赤字ローカル線に乗ってみた「その2・JR小浜線」~記者が行く“小さな旅”~ JR西・公表の赤字路線に実際に乗って取材 「車窓」からは日本海の景色 古い木造駅舎利用のレトロカフェ そして「おかえり」出迎えの駅ナカ理髪店 2022年08月05日
存続か、廃止か…今、岐路に立つローカル線。
JR西日本は、大きな赤字を抱える路線について初めて収支を公表しました。
赤字ローカル線は、どんなところを走っているのか?
そして“存続”させるには、何が必要なのか?
記者たちが実際に「赤字ローカル線」に乗って取材します。
■京都府北部と福井県を結ぶ全線開通100周年のJR小浜線 赤字続くも「新幹線」がやってくる
第2回は、京都府北部の東舞鶴駅と福井県の敦賀駅を結ぶJR小浜線。
全長84.3キロの路線です。
2022年に全線開通100周年を迎える小浜線ですが1日の1キロあたりの乗客は991人。赤字額は年間で18億1000万円に…
今回の“小さな旅”をするのは藤井凌記者、小浜線の福井側の入り口、JR敦賀駅から出発しました。
早速、乗車してみると…意外に利用客は多い印象です。
「車窓」からの眺めは抜群、電車はきれいな日本海を望みながら次の駅へ。
すると…続々と高校生が乗車してきました。
夏休みの午前、車内は部活動に向かう生徒たちでいっぱいになりました。
小浜線は2021年、通勤・通学の時間を避け、最大で2割の減便を実施し、昼間の運行本数は、1時間に1本程度です。
通学に利用する高校生たちに、話を聞きました。
–Q:減便になったと思うのですけど?
【女子高生】
「帰るときに1回逃してしまうと、2時間くらい待たないといけないので」
–Q:小浜線がなくなってしまうのではと言われていますが?
【男子高校生】
「(小浜線が廃線になると)不便になる人は多いと思いますし、(本数)を減らしてもいいから少しは残して欲しいなと思います」
生徒たちが駅で降りていくと、車内は途端に“ガラガラ”になりました。
小浜線は、沿線の人口減少に加えて、舞鶴若狭自動車道が全線開通したことにより利用客がさらに減りました。
と、ここまでは多くの赤字ローカル線が抱える課題なのですが…
実は、ひとつ明るい話題が!
2年後、小浜線が接続する敦賀駅まで北陸新幹線がやってくるのです!
JR西日本と小浜線の沿線自治体はこのチャンスを生かして、観光業で活性化を図ろうと“タッグ”を組んで取り組んでいます。
■途中下車「松尾寺駅」…木造駅舎の憩いカフェ 取り壊し予定だった!?
藤井記者が途中下車したのは、京都・舞鶴市の「松尾寺駅」です。
一日あたりの駅の利用者は68人(2019年)です。
【藤井記者リポート】
「見て下さい、こちらの駅舎、木造です。今どき珍しいですね。中に店があるようですね」
藤井記者が歩いていくと、そこには・・・レトロなカフェが!
元々取り壊す予定だった駅舎を利用、NPO法人が無償で譲り受け、オープンしました。
地域住民や観光客の憩いの場になっていて、この日は、平日にもかかわらず満席でした。
【藤井記者リポート】
「(カフェの店内見ながら)木造の駅舎ですごく味がありますよね」
お客さんにお話を聞きました。
【女性客】
「もったいないですよね、この駅を壊すなんて。すごく素敵なお店になって、私はすごく良かったなと思います」
【NPO法人「駅舎と共にいつまでも」 福村暉史理事長】
「この駅の活性化をどう図っていくかが大きな課題だと思っていますので。JR (小浜線)の活性化のために頑張っていきたい」
■駅の中に理髪店!? 「おかえり」と出迎える店長兼“駅長” 髪も切符も「切ってます」
続いて藤井記者が降りたのは、1日120人あまりが利用する福井・小浜市の「加斗駅」です。
【藤井記者リポート】
「駅の中に理髪店が入っているのですね」
【駅の管理・運営を行っている 塚本朝子さん】
「そうなのですよ、切符を切りながら散髪もやっているのです」
塚本朝子さんは、駅舎内で理髪店を営みながら切符の販売など、駅の管理・運営を行っています。
せっかくなので、藤井記者も髪を切ってもらいながら、話を聞くことに…
–Q:(元々の理髪店の場所は)いまの場所とは違う場所で?
【塚本朝子さん】
「最初は、この駅の目の前のところで(理髪店を)していました。駅の立ち退きになることが分かったら、(JR西日本から)駅の方で散髪をしてみないかと…その代わり切符の方もしてもらわないといけないから覚えてもらって(ということになって、この場所に)来ることになった。主人がいたときは、主人が散髪をして、私は切符(駅)に専念していた」
利用客が駅舎に来るたびに、塚本さんは温かく「おかえり。きょうは暑いね~」と迎えます。
こうして25年ものあいだ、たくさんの利用客を見守ってきました。
しかし…JR西日本は経費削減のため近い将来、駅を完全無人化にする方針だといいます。
【塚本朝子さん】
「なくなるのは本当に寂しいこと。ずっと見守ってきたから、これからも自分の体が続く限り頑張りたいなと思います」
地元の人々がさまざまな形で支えているJR小浜線。
地方の厳しい現実の中、北陸新幹線を“起爆剤”に復活することはできるのでしょうか。
(2022年8月3日放送)