2018年、兵庫県の中学校で初めて誕生した女子相撲部。これまで報道ランナーでは、1人になっても相撲を続ける谷元青空(たにもと せいら)さんを取材してきました。
そして、2022年の春、3年ぶりに女子部員が入部。その名は…谷元綺星(たにもと きらら)さん。そう、青空さんの妹です。
男子に交じり、たった1人で相撲を続ける“相撲大好き女子”の挑戦を見つめました。
■3年ぶりの女子相撲部員 男子に交じりたった1人で練習
土俵で男子に交じって稽古をしている綺星さん。
【橋本キャスター】
「どうだった稽古?」
【谷元綺星さん】
「めっちゃきつかったです」
【橋本キャスター】
「笑顔がさわやかだから、あんまりきつそうに見えない。きつかった?」
【谷元綺星さん】
「はい」
綺星さんは小学生時代、バレーボール部の副キャプテンとして、県大会優勝に貢献。
しかし、浜坂中学を卒業後も相撲を続けているお姉ちゃんの背中を追って、中学では相撲の道を選びました。
【橋本キャスター】
「綺星ちゃんにとって青空ちゃんはどんな存在?」
【谷元綺星さんの母・菜穂子さん】
「お姉ちゃんとしては?」
【谷元綺星さん】
「いやだ!」
【谷元綺星さんの母・菜穂子さん】
「相撲の先輩としては?」
【谷元綺星さん】
「相撲ではかっこいい」
【橋本キャスター】
「憧れの存在?」
つい、「はい!…あっ」と素直に答えてしまった綺星さんに対して、笑う父・健二さんと拍手をする母・菜穂子さん。
【橋本キャスター】
「そうなんや!憧れなんやー」
“お姉ちゃんみたいにかっこいい選手になりたい”とそんな思いで相撲を始めましたが、相撲部の先輩たちとは、体格が違いすぎるため、組んでの稽古ができません。
■練習相手を求め合同練習へ 最初の壁は「頭からぶつかれない」
そこで、女子と相撲を取るたことができる合同稽古に参加しました。しかし連戦連敗、小学生にすら勝つことが出来ません。実戦経験がないため、頭と頭でぶつかることが怖いのです。
【谷元綺星さん】
「怖いです、まだ。頭で当たるのは。悪いところは直して改善していって深く考えすぎないようにしたい」
次の合同稽古。そこには…姉の青空さんの姿もありました。
稽古の途中、妹を土俵に招き入れたお姉ちゃん。
お姉ちゃんの胸を借りると、不思議と、頭で当たることができます。
監督が綺星さんに声を掛けます。
【京都両洋高校 女子相撲部 高橋優毅監督】
「結局な、これ(頭でぶつかること)ができるんだよ。でも、相撲中にこれが一個もできてない。お姉ちゃんもな、当たりの練習はめちゃくちゃやってんねん。今の練習をずっとやってんねん。これが基本だから、これが大事だから」
綺星さんに土俵で頭でぶつかるコツを教える青空さん。
–Q:妹と稽古をしてどうでしたか?
【谷元青空さん】
「変な感じです。妹が相撲をしているのが」
–Q:うれしい?
【谷元青空さん】
「まあ…はい」
【谷元綺星さん】
「前よりちょっとできることが増えるように増えていることを見せるようにしたいです」
試合に向け、「がんばろう」と気合を入れる谷元姉妹。
■大緊張のデビュー戦 それでも逃げずに土俵へ
稽古を重ね迎えた綺星さんのデビュー戦。全国からおよそ200人の選手が集まりました。
大舞台に慣れているお姉ちゃんは余裕で腹ごしらえ。一方、初めて会場を目の当たりにした綺星さんは、大・大・大・緊張…。
【会場アナウンス】
「11時55分より中学生大会の競技を開始します」
中学生女子、超軽量級(体重50㎏未満)の試合が、いよいよ始まります。綺星さんは1週間で4キロも減量しました。
【橋本キャスター】
「いよいよですけど」
【母・菜穂子さん】
「めちゃめちゃ緊張、見てる方が緊張する…」
【母・菜穂子さん】
「切腹前のサムライみたいになってる!」
【橋本キャスター】
「一番姿勢いい」
【会場アナウンス】
「西・兵庫県、谷元さん」
呼び出しを受けた綺星さん、緊張した面持ちで土俵に上がります。
「手をついて、待ったなし、はっけよい!」と審判の声で、頭からぶつかりに行った綺星さん。しかし、相手の頭がより低く、懐深く入られてしまいました。そのまま押され、最後は寄り倒されて綺星さんは惨敗。でも、頭から向かっていくことはできました。
土俵の去り際、一礼すると悔しさから涙があふれました。そんな綺星さんの肩を、姉の青空さんが優しくたたきます。
観客席に戻っても、まだ涙は止まりません。両親が「よう頑張ったやん」「ええ立ち合いしとったで」と優しく声を掛けました。
【父・健二さん】
「泣けるだけ頑張ったよ」
ほろ苦いデビュー戦となりました。
【橋本キャスター】
「どうだった?」
【谷元綺星さん】
「めっちゃ悔しいです。相手のペースに飲まれて負けちゃったんで悔しいです」
【橋本キャスター】
「相撲好き度は増えた?」
【谷元綺星さん】
「また増えましたね。もっとうまくなりたいと思う気持ちが増えました」
【橋本キャスター】
「強くなれるね」
姉の青空さんは、2回戦で夏の全国チャンピオンに勝つ大金星を挙げるなどベスト16入り。綺星さんは、お姉ちゃんの、このかっこいい姿を目に焼き付けました。
【橋本キャスター】
「2勝したお姉ちゃん間近で見て?」
【谷元綺星さん】
「すごいなって思いました」
【橋本キャスター】
「全然目、合わせへんやん」
軽く綺星さんの腕を小突く青空さん。
【谷元綺星さん】
「勝つのってやっぱりすごいことなんだなと思いました」
【橋本キャスター】
「姉妹で頑張っていきたい?」
【谷元姉妹】
「はい!頑張っていきます」
初めてのデビュー戦は負けてしまいましたが、相撲への好きという気持ちが増した綺星さん。次こそは、姉妹で“優勝”!
(2022年10月10日放送)