“走るホテル”豪華寝台列車『トワイライトエクスプレス瑞風』 2年半ぶり「食堂車」再開で完全復活へ! 非日常な空間で上質なサービス提供したい 若きクルーの“猛特訓”の日々に密着! 2022年08月11日
5年前に運行を始めたJR西日本の豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風」。
一流シェフが監修した食事を楽しめる「食堂車」が人気でしたが、新型コロナ感染防止のため、2年半の間、休止となり、“部屋食”のスタイルになっていました。
しかし、9月にようやく再開へ。
その日に向けて、猛特訓の日々を過ごす若きクルーの姿を追いました。
■豪華寝台列車『瑞風』のシンボル「食堂車」が休止に… そんな中、採用の新人クルーは「空」から「陸」へ志望を変えた21歳
深い緑に、ゴールドがあしらわれた車体。
JR西日本の豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風」です。
1泊38万5000円からという特別な旅を演出する列車の呼び名は“走るホテル”。
運行が始まった5年前から、乗車するには常に抽選が必要なほどで、人気が衰えることはありません。
しかし…憧れの列車の”シンボル”は、いまはバックヤードとして鳴りを潜めています。
瑞風の誇る「食堂車」。
新型コロナ感染防止の観点から、この2年半、食堂車は休止し、部屋で食事をするスタイルでの運行を続けてきました。
そんな、コロナによる影響まっただ中の2021年、瑞風クルーになった女性がいます。
酒寄優美さん、21歳。
乗務を始めてまもなく1年です。
乗客の”特別な瞬間”にも立ち会ってきました。
【瑞風サービスクルー 酒寄優美さん】
「プロポーズをされるお客様がいらっしゃって。成功させたいという緊張感もあって、乗務して、無事に…プロポーズ成功されて。終わってからもお手紙をいただいて」
はじけるような素敵な笑顔が印象的な酒寄さん。
実は元々、飛行機の客室乗務員を目指して専門学校に通っていました。
【瑞風サービスクルー 酒寄さん】
「コロナ禍で募集がなくなってしまったときに、自分が働く軸『なんで客室乗務員になりたかったのか』を考えたときに、お客様と長い間、限られた空間の中で喜んでいただくサービスをするというところで」
空から陸へ志望を変えた酒寄さんですが、今ではすっかり「瑞風」に魅了されています。
【瑞風サービスクルー 酒寄さん】
「沿線の方々が手を振ってくださるのを見て、私も『ああ、クルーになってよかったな』って」
同期の瑞風クルーの経歴も様々です。
【酒寄さんの同期クルー】
「新幹線のパーサー(車内販売)してました。ここに来る前は、新幹線のサービスが止まっていて、2~3カ月間くらいは自宅待機していました」
■新型コロナで苦境の鉄道界 “乗ること”目的の『瑞風』への期待…そして、特別な空間「食堂車」
新型コロナの影響は鉄道業界にも。
鉄道の利用客数は完全に戻らないとみているJR西日本は、”乗ること”自体が目的となり得る瑞風こそが、これからの時代を引っ張る存在になると期待しています。
7月上旬、食堂車にクルーが集まっていました。
9月から、食堂車の再開に踏み切ることになったのです。
食器の準備などに大忙しです。
この空間が乗客にとって”特別”であることを、先輩たちは知っています。
【瑞風シニアクルー 大壁紀代さん】
「ドレスアップされるんです。お着物はもちろんいらっしゃいますし、タキシードで来られる紳士の方とかいらっしゃるので」
【瑞風 尾﨑勲支配人】
「憧れの列車であり、地域活性の力になれる列車であるということをいつも考えながら乗っていけたらなと思っています」
■若きクルー はじめての食堂車“サービス”に向け 先輩たちが「おもてなし」指導
沿線の期待を背負った、本格始動。
2年半ぶりに乗客を迎える準備に入ります。
ここからは、食堂車を担当したことのないクルーの特訓です。
とはいえ、1人で部屋食を担ってきた酒寄さん、これまでとそう勝手は変わらないのでは…
【酒寄さんの同期クルー】
「ペアリングってなったときに目を合わせて、私に。私ドリンク持っていくから」
食堂車では、チームでいくつものテーブルを見る“ワザ”が必要です。
酒寄さんは、互いの分担について同期クルーと話しますが、随分と緊張の様子…
【瑞風サービスクルー 酒寄さん】
「お料理とご一緒に、ペアリングドリンクご用意しておりますが、ご用意してもよろしいでしょうか?」
さすが、上質な旅を提供するプロのおもてなしです。
同期クルーとのアイコンタクトもバッチリ。
ここで、料理の出し方について指導が。
【瑞風 木村暢良支配人】
「はい、ストップ。料理は、2人で持っていって、2人できれいにお辞儀して、そろえて出しましょう」
クルー同士の協力は初めての経験。
同じ料理でも、サーブの仕方が違います。
【瑞風サービスクルー 酒寄さん】
「まだレストラン(食堂車)の経験がないので、不安…とちょっと楽しみがありますね。お食事のナフキンも私たちが準備するんですけど、裏というか、出会う前段階からお客様を迎える準備を始めている」
困難な時代だからこそ、きらびやかな別世界へいざないたい。
その思いが、クルーたちを突き動かします。
■いよいよ訓練大詰め…実際に瑞風に乗って「2泊3日」実車訓練 乗客役は社員
訓練は大詰めを迎えました。
2泊3日、乗客役を社員が務め、瑞風を実際に走らせて行う貴重な実車訓練です。
いよいよ、酒寄さんの出番。
本番さながらの訓練がスタートです。
マスク越しでも笑顔は光っています。
列車が揺れて、人にぶつかりそうになりヒヤリ。
限られたスペースの中で、常に背後を意識してサービスしなければなりません。
重たい器を慎重に運び、さあ、クルー2人並んで…あれ?
2人同時に出すはずが…1人で先に料理を出してしまいました。
焦りが出てしまったのでしょうか。
ペアのクルーを置いてけぼりにしてしまいました。
訓練の後、すぐに集まって全員で反省会です。
【瑞風シニアクルー 大壁紀代さん】
「実際どうだった?できたところ、できなかったところ」
【瑞風サービスクルー 酒寄さん】
「うまくできたところは…ない」
【酒寄さんの先輩クルー】
「そうかな?すごくニコニコ楽しそうに料理説明していただいたので」
【瑞風シニアクルー 大壁紀代さん】
「たくさん(食器を)下げてくださってたよ、洗い場の方に。ああいうことも気が付いてやってくださってたなと思いましたよ。いいところもいっぱいある」
酒寄さんの目には、こらえ切れない涙が浮かびます。
【瑞風シニアクルー 大壁紀代さん】
「2人で一緒に出て、ペコリってして、料理を出す。息を合わせていく。次は絶対できるから。次の目標にされてもいいかなと思いました。まずはお疲れさま!頑張りましたね」
【瑞風サービスクルー 酒寄さん】
「もう10回くらい心折れてました。分かっているのに、動けていない自分が、すごい悔しい…くじけそうですけど、この思いがあるからこそ、諦められないというか。皆さんとお会いする時には、一人前のクルーとして、成長したなって気づいていただけるようなサービスをしていきたいなと思います」
新しい時代への希望を乗せて。
再始動はもうすぐです。
(2022年8月9日放送)