5000キロ離れた日本へ… IT人材教育に力を入れるネパールから“エリート”の若者がやって来た! “IT技術者が足りない”日本の救世主になるか? 両国のミライをかけたプロジェクト 2022年08月03日
インド北東にあるネパールは人口2919万人、国土面積は北海道の1.8倍の国です。
国土の8割は山や丘のネパールでは今、IT人材育成に力を入れていて、“ITの人材不足”に悩む日本の中小企業の救世主になるかもしれません。
ある「プロジェクト」を取材しました。
■ネパール“トップクラス”の大学で学んだ24歳女性が来日 関空で出迎える人々…ある「プロジェクト」とは?
ことし6月。
関西国際空港に降り立った外国人たち。
プロジェクトに関わる人々が『WELCOME』の紙を持って出迎えます。
彼らの母国は、日本からおよそ5000キロのヒマラヤ山脈で知られるネパールです。
国土の8割が山や丘で成り立つこの国から、あるプロジェクトのために日本にやってきました。
この日、来日した内の1人、ビドゥシ・カドカさん24歳。
和歌山で暮らすことになりました。
勤務先となる社長が案内してくれ、ビドゥシさんは、自分の住むアパートにはじめてやって来ました。
【ビドゥシさん】
「自分のアパートは初めてですからうれしいです」
そんなビドゥシさん。
日本に来てまず驚いたのが…
【ビドゥシさん】
「例えばネパールならトイレの上にボタンがあって押すだけです。(日本には)色んなボタンがあって漢字を見て少し怖いと思いました」
ネパールのトップクラスの大学・トリブバン大学で建築やITについて学んだビドゥシさん。
卒業後、一度はネパールの企業で働き始めましたが、収入に満足できず、もともと興味があった日本で働くことを決めました。
【ビドゥシさん】
「最初は月2万円の収入でした」
(※ネパールの平均年収は16万円)
–Q:足りない?
【ビドゥシさん】
「そうですね。(小さい頃から)日本はどんな国なのか興味がありました。(日本の)アニメを見て『この食べ物を食べたい』と気持ちが湧きました。子どもの頃はハットリ、ハットリ、ハットリ…『忍者ハットリくん』を見ました」
まだ引っ越ししたばかりでテーブルがなく、台所に椅子を持ってきて食事をします。
【ビドゥシさん】
「日本で唐揚げは手で食べても大丈夫ですか?ジンジャーの味がします。でも好きです」
初めての異国の地で、これから新生活が始まります。
■”IT人材不足”の日本と”IT人材教育”に力入れるネパール JAPAN×NEPALのプロジェクト「Japal」始動!
日本にとって人材確保は差し迫った重要な課題です。
優秀な人材は各国で奪い合いの状態。
日本にとって人材確保は課題です。
一方、南アジア「最貧国」の一つ、ネパール。
国としての産業が確立されておらず、中東などに出稼ぎに出る労働者からの仕送りはなんとGDPの2割以上。
そんな中、近年、IT人材の教育に力を入れ始めています。
そんな中、両国の”国家課題”を解決しようと立ち上がった2人がいます。
【南海不動産 新規事業開発担当・塚本洋平さん】
「2人の関係なんて最高っすよね」
南海電鉄グループ・南海不動産の塚本洋平さんと、ネパールで学校を運営するNPO法人「YouMe Nepal」の代表のシャラド・ライさんです。
2人が知り合ったきっかけは、塚本さんが共通の友人を介して…シャラドさんの話に感銘を受けたのがきっかけです。
シャラドさんがネパールで優秀な人材を発掘し、南海不動産がIT人材を求めている日本企業に紹介します。
【NPO法人「YouMe Nepal」代表 シャラド・ライさん】
「国にもっと必要なモノがあるということに気づいて、何かというと内陸のネパールに経済産業、国の中でお金を生み出すことがないと(いけない)。テクノロジーの時代で日本は先進国なのにすごく遅れています。その問題を解決するためにこのプロジェクトが少しでも貢献出来たら日本の国も笑顔に出来ると思う」
実は、シャラドさんは学校に通うのに2時間ほどかかる田舎の出身。
義務教育がないネパールでは多くの学生が中学卒業できず出稼ぎに出る中、国の特待生制度に選ばれ「教育の大切さ」を知りました。
その経験から寄付を募り現地で学校を2校運営しています。
今、「教育」と「産業」の両輪で国を豊かにすることが目標です。
【南海不動産・塚本さん】
「シャラドさんご自身のネパールを思う気持ちとか、熱い”パッション”に心打たれたのは間違いないですね。シャラドさんの気持ちをなんとかビジネスとして形作ろうと意識しましたね」
そして、ジャパンとネパールで「Japal(ジャパール)」。
両国のミライをかけたプロジェクトが始まりました。
■ビドゥシさんが和歌山の老舗・家具メーカーに“初出社” 驚き…そしてチームの一員として
ビドゥシさんが働くことになったのは、和歌山県橋本市にある「コマイ」。
この日が初出社です。
【ビドゥシさん】
「おはようございます」
「コマイ」は、学校やオフィス向けの家具メーカーで、ことし70年目を迎える老舗です。
“初出社”早々、彼女を待ち受けたのは…日本の会社の定番・ラジオ体操。
一生懸命、同僚についていきます。
【ビドゥシさん】
「本日からみなさんと一緒に働くことを楽しみにしています。よろしくお願いします」
ネパールにいた2021年から、コマイの一員として“リモートワーク”をしていたビドゥシさん。
大学で学んだ設計のスキルのほか、独学で習得したプログラミングの知識を生かして、早速、会社のホームページの改善に貢献しています。
【ビドゥシさん】
「AR(拡張現実)のプロジェクトです。ウェブサイトに載せる(商品の)3Dモデルをモバイルから自分のスペースで見えるようにやりました。このように動かしたり、ズームとか出来ます。QRコードをスキャンすると…見ることが出来ます」
売り上げの3割を占めるインターネット販売。
これまでWEBサイトは外注に頼ってきましたが、ビドゥシさんが加わることで、細かいデザインの修正がすぐに出来るようになりました。
初日の会議でも…
【ビドゥシさん】
「提案したいです。ほかのタイプも一度検討しましょうか?」
自分のスキルを発揮しようと、臆することなく提案します。
「コマイ」社長の駒井さんは、中小企業にとってこのようなIT人材の確保は、簡単ではないと話します。
【株式会社コマイ代表取締役 駒井和彦さん】
「日本で日本人を採用するとなると、企業同士で規模やブランドイメージ(で判断される)。新卒では当社のような30人以下の中小企業はなかなか応募してもらえない。そういう点では中小企業にも十分採用のチャンスはあると今回感じました」
「Japal」のプロジェクトでは、ビドゥシさんのように日本で長く働くネパール人に毎年100人来日してもらうことを目指しています。
【ビドゥシさん】
「会社の成長の力になりたいのが今のゴールです。今は色々やっていますけど、何か1つマスターしたい。それが何かはコマイで働いて見つけたいです」
ネパールの“ミライ”を担う人材が、日本の課題も解決する。
両国の距離が今後もっと近づくかもしれません。
(2022年8月2日放送)