外のセレブが『キュートってとってもクール』と、全世界的に大ブームになりました。『大人がカワイイを持っていい』という概念をつくり出したんです」
社会の常識すら変えてきたキティちゃん。最近ではこんな動きも…
沖縄にあるタクシー会社「沖東交通」では、2017年から女性ドライバーを増やすべく、ハローキティとコラボ。タクシーや社内保育所にキティちゃんのラッピングをしたところ、5年で20人も女性社員が増加したそうです。
中にはわざわざキティちゃんタクシーを運転したいと入社する女性まで。
【沖東交通 城間恵 乗務員】
「キティ号ということで、やっぱり大事にします。車のことも車内清掃もしっかりしますし、(コラボタクシーでお客さまに)喜ばれる反響がドライバーに伝わって、モチベーションがすごく上がっていると思います」
また西濃運輸では、安全運転や接客サービスなどで選ばれた優良ドライバーのトラックにだけ「キティちゃんステッカー」を貼ったところ、ドライバーの不注意などで起きる事故が65%も減ったそう。
キティちゃんの持つ「カワイイ」には一体どんな力があるのでしょうか?「カワイイ」を心理学から研究する専門家に聞いてみました。
【大阪大学大学院 人間科学研究科 入戸野宏教授】
「かわいいものを見ると、一般的に人はより慎重な行動をとるようになると考えられています。これは赤ちゃんとかを守るために周りの状態により気を付けるというようになる。ハローキティというのはみんなが知っているキャラクターで、親しみやすい、安心感を感じさせるような機能がありますから、それを見た目は怖いとか、とっつきにくいものと組み合わせることで、なじみやすくなるという性質があるんじゃないかなと」
2021年の1月には、北九州市の市議会選挙のPRにキティちゃんが起用され、若者の投票率が上昇した、ということもあったそう。
60年にわたって日本の「カワイイ」をリードしてきたサンリオ。世の中を“ちょっと良くすること”にも一役買っているようです。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年10月13日放送)