「もう学校に行きたくない」は“ギリギリ”状態の場合も 休み明けに増える『子供のSOS』 高止まりする子供の自殺者数 孤立しないよう温かく寄り添って…“チャット”で対応の相談窓口も 2022年08月31日
夏休みが終わり、新学期が始まります。この時期に増えるのが、「子供のSOS」です。悩みを抱える子供たちに、何をしてあげればいいのでしょうか。
大阪府豊中市と兵庫県尼崎市を結ぶ、猪名川の歩道橋。2022年3月の夕方、10代の少女がこの橋から飛び降りようとしていました。そこに散歩で通りかかったのが、近所に住む小畑綾子さん(86)と市原鈴枝さん(87)です。
【小畑さん】
「(柵の)向こう側に立ってて、足ここに出してて…手離したら落ちちゃいますよね。とにかく『うぅ~っ』て震えてはったから…」
その時小畑さんは、自分が10代の時に戦争で家族を失って苦労した経験を話し、少女を説得したと言います。
【小畑さん】
「本人は死ぬぐらいの決心で来たんでしょうけど、それを乗り越えて辛抱すれば、もっともっと人間大きくなれるから『頑張んなさい』って」
その後、少女は駆けつけた警察に無事保護され、小畑さんたちは警察から感謝状を贈られました。
【市原さん】
「(その後)どないなってはるかね。成長してはるか…」
【小畑さん】
「自分で幸せやって思えば幸せ、苦労と思えば苦労。自分の考え方です。だから苦労したほど分かるんです。みんなそうですよ。ね、頑張りましょう」
子供の自殺者数は、新型コロナの感染が広がった2020年は年間499人で過去最多、2021年もそれに次いで473人と、高止まりしています。
【加藤勝信 厚労相】(8月26日)
「10代の自殺は長期休暇明け前後に増加する傾向があるため、悩んでいる方が孤立しないよう、ぜひ温かく寄り添っていただき、またお声掛けをしていただくことをお願いしたい」
悩みを抱える子供たちの声に耳を傾けているのが、「大阪自殺防止センター」です。
【大阪自殺防止センター 北條達人理事長】
「チャットでも相談を受けていまして。こちらは12歳の方なんですけど、『死にたくなる』という相談が寄せられています」
子供たちから寄せられたチャットの相談には、「何も考えられないくらい辛いです。死にたいです」「褒めて貰えない」「生きるのが疲れたんです」といった言葉が並びます。
子供たちは、相談員の大人と話す電話よりチャットの方が相談しやすいと言います。
【大阪自殺防止センター 北條達人 理事長】
「自殺のサイン、しんどくなっているサインというのは、基本的にとても気が付きにくいものなんだという前提を持って。だからこそ、少しの変化でも、気になったら声を掛けてもらいたい」
相談する場所以外に必要なのが、学校に行けない子供たちの居場所です。「NPO法人ここ」は、学習支援などを行うフリースクール。“不登校”になった小学生から高校生まで、26人が通っています。ここに来た理由は、さまざま。
【小学6年生】
「3年生の冬休みの終わりにちょっと行きたくないなと思ったから、自由な時間も欲しいなと思ったから。その自由な時間があったのが、ここ」
【中学2年生】
「元々私立の中学校に行っていたんですけど、そこでいろいろトラブルがあって、公立の方に行ってみたけど、ちょっと違和感があって。ここに来てみてすごく楽しかったので、入ることにしました」
長い休み明けはどんな気持ちになるのか、聞いてみると…
【中学3年生】
「(休み明けに)急に学校に行くってなって、糸がプチっと切れたことはある。その時は頑張って毎日朝から行くというのを繰り返してたので、ストレスがたまって、疲れて…」
こちらのフリースクールでは、例年9月下旬から相談が増えるといいます。
【NPO法人「ここ」 馬場しずか 副理事長】
「だいたい(夏休み明け)2~3週間とか1カ月がたって、学校はチャレンジしたけど無理やったから、フリースクールに行くという。多分諦めがつくのが、それぐらい。(親子が)素直にお互いに話せたらいいなと思います。『こういう理由でお父さん、お母さんは行ってほしいと思ってるけど、あなたはどう思う?』みたいな会話ができるといいな」
夏休みが終わり、新学期がスタートします。子供たちが悩みを抱えやすいこの時期、最悪な事態を未然に防ぐため、“子供たちからのSOS”に気付く必要があります。
いろいろな理由があって不登校になった子供たちに学習支援を行う「フリースクールここ」の三科元明理事長は、子供たちのこういった行動に注意してほしいと話します。
【頭痛、腹痛を訴える】
→症状が心身のストレスから来ている可能性
【歯磨きなど身だしなみを整えない】
→無気力になっている可能性
【「死にたい」などネガティブな言葉をネットで検索】
→本当に思い悩んでいる可能性があるので、特に注意が必要
また子供は、「心配をかけたくない」という思いから、親への相談をためらいます。「もう学校に行きたくない」と言ってきた時点で、相当ギリギリの状態だと捉えてください。「行きなさい」と怒ったりせず、まずは子供の気持ちに共感して、話をじっくり丁寧に聞いてあげることが大事だということです。
悩みを抱えている人は、インターネットや電話で相談することができます。
【WEBサイト】「あなたのいばしょ(NPO法人)」
・匿名のチャット形式
・24時間365日、無料で対応
・国内外の日本人スタッフ500人超が対応
(深夜や早朝の相談が多いため、時差を利用していつでもサポートできるような体制に)
・設立から2年で約29万件の相談を受け付け
【電話】「24時間子供SOSダイヤル」
・0120-0-78310
・文科省が年中無休で相談を受け付け
・24時間365日対応
どちらの窓口も、子供だけでなく保護者も相談できます。悩みを抱えている人は、ためらわずに相談してください。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年8月31日放送)