明るみに出た旧統一教会 “宗教2世” の苦悩 被害に遭いながらも「親を悲しませることができない」 専門家に聞く「児童虐待」と「カルト規制」今後の課題は 2022年09月08日
安倍元首相銃撃事件を機に注目された、“宗教2世”と呼ばれる方々の問題。
宗教2世の被害やカルト規制について、カルト問題に詳しい立正大学教授の西田公昭さんと、元衆院議員で弁護士の菅野志桜里さんをお迎えして、考えていきます。
――Q:宗教2世たちから、さまざまな“被害”に遭いながらも、「親を悲しませることができない…」といった苦悩の声が上がっています。この問題に長く取り組んでこられた西田教授はどう思われますか?
【西田教授】
「これまでは、児童相談所などが『児童虐待』と思っていなかったんだと思います。身体虐待、精神虐待、社会的虐待、経済的虐待、さらに性的虐待が入る場合もありますね。こういう問題なんだけど、児相からすると『信教の自由』『親権の強さ』に阻まれて、下手に口出しすると自分たちが訴えられかねない」
――Q:『親権の強さ』は通常の虐待事案でもハードルになりますが、『信教の自由』への何となくの忌避感というのは大きいのでしょうか?
「そうですね。また、一般に、虐待された側は訴えることができない。ボロボロになっているんですよ。そういう意味では周りが見つけてあげるしかないと思います」
児童虐待などの被害を生む前に、“カルト規制”などで事前にこういった事態を防ぐ必要があります。
旧統一教会は、これまでに民事裁判で問題行為を認定されています。例えば2012年の札幌地裁判決では、「宗教性などを隠して勧誘することは不正」「家族などとの交流を断絶させ『十分な金を出さないと救われない』と信仰を維持させることは不正」として約2億7800万円の賠償命令が出ており、他にもさまざまな問題行動が認定されています。
しかし、旧統一教会は今なお、宗教法人として認定を受けています。
宗教団体は日本に18万以上あり、それぞれ固定資産税やお布施などの収入を非課税とするなど、税制上の優遇措置を受けています。宗教法人法では「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」などがあれば、解散命令を出すことができますが、過去に解散を命じられたのはオウム真理教など2件のみです。
――Q:“著しく公共の福祉を害する”とありますが、解散命令がなかなか出ないのはなぜなんでしょうか?
【菅野弁護士】
「実際、刑事責任を問われた2件にしか解散命令は出ていないんです。ただ宗教法人法には『法令に違反して』とある通り、必ずしも『刑法』に限らない。旧統一教会は“正体隠しの伝道”や“高額な献金を脅し取るようなやり方”は民事上の違法行為という裁判例はあるんですが、解散命令には行き着いていないし、その前提の質問権すら行使されていない。行政の側が『政教分離』という言葉に自縛されて、やるべき仕事をやっていないという状況だと思います」
――Q:“著しく公共の福祉を害する”というのは、ふわっと表現することで、広く網をかける意図かと思ったのですが、結果、広すぎて網から抜けてしまっているということでしょうか?もう少し具体的に表記すれば変わりますか?
【菅野弁護士】
「そうですね、もう少し具体的にすることもですし、あとは、文部科学相だけでなく、他の大臣がトリガーを引けるような勧告権も考えられるかもしれません。さまざまな工夫ができると思います」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年9月8日放送)