「つなぐ心ひとつに」天理×生駒 友情の再試合 甲子園出場かけた決勝はコロナに泣いた生駒 天理からの打診で実現 高校球児たちの❝最後の夏❞ 2022年09月16日
7月28日に夏の全国高校野球 奈良大会決勝が行われました。準決勝で強豪・智弁学園高校を破るなど、破竹の勢いで勝ち上がってきた「県立生駒高校」は、夏の大会29回目の出場を目指す王者「天理高校」に挑みました。
しかし…
■生駒高校でコロナ感染者続出 メンバー12人を入れ替え決勝へ 王者・天理高校に挑む
【生駒高校・マネージャー 時田葉奈さん】
「(決勝は)体調不良で16人休んで、24人で何とか…」
「(試合は)1年生に頑張ってもらっています」
決勝の前日、新型コロナの感染者が続出した生駒高校。試合メンバー20人のうち12人が入れ替わる事態になっていました。
生駒高校は序盤から失点を許してしまい…8回が終わって、何とその差は21点。
ベストメンバーで試合できず、前日に突然、決勝に出ることになった部員たち。苦しい状況で試合に挑む選手たちの姿に、声援するマネジャーたちの目から涙がこぼれます。
無念のまま、生駒の夏が終わりました。ベンチで泣いている生駒高校の野球部員たち。決勝前日に急きょ登板が決まった2年生の浅野貴優君もがっくりうなだれます。
【浅野貴優君】
「(エースナンバーを)託された時に一気にプレッシャーがかかってしまって…堂々と投げ切ることができなかったので、その部分が悔いです」
■天理・中村監督の打診で再試合へと 生駒・北野監督「子どもたちは感謝して成長する」と喜び
9月に入っても、生駒高校のグラウンドには引退したはずの3年生の姿がありました。
決勝終了後、天理・中村監督から生駒・北野監督へ再試合の提案があり、3年生はその日に向けて、練習を重ねていたのです。
【生駒高校・北野定雄監督】
「監督インタビューがされた後に、天理高校の中村監督がベンチに来ていただいて、そこで改めて『落ち着いたらゲームをしましょうか』と言っていただいて」
「3年生がいい顔で練習している姿を見ると、ありがたい打診をいただいて、また子どもたちはこれで感謝して成長するのだなと」
チームを引っ張ってきたエース・北村晄太郎君も、決勝の舞台に立てなかった1人です。
【生駒高校エース・北村晄太郎君】
「智弁学園高校に勝った夜に寝ていたら、すごく体がだるくて。次の試合を楽しみしていたので、投げれないと分かったときはかなり落ち込みました試合を組んでくれたことはすごくありがたいです」
当時の天理高校の主将・戸井君は、甲子園出場が決まる奈良大会決勝の最終回2アウト、マウンドでチームメイトを集め、ある思いを伝えていました。
【天理高校・戸井零士前主将】
「相手に敬意というか、あまり喜ばないでそのままサッと整列しようとすぐに思って」
天理は、甲子園出場を決めてもマウンドに集まって“歓喜の輪”をしないで、静かに試合を終えました。
そんな天理のグラウンドには、特別な横断幕があります。甲子園に出場する天理へ生駒が贈ったもので、そこには、天理が掲げるテーマ“つなぐ”と、生駒が長年大切にしてきた“心ひとつ”の文字が。横断幕だけでなく、生駒高校の3年生も甲子園にかけつけ、直接エールを送りました。
【天理高校・戸井零士前主将】
「2回戦は応援にも来てくださって。何とかその思いも背負って甲子園でプレーしようと思いました」
【生駒高校エース・北村晄太郎君】
「みんなここ(甲子園)に出られなかった悔しさではなくて、純粋に天理を楽しく応援している感じでした」
■そして友情の再試合実現…今度こそ笑顔で
あの奈良県大会決勝の日からおよそ1カ月半。天理と生駒の再試合の日を迎えました。きょうは“特別な日”です。普段なら別々の試合前の練習も、きょうは一緒。ベストメンバーによる再試合がいよいよ始まります。
先発のマウンドには…生駒のエース・北村君の姿が。
天理の4番打者・内藤君を相手に三振にとると…セカンドゴロです。1塁の走者が2塁に走っていき、クロスプレー…アウト!セカンドが球をキャッチしました。仲間のファインプレーにも助けられ、初回を無失点で切り抜けます。
3回、北村君はヒットとフォアボールでピンチを迎えます…
あらん限りのストレートをはじき返され、1点を先制されます。
あの日の21点が脳裏をよぎりますが…ここは、内野ゴロに打ち取りなんとか1点でしのぎます!
力投する北村君を助けたい生駒は6回、1番・飯田君がヒットで出塁すると…打席には、決勝の舞台に立てなかった2番・矢野君!
外野の右中間を抜けるタイムリースリーベースで、同点に追いつきます!まだまだ終わりません。
打席には、これまでチームを鼓舞し続けてきた主将の熊田君。
鈍い当たりのボテボテのショートゴロですが、一塁まで全力疾走…判定はセーフ!ついに天理からリードし逆転します。
しかし…その裏。
天理にホームランを打たれ、すぐさま、同点に追いつかれます。しかし、生駒はハイタッチで祝福。そして、天理1点リードで迎えた最終回2アウト。
あの決勝の日と同じく、天理の選手がマウンドに集まりました。
【天理高校・戸井零士前主将】
「夏の県大会では、集まるのをやめようと言ったのですけど、今回は全力勝負ができたので、最後は全員で集まって喜ぼうと伝えました」
最後の1球、生駒の打者が打った打球は浅いセンターフライに。
ボールが天理の選手のグラブに吸い込まれゲームセット。
マウンドに集り、喜ぶ天理高校の選手たち。
そこで、生駒のエース・北村君がベンチで「行こう」と誘い、生駒の選手たちも天理の“歓喜の輪”に加わりました。
生駒と天理。特別な試合は、はじける笑顔で幕を下ろしました。
(2022年9月14日放送)