「新しい魚を食べるって楽しい」 年々減少する漁獲量 これまでは食べなかった魚をおいしく食べるには くら寿司では「キャベツ生活」で臭みを取ったニザダイがお目見え 2022年09月14日
海洋資源を守るため、これまでは捨てていた魚をおいしく食べようという試みが広がっています。
■くら寿司が実験を経て全国へ展開 一石三鳥の取り組み
回転寿司チェーンのくら寿司で、新しい魚が登場します。
【記者リポート】
「あ!こちらですね。見慣れない名前です。『キャベツニザダイ』」
つやっと脂がのった白身魚。くら寿司が9月16日に発売する新メニュー「キャベツニザダイ」です。
「ニザダイ」はスズキの仲間で、西日本でよく獲れるのですが、実は「厄介者」。海藻を主食とするため身には独特の臭みがあり、さらに、ほかの魚が産卵に使う海藻まで食べ荒らしてしまうことから、駆除の対象となっているのです。
そんなニザダイが、なぜくら寿司のメニューになったかというと…
【くら寿司 広報部 小山祐一郎さん】
「駆除の対象になっているニザダイをおいしく食べることができれば、一石二鳥、一石三鳥だと思いましたので、今回実験を経て、全国へ販売という流れになりました」
商品化する上で最も厄介な“臭み”を解決するために、海藻の代わりにキャベツを食べさせました。10日間、いけすでキャベツ生活を送らせることで臭みが消え、寿司のネタとして変身を遂げるというのです。
とは言え、本当においしく食べられるようになったのでしょうか?特別に、キャベツを食べていない普通のニザダイと食べ比べてみます。雑食のため、一匹一匹身の状態が違うそうですが…
【記者リポート】
「う~ん、確かにちょっと磯の香りが強いかもしれないですね…」
さて、キャベツを与えたニザダイは…?
【記者リポート】
「ん!甘い!おいしいです。脂ものってますし、すごく食べやすいです。さっきと全然違います。すごい」
【くら寿司 広報部 小山祐一郎さん】
「海外からおいしい魚がたくさん入ってきますけれども、今一度日本の魚にもぜひ関心を持っていただいて、そうすれば漁師さんにも還元できる、日本の水産業が活性化していくことにもつながると思いますので、ぜひ皆さんにも召し上がっていただきたいと思います」
実は日本の漁業は、危機を迎えています。海水の温度が上昇したことによる海の環境の変化や魚の乱獲などによって、漁獲量が年々減少。去年は30年前の3分の1にあたる、およそ320万トンにまで落ち込んでいて、ニザダイなど今まで捨てられていた魚を有効活用しようという潮流が生まれているのです。
■「普段は食べない魚ばかりを扱う」京都のお店
京都市にある「食一(しょくいち)」では、14年前から、普段は食用として流通しない魚を全国から仕入れて卸売りしています。
【食一 田中淳士社長】
「このウロコメガレイとか。欠点が見当たらないぐらいおいしい魚なんですけど」
秋田県で獲れた「ウロコメガレイ」。しかし、販売ルートが確立されておらず、利益も出ないといった理由で市場に出ていませんでした。この会社では、ウロコメガレイを煮つけにして手軽に食べられるよう加工しています。さらに…
【食一 田中淳士社長】
「月日貝(つきひがい)っていう貝。これがもともとの貝で裏表で色が違うんですよ」
貝殻が「月」と「太陽」のような形の「月日貝」は、食べられるということが知られていません。この会社ではオイル漬けに加工しています。
その味はというと…
【記者リポート】
「見た目はほたてとそっくり、臭みも全くありません。…弾力があって、ホタテと似ていて、味もしっかりとしていてとてもおいしいです」
田中社長は、あまり食べられていない魚の魅力をこう話します。
【食一 田中淳士社長】
「出会ったことない味に出会えるっていうのはやっぱり大きいかなと思います。新しい魚を食べるって結構楽しいので、その辺を皆さんにも知っていただければうれしいなと思います」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年9月14日放送)