「ディズニーランドに行くための貯金を献金に」「デートに行こうとしたら『神様が悲しむぞ』って車で追いかけられた」 旧統一教会の2世信者が語る苦悩 2022年09月08日
安倍元首相銃撃事件を機に注目された、“宗教2世”と呼ばれる人たち。親が信仰している宗教を、親と同じよう信仰していた子供たちです。当事者たちに話を聞きました。
■「普通の家庭に生まれたかった」 両親が旧統一教会信者の女性
合同結婚式で結ばれた、旧統一教会信者の両親を持つ“宗教2世”のかなさん(仮名・30代)。けがれのない「神の子」として育てられました。
【かなさん】
「一番印象に残っているのは、家族3人でディズニーランドに行きたいって。お金がないのは知ってたので、じゃあ貯金箱でためて行こうっていうことになって、一生懸命ためていた。ある時に『ちょっと話がある』と言われて、『今度献金しなきゃいけないことがあるから、このお金を使っていいか』と。すごく嫌だったので、めっちゃ泣いて。『なんでそんなことに使わなきゃいけないの?ディズニーランド行こうって言ったじゃん』ってすごい泣いた記憶があります」
高校卒業まで教会に通い、以降は関係を断っていますが、母親は今も信者で、これまでの献金額は数千万円にも上るということです。
教会の教えを守るため生活にも多くの制限があり、自由に恋愛もできませんでした。
【かなさん】
「デート行こうと思ったら親が車で追っかけてきて、『神様が悲しむぞ』ってめっちゃ叫ばれたりとかして。一般の人はサタンの世界(の子)と言われているので。2世同士、原罪がない人同士で結婚しなければいけない」
かなさんは大学進学をきっかけに親元を離れてから、教会の教えに対する違和感が確信に変わり、自由に恋愛をするようになりました。安倍元首相の銃撃事件後、母親にどんな思いで教会を信仰しているのか聞くと…
【かなさんの母親】
「私は神を中心とした家庭や国を作りたかった」
【かなさん】
「教会の教えではそんな家庭にならなかったね。お母さんの望みはかなわなかったけど、これからどうするの?」
【かなさんの母親】
「あなたがだめなら、いつか子供や孫が気付いてくれればいい」
家族よりも宗教を優先する母親に絶望しながらも、つながりは切り捨てたくない複雑な思いに悩まされています。
【かなさん】
「普通の家庭に生まれたかったなって思って、泣くこととかもすごくあったので…母を悲しませたくないっていう気持ちもすごくあります」
■宗教2世が境遇を分かち合う オンライン自助会
さまざまな宗教を脱会した2世たちが、それぞれの境遇を分かち合う場所があります。
【横道准教授】
「実際に傷ついた人がいるということを、隠すようなことがあってはいけないので」
主催するのは、京都府立大学の横道誠准教授です。母親がキリスト教系新興宗教の信者でした。
オンライン自助会では、宗教2世たちが、それぞれの悩みやつらかった経験などを語ります。
【旧統一教会2世】
「きのうの夜、強いフラッシュバックが起きてしまって。ひそかに集めていた「てれびくん(ヒーロー雑誌)」とかを(親が)コンロであぶったり庭で燃やしたり。そういうことを思い出してしまった」
【横道誠准教授】
「今の話は自分の過去のように感じて。まさに聞きながらフラッシュバックしていた状況なんですけど…思春期に毎日机回りをあさられて、『これは何だ』と尋問されて自己批判を促されたりとか」
「俗世間と関わるなと育てられ、今も普通の人間関係が築けない」
「献金などで生活が困窮して進学できず、なかなか仕事が見つからない」
宗教2世の人たちは、宗教と縁を切り時間がたったあとも過去の体験が傷となって残り、生活にも影響が出ています。この日の自助会では同じような存在を少しでも減らしたいと、2世の支援について考える場面もありました。
【仏教系宗教団体3世】
「宗教活動に熱心なあまりご飯を用意していないとか、そういうことは虐待案件として、どれだけ宗教が絡んでいても児相が入り込める状況にしてほしい。『この家から出たい』となった時に受け入れてくれるような場所があったらいいな。『親を大切に』とか『家族と話し合って』ではなくて」
児童相談所に救いを求めたいという意見も出ましたが、宗教が絡んでいる家庭と分かったとたんに行政の対応が変わってしまうケースもあると、横道准教授は話します。
【横道准教授】
「悪意があるわけではなく、どういう対応をしていいか分からないんですね。行政側が研修を開いて、『こういう問題にも対応してください、行政側もバックアップしますよ』という体制づくりが大事だと思う。私たちはずっと見放されて、存在しない問題のように扱われてきたので、社会問題として認知されて定着すると、いろんな対応が行政からも民間からも出てくるのではないかと思います」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年9月8日放送)